彼女のタイムカプセルを受け取って
タイムカプセル開封の案内が届いたのは、
仕事帰りの夜だった。
封筒の差出人を見た瞬間、
胸の奥がざわついた。
——彼女の名前。
本来なら、
彼女自身に届くはずの封筒。
でも今、
彼の手元にある。
生徒会長だった自分なら、
名簿も、管理リストも、
誰がどの封筒を受け取るかも
全部把握できた。
やろうと思えば、
できてしまった。
いつも明るくて、
誰にでも分け隔てなく接して、
そんな“強い側”の自分が——
こんなことをするなんて。
「……俺、なにやってんだよ」
封筒を持つ指先が震えた。
10年前の自分は、
胸を張れる男になりたいと願っていた。
上っ面じゃない自分に変わると
あの紙に誓ったはずなのに。
10年経って、
結局こんな形で
彼女の手紙を奪っている。
最低だ。
わかってる。
わかってるのに——
手が離れなかった。
彼女が10年越しに何を残したのか。
どんな言葉を未来に託したのか。
知りたいと思ってしまった。
知る資格なんてないのに。
封筒を胸に押し当てると、
息が苦しくなった。
陽キャの仮面の裏で、
ずっと隠してきた弱さが
じわりと滲み出る。
「……ごめん」
誰に向けた言葉なのか、
自分でもわからなかった。
ただひとつだけ確かだったのは、
10年前のあの日から、
彼女を忘れたことは一度もなかったということ。




