叶多の嬉し涙
「タイムカプセルの中身を
すり替えるなんて、最低なことしたよな。
今思えば、すごい子供じみてるし……
気持ち悪いよな。
名前も書かずに“好きです”なんて。」
美桜が息を呑む。
でも否定はしない。
ただ、静かに聞いてくれている。
叶多はゆっくり続けた。
「だけど……
名乗る勇気もなかったんだ。」
声が少し震えた。
「卒業したら、
もう会えないんじゃないかって思ってた。
アメリカの大学に行くことになってたし……
一人前になるまで日本に戻るつもりもなかった。」
美桜の瞳が揺れる。
「でも、
美桜だけを想う気持ちは……
変わらない自信があった。」
言葉が自然と溢れていく。
「今で言うと“匂わせ”っていうの?
俺の気配を……
残しておきたかったんだ。」
美桜が紙を握りしめる。
その指先が震えている。
「高校卒業して
10年も経ったら、
美桜は結婚してるかもしれないし……
俺と再会しても忘れてるかもしれないし……
なにもわからないのに。」
言葉が詰まる。
胸が熱くなりすぎて、呼吸が浅くなる。
「何より……
再会できる保証なんて、
どこにもなかったのに……」
言いながら、
涙がこみあげてきた。
美桜がそっと息を飲む。
叶多は顔を上げた。
涙をこらえながら、
美桜をまっすぐ見つめた。
「でも……
美桜とまた出会えた。
こんなことあるんだな。
神様っているんだなって。」
その言葉は、
10年分の願いそのものだった。
そして──
叶多は、息を吸って声を出す。
「俺……
美桜が好きだ。
俺が、美桜じゃなきゃダメなんだ。」
伝えられたことが嬉しくて…
くしゃくしゃの笑顔になる。
こらえていた涙が一筋頬を伝った。




