ようやく逢えた
美桜が再び眠りについたあと、
叶多はそっとその手に触れた。
細くて、冷たくて、
でも指先だけは熱を帯びている。
離したくなかった。
——大丈夫だからな。
俺がいるから。
声には出さず、
ただ心の中で繰り返す。
椅子をベッドのそばに寄せ、
美桜の手を包むように握ったまま、
叶多は一晩中そこにいた。
美桜が少しでも動くたびに、
肩が跳ねる。
「……大丈夫かな……」
寝返りを打っただけでも心臓が跳ねる。
毛布がずれれば慌てて直し、
眉が寄れば不安で胸がざわつく。
自分でも笑えるくらい、
オロオロしていた。
——こんな俺、知らないな。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ——
不謹慎だけど、嬉しかった。
こんなふうに美桜のそばにいられるなんて、
高校の頃は想像もしなかった。
夜が明ける頃、
窓の外が薄く白んでいく。
その光に照らされて、
美桜のまつげがかすかに揺れた。
「……ん……」
ゆっくりと目が開く。
昨日より、
ずっとはっきりした瞳。
美桜は天井を見つめ、
次に横を向いて——
叶多と目が合った。
「……え……?」
小さく息を呑む音。
そして、
状況を理解しようとするように、
ゆっくり瞬きをした。
「……え……どうして……?」
戸惑いがそのまま声になった。
恥ずかしさよりも、
まず“理由”がわからないという反応。
それが美桜らしくて、
叶多の胸がじんわり熱くなる。
叶多はゆっくりと手を離し、
少しだけ距離を取った。
「……倒れたんだ。
エントランスで。
だから……ここに来た」
美桜は毛布を胸の前でぎゅっと握りしめ、
視線を落とした。
頬が、
ゆっくりと赤くなっていく。
理解が追いついた瞬間の恥ずかしさが、
じわじわと表情に浮かぶ。
叶多は深く息を吸い、
10年分の想いを押し込めるようにして言った。
「……久しぶり、美桜」
名字で呼ぶか迷った。
距離を置くべきかとも思った。
でも——
昨日、熱に浮かされた声で
“かなた”と呼んでくれた。
だから、
この距離でいい。
美桜は、
顔を赤くしたまま小さくうなずいた。
「……ひさしぶり……叶多くん」
その声を聞いた瞬間、
胸の奥がじんわりと熱くなる。
10年越しの再会が、
ようやく本当の意味で始まった。




