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昔話を聞いてほしい
美桜が差し出した紙を見た瞬間、
胸の奥がゆっくりと熱を持った。
(……あぁ。
美桜は、これを言いに来たんだ。)
紙の端が、
ほんの少し震えている。
美桜の指先も、呼吸も、浅い。
美桜が口を開いた。
続けようとした言葉が、
喉の奥で揺れている。
その瞬間、
叶多はそっと遮った。
「美桜、待って。」
美桜の瞳が揺れる。
驚きと、少しの不安と、
それでも逃げない強さがあった。
叶多は紙に視線を落とし、
苦笑いを浮かべた。
「職権乱用もいいところだよね。」
美桜は一瞬だけ息を呑んで、
でもすぐに、
“全部知ってる”という顔で頷いた。
(……そっか。全部、わかってて。)
それが嬉しくて、
少しだけ胸が痛んだ。
叶多はゆっくり息を吸って、
美桜の方へ身体を向けた。
「昔話、聞いてくれる?」
美桜は小さく頷いた。
その頷き方が、
まるで何かを受け止める覚悟みたいで、
胸が強く跳ねた。




