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タイムカプセル~10年前のラブレター~  作者: 柚原 澄香


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たった4文字のタイムカプセル

「好きです」

名前はない。

読みやすい字。

私が書いたものではない。


入れ違ったのか。

それとも、私のタイムカプセルは

どこか別の場所に行ってしまったのか。


不思議と、気持ち悪さはなかった。

むしろ、この4文字だけのタイムカプセルは、

するんと心に溶け込んだ。


——金曜日の夜だった。


接待でかなり飲まされて、

タクシーを降りたときには足元がふらついていた。

マンションのエントランスの明かりが、

少し滲んで見えた。


ポストに封筒が入っていた。

学校名を見ても、酔っていたせいで頭が回らなかった。

とりあえず取り出して、

玄関の棚に置いたつもりが、そのまま床に転がった。


靴を脱ぐのも面倒で、

バッグをソファに投げて、しばらく動けなかった。

喉が熱くて、頭が重い。

金曜の夜なのに、何もしたくなかった。


水を飲もうと立ち上がったとき、

足元の封筒が目に入った。


拾い上げて、乱雑に封を破った。

中から、一枚の紙が落ちた。


「好きです」


その瞬間だけ、酔いが引いた気がした。

10年前の誰かの想いが、

静かに胸の奥へ沈んでいく。


スマホが光った。

グループLINEが騒がしい。


> 「タイムカプセル届いた?」

> 「懐かしすぎる」

> 「私の黒歴史が出てきた」


既読だけつけて、返事はしなかった。


スクロールして、ふと気づく。

“彼”の名前はどこにもなかった。


なんでそんなことを気にしたのか、

酔っているせいなのか、

自分でもよくわからない。


手の中の紙に視線が戻る。


「好きです」


10年前の言葉なのに、

今の方が深く沈んでいく。


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