10年後の自分のために
職員室を出た瞬間、
胸の奥に残った熱がまだ消えていなかった。
許可が出た。
条件付きだけど、
ちゃんと前に進んだ。
生徒会室の扉を開けると、
みんなが書類を広げていた。
「会長、おかえり。
どうだった?」
副会長が顔を上げる。
彼は一度だけ息を整えてから言った。
「……許可、出たよ」
一瞬、
空気が止まった。
「え、マジで?」
「先生、よくOKしたな」
「すご……!」
驚きとざわめきが広がる中、
彼は続けた。
「ただし、条件付き。
場所の確保、管理方法、
開封時の連絡手段……
全部、計画書にまとめる必要がある」
副会長が苦笑する。
「……めっちゃ大変じゃん」
「うん。でもやるよ」
その言い方が、
いつもの“陽の会長”じゃなかった。
静かで、
でも揺るがない声だった。
その空気に、
生徒会のメンバーが自然と背筋を伸ばす。
「じゃあ……
3年生全体にも説明しないとだね」
「うん。
明日の学年集会で話す」
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翌日。
体育館のざわめきが、
天井に反響していた。
3年生全員が揃うのは久しぶりだ。
壇上に立つと、
彼は少しだけ深呼吸した。
マイクを握る手が、
ほんの少し汗ばんでいる。
「えー……
今日は、卒業記念の企画について話があります」
ざわつきが少しだけ静まる。
「生徒会で話し合って……
“タイムカプセル”を作ることにしました」
一瞬、
体育館の空気が変わった。
「タイムカプセル?」
「なんかいいね!」
ざわめきが広がる。
彼は続けた。
「10年後に開けます。
場所や管理方法は、
これから生徒会で詰めていきます」
言葉を選びながら、
でも迷いなく。
「10年後の自分に、
何かを残してほしい。
そう思って、この企画を出しました」
その一言に、
体育館が静かになった。
“会長が自分のために何かを言う”
それが珍しかったから。
「強制じゃない。
でも、
参加してくれたら嬉しいです」
最後の言葉は、
ほんの少しだけ素の声だった。
その声が、
体育館の空気に静かに染みていった。




