再会したのは熱すぎる身体
横断歩道の前で、美桜が立ち止まった。
赤信号。
追いつける。
叶多は息を整え、震える手を握りしめた。
——今だ。行け。
胸の奥の熱が背中を押す。
歩幅を広げ、
あと数歩というところで——
美桜の身体が、ふっと傾いた。
まるで力が抜けたように、
前に倒れそうになる。
「——っ!」
考えるより先に、身体が動いた。
腕を伸ばし、
美桜の肩をしっかりと抱きとめる。
細い身体が、自分の胸に倒れ込んだ。
その瞬間、
熱が伝わった。
驚くほどの熱。
「美桜……?」
返事はない。
呼吸はある。
でも、意識が朦朧としているのがわかる。
胸の奥が一気にざわついた。
——どうしよう。
家に送りたい。
でも、住所がわからない。
会社の人間に連絡?
いや、こんな時間に誰がいる。
そもそも、彼女が誰と仲がいいのかも知らない。
最悪なのは——
田島に連絡すること。
それだけは、絶対に嫌だった。
美桜の身体を抱えたまま、
叶多は必死に頭を回転させる。
「……とりあえず、座ろう」
近くのビルの植え込み横にあるベンチへ、
美桜をそっと座らせる。
額に触れると、
やっぱり熱い。
「どうして……こんなになるまで」
思わず声が漏れた。
美桜は薄く目を開けた。
焦点が合っていない。
「……あれ……?」
かすれた声。
自分を見ているのかどうかもわからない。
「美桜、俺だ。叶多」
その名を聞いた瞬間、
美桜のまつげがわずかに震えた。
でも、すぐにまた力が抜ける。
叶多は歯を食いしばった。
会いたかった。
でも、こんな形で会いたかったわけじゃない。
「……どうすればいいんだよ」
誰に向けた言葉でもない。
ただ、胸の奥から漏れた本音だった。
美桜の肩にそっと手を添えながら、
叶多は決意する。
絶対に、田島には渡さない。
絶対に、彼女をひとりにしない。
この夜、
叶多の中で何かがはっきりと形になった。




