表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイムカプセル~10年前のラブレター~  作者: 柚原 澄香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/101

後悔のかたまり

封筒を机に置いたまま、

彼はしばらく動けなかった。


開けようと思えば開けられる。

昔の自分なら、

勢いで破っていたかもしれない。


でも今は違う。


海外で経営を学び、

父親の会社で修行し、

「どうせ跡継ぎだろ」と言われながらも

努力で評価を勝ち取ってきた。


結婚相手も家に決められそうだったが、

それも自分で選ぶ権利を父親に認めさせた。


——10年前に誓った通り、

上っ面じゃない自分に変わってきたはずだ。


なのに。


封筒に触れる指先が、

ほんの少し震えていた。


「……無理だな」


声に出すと、

余計に胸が痛んだ。


10年前の自分は、

胸を張れる男になると決めて

「好きです」を書いた。


その決意に、

今の自分は追いついているはずなのに。


彼女の封筒をすり替えた時点で、

胸なんて張れない。


開けたら、

もっと自分が嫌いになる気がした。


だから、

開けられなかった。


封筒をそっと押し返すように、

机の端へ寄せた。


そのとき、

スマホが震えた。


画面に表示された名前を見て、

思わず息が止まる。


——生徒会の副会長だったやつ。


「おい会長。

 卒業10年だし、久しぶりに集まらね?

 みんなタイムカプセル届いたって騒いでるぞ」


昔と変わらない軽い調子。

でも彼の胸の奥は、

ざわついたままだった。


封筒を見つめながら、

彼はゆっくり息を吐いた。


「……行くよ」


そう返した指先は、

後悔のせいか

ほんの少しだけ震えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ