2番目の恋と10年前の想い
朝、目が覚めても、
胸の奥にまだあの4文字が残っていた。
カーテンの隙間から差し込む光が眩しい。
頭は重いのに、心だけが妙に冴えている。
キッチンで水を飲んでいると、
スマホが震いた。
画面には“彼”の名前。
> 「今日の午後、空いてる?」
> 「会えたら嬉しい」
いつもの調子だ。
軽くて、深く踏み込まない。
本命の彼女がいるくせに、
私にはこうして気まぐれに連絡してくる。
私も、特に怒る理由はない。
彼が本命を選んでいることも、
私が“2番目”であることも、
最初からわかっていた。
馴れ合いすぎるのは嫌だし、
依存する気もない。
仕事が忙しいときは平気で既読スルーする。
それでも関係が続いているのは、
お互いに都合がいいからだ。
返信しようとして、
ふと玄関の方を見る。
昨日の封筒が、
まだ床に落ちたままだった。
拾い上げて、
中の紙をもう一度取り出す。
「好きです」
読みやすい字。
名前はない。
10年前の誰かの想い。
今の彼からのメッセージより、
この4文字の方がずっと重く感じる。
どうしてだろう。
> 「今日、会える?」
> 「無理ならまた今度でも」
彼からの追いLINEが届く。
画面を伏せて、
紙を指先でなぞった。
10年前の誰かの想いと、
今の私の生活が、
ほんの少しだけ重なった気がした。




