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彼女は頑なだった。それ以上、彼女の口から言葉を引き出すことはできなかった。


これ以上粘っても無駄だと判断した私は、アルウィンにアミュレットを返還させ、脱出を再開することにした。


黒牢ブラック・セル」の無機質で入り組んだ迷宮構造に、私の頭は混乱を極めた。想像もつかないほど多くの曲がり角や行き止まりの廊下が待ち受けていたからだ。思わずリリヤに、どうやってこの場所の道順を把握しているのか尋ねてしまおうかと思った。だが、その盗賊娘をこれ以上刺激すべきではないと、私は重々承知していた。もし彼女を怒らせて見捨てられでもしたら、自分たちだけで脱出の秘密を探り当てなければならなくなるからだ。


迷宮のごとく単調な地下牢の風景は、左に曲がったところで一変した。そこには二枚扉が待ち受けており、これまでの道中で目にしたものとは一線を画していた。


他の扉と同様、黒い鉄で造られてはいたが、長方形ではなくアーチ状のデザインが施されていた。左右の扉にはそれぞれ真鍮製の取っ手リングが取り付けられ、右側の扉のリングの裏には鍵穴が隠されていた。扉が閉ざされると、二枚の扉が合わさって「フォン・ロートシュタイン家」の家紋が浮かび上がる仕組みになっており、それぞれの扉に家紋の半分の意匠が刻まれていた。


「兵舎よ」少女は囁いた。私たち二人にようやく聞き取れるかどうかの、か細い声で。


私は扉を開け、中を覗き込んだ。


兵舎の中は、地下牢の他の場所と比べて格段に暖かかった。部屋の奥には暖炉の火が燃え盛っている。左右の壁沿いにはそれぞれ六台のベッドが並び、そのうち八台は使用中だった。各ベッドの足元には鉄の帯で補強された木製のトランクが置かれ、暖炉へと続く通路の中央には、巨大な熊の毛皮の敷物が敷かれていた。


ふと、ある考えが閃いた。


私は看守から奪った鍵を取り出し、アルウィンに合図を送った。


案の定、鍵束の中の一本が、彼の足枷を解く鍵だった。私はその足枷を受け取り、扉の二つの取っ手リングを繋ぎ止めるようにして固定した。


アルウィンのもう片方の足枷までは外さなかった。彼の手足の自由を完全に奪ってしまうことを恐れたからだ。


「あとどれくらいだ?」私は少女に尋ねた。この階の看守たちが全員兵舎の中に閉じ込められていると分かった今、もはや囁く必要はない。


「次の階まで? もうすぐよ。ただ、『黒牢』の最下層まで降りれば、罠はなくなるけれど……その代わり、看守の数が一気に増えるわ。たぶん二十人くらいはいるはずよ」 「武器と防具が必要になるな」とアーウィンが言った。「没収品を保管している場所はどこだ?」司祭はリリヤに尋ねた。


「1階の中央付近、処理所のところです」少女はそう答えた。


「よし、行くぞ。そろそろ防具の重みが恋しくなってきたところだ」私は廊下の奥へ向かって頷いた。


私たちは連れ立って、松明の放つ橙色の光の中を進んでいった。


その後も、少女の手によって三度みたび罠が破られた。張り巡らされたワイヤー、隠された落とし穴、さらには天井から炎を噴き出す仕掛けの施された感圧板に至るまで、少女が携える七フィート(約2.1メートル)の長棒によって、それらはことごとく無力化されたのである。


しかし、次の階へと続く階段に差し掛かったとき、私たちはまた別の困難に直面することとなった。


階段の段差一つひとつ、そして狭い壁面の至る所に、鋼鉄製のとげがびっしりと植え込まれていたのだ。それらの棘は根元こそ太いものの、上へ向かうにつれて細くなり、やがては残酷なほどに鋭利な微細な先端へと尖っていた。これでは、リリヤのブーツはおろか、アーウィンや私の素足など、いとも容易く貫かれてしまうだろう。


また、私には分かっていた。私たちが調達しておいた二枚の小さな木製盾を足場にして、片足でバランスを取りながらもう片方の足を運ぶ、といった渡り方も通用しないだろうと。なぜなら、棘の先端はあまりに鋭く、盾の幅もまたあまりに狭かったため、棘の上に盾を横たえてその上に男の体重をかければ、盾などたちまち突き破られてしまうに違いなかったからだ。


私たちは皆、困惑したまま、長いこと無言で立ち尽くしていた。


もちろん、その謎を解き明かしたのはリリヤだった。


彼女は石壁に棒を立てかけると、黒い革のブーツと、指先のない黒い革のガントレットを脱いだ。そして、手足の指先を巧みに使い、壁の隙間に器用に食い込ませながら、その体重を支えて登り始めたのだ。


ほんの数分のうちに、彼女は棘の生えた階段をよじ登り、角を曲がって視界から姿を消した。


彼女が戻ってくるまでがあまりに長く、私は思わず声を張り上げ、彼女が捕らえられていないか確かめようとしたほどだった。


私がまさに口を開こうとしたその時、空気を切り裂くような「パキッ」という音が響いた。


私は最悪の事態を覚悟した。


「登って!」少女の叫び声が聞こえた。


階段に突き出ていた棘が壁の中に引っ込んだ。その先端は、なおも壁の穴の奥に見えていた。


アーウィンと私は互いに顔を見合わせる間も惜しみ、一気に階段を駆け上がった。


私たちが登っていくのと入れ替わるように、少女が階段を降りてきた。彼女はアーウィンと私の間の狭い隙間を、いとも容易くすり抜けていった。


「衛兵よ!」彼女はそう言って説明した。


私はすぐに合点がいった。


さらに階段を登り続けると、予想通りの光景が目に飛び込んできた。二人の衛兵がうつ伏せに倒れ、四つん這いになって咳き込み、むせ返っていたのだ。彼らが被るくすんだ兜は、その面頬めんぽうに付着した黒い粉のせいで、いっそう見るに堪えない姿となっていた。


私は即座に彼らを始末した。私の片手剣は、熟練した素早さで彼らの兜を突き通し、また引き抜かれた。


二人の男が絶命したのを確認すると、その間に挟まれた壁に、あるものを見つけた。錆びついた鉄枠で囲まれた長方形の隙間から、レバーが突き出していたのだ。


リリヤが階段を戻ってきた。手には再び棒を携え、脱いでいたブーツとガントレットも元の通りに身につけていた。


「ああ、よかった。伝わったのね」彼女は走った後の息を整えながら、安堵の吐息をついた。「正面から戦うわけにはいかなかったし、かといって、あの棘を操作するレバーのすぐ横に彼らを放置しておくわけにもいかなかったから」彼女はそう説明した。


「見事な作戦だ」私は感心して言った。


「ところで、あの黒い粉は何なんだ?」アーウィンが口を挟んだ。 「東方の旅人から教わった手口よ。あちらの暗殺者たちは、卵の中身をくり抜いて黒胡椒と砕いたガラスを詰め、蝋で封をした後、それを叩き割って襲撃者めがけて吹き飛ばし、相手の目を潰すんだって。ただ、私の帯に差しておくと卵が潰れちゃうから、卵の代わりに紙の包みに詰めて、火薬の爆発力でこれを撃ち出すようにしたの」彼女はそう言って、ベルのような形をした金属製の筒を掲げて見せた。長さは5インチ(約13センチ)ほどで、先端がラッパ状に広がっていた。


「サーカス出身だな」アーウィンは断定した。


「いい勘してるね」少女は同意した。


「巧妙な手口だ……だが、音がうるさいな。誰かが来る前に、さっさと行くぞ」アーウィンはぶっきらぼうに言った。


一刻を争う状況だったため、衛兵たちの身体検査は行わなかった。だが私は念のためレバーを操作し、下の兵舎に閉じ込めた衛兵たちが万が一脱出したとしても、こちらへ上がってこられないよう階段を封鎖しておいた。


「ブラック・セル」の3階に上がっても、景色にほとんど変化はなかった。構造はどこも一貫して同じ造りになっていたが、ただ一点を除いては――


「廊下が、広くなっていないか?」私は小声で尋ねた。


「シーッ」リリヤはそれだけ答えた。


どうやら目の錯覚ではないらしい。廊下は確かに以前より幅広く、そして天井も高くなっているようだ。その理由を想像して、私は思わず身震いした。ここには古くから「黒牢の獣」にまつわる伝説が語り継がれている。それは、脱獄を企てた哀れな魂たちに立ちはだかる、最後の試練なのだという。その「獣」の正体が何なのか、そもそも実在するのかどうか、それを知る者は誰一人としていなかった。


私の意識の片隅には、今なお少年時代の私が息づいていた。父から聞かされた「薔薇戦争」にまつわる狂気じみた物語に、耳を傾けていたあの頃の私が。ゴブリンやオーガの傭兵たちが暴れ回り、ワイバーンが野を焼き尽くしたという、あの戦の物語に。


だが、あの戦争以来、多くの魔法種族の姿はすっかり見られなくなってしまった。だからこそ、フォン・ロートシュタイン家が、人の心に巣食う怪物以外の「獣」や「生き物」を、実際に手に入れたなどとは到底思えなかったのだ。


リリヤは相変わらず、牢獄の迷宮を迷うことなく進んでいくという、その超人的な能力を発揮し続けていた。やがて彼女は拳を掲げて一行に停止の合図を送り、私たちの方を振り返って小声で囁いた。


「この角を曲がった先に、看守の部屋があります。ここから出るには看守の鍵が必要です。あの錠前は、ピッキングで開けることはできませんから」彼女はそう説明した。「それに、皆さんの荷物もあそこに置いてあるはずです」


その言葉を聞いた途端、私の手はむず痒くなった。長い間、私は武器や鎧を奪われたままだったのだ。それらは私の身分を示す証であり、この世界における私の「砦」そのものでもあった。


「見せてみろ」私は命じた。


リリヤは私たちに、ついてくるよう合図を送った。


私たちは廊下の右側の壁に身を寄せながら奥へと進み、やがて四つ辻へとたどり着いた。


リリヤは手にしていた長柄の武器を床に置き、腰の袋から小さな手鏡を取り出すと、それを掲げ持った。


鏡は小さかったが、私の位置からでもその映り込みをはっきりと確認することができた。


四人の衛兵。手にはそれぞれ、槍と盾を携えている。


左手の壁際には二人の衛兵が立ち、その間に重厚な鉄扉と、鉄格子のはまった半月形の横長の覗き窓が据えられていた。残りの二人の衛兵は、その向かい側の、何もないむき出しの壁を背にして立っていた。


私たち一行はその場からいったん身を引き、作戦を練るために話し合いを始めた。


陽動おとりを使うのはどうだろう?」アーウィンが提案した。


「いや、おそらくあの四人には、何があっても最後まで持ち場を離れるな、と厳命されているはずだ」私はそう反論した。 「とはいえ、奴らを分断する必要があるな。まともな武器も防具もない状態で、4対3の戦いに身を投じるような無謀は、俺にはできん。」


「他に何か、サーカスじみた芸当はあるのかい、お嬢ちゃん?」アーウィンがリリヤに尋ねた。


「目くらまし用のチューブの火薬なら、あと二回分残ってるわ。でも、使うには相手に接近しなきゃならないし、敵が散らばって配置されてるから、一人にしか当てられないと思うの」彼女は首を横に振った。


「もしかしたら、この階で君の依頼相手が見つかるかもしれないな。確か、魔法使いの弟子だったんだろう?」私はそう提案してみた。


「魔法使いには『触媒カタリスト』が必要不可欠よ。もしその弟子がこの階にいるなら、触媒は間違いなく看守の部屋に置かれているはずだわ」リリヤはそう答えた。「煙幕弾なら一つ持ってるの。視界を遮って、私たちに隙を作ってくれるはずよ」


「他に手はないようだな」私は顔を歪めた。


「悪くない勝機だ」アーウィンが苦笑を浮かべて付け加えた。「誰も目が見えなくなっちまえば、人数が一人少なかろうと、防具を身につけていなかろうと、何ら不便はないからな」


リリヤは頷いた。それが、この作戦を遂行するという、私たち三人の最後の意思表示だった。


私は作戦に一つだけ修正を加えた。私が囮となって壁の陰から飛び出し、煙幕弾を転がす役目を担うこと。その間にアーウィンとリリヤが反対側から回り込み、敵の注意が私に引きつけられている隙に、背後から敵に迫るという段取りだ。


壁の松明たいまつを手に取り、もう片手には白い球体を抱えて、私は壁の突き当たり、右に折れる角へと近づいていった。その球体は砲弾ほどの大きさがあり、天辺からは短い白い導火線が突き出ている。


角を曲がることに、私は一切の躊躇ためらいを抱かなかった。


私が足音を隠そうともしなかったため、一人の衛兵がこちらを振り返った。


「止まれっ!」彼が怒号を上げると、その仲間の衛兵たちも一斉に私の方へと顔を向けた。


私は導火線に火を点けた。


導火線は瞬く間に燃え尽きた。私が球体を手に抱え、転がすべく構えたその瞬間、球体から大量の白い煙が勢いよく噴き出した。


私が球体を転がすと、煙の噴射が推進力となり、球体はみるみるうちに加速して転がっていった。


やがて、廊下全体が白い煙で充満した。煙が視界を覆い尽くす直前、私はアルウィンが向かいの角から姿を現すのを目にした。盾を掲げ、手には鎖を握っていた。


彼女の性分ゆえにリリヤの姿は見えなかったが、彼女がそこにいることは信じて疑わなかった。


私は自身の盾を掲げ、最も近くに衛兵が立っていた場所を思い出しながら、猛然と突進した。


やがて誰かと激しく衝突し、鎧のけたたましい音と共に、その相手は地面に叩き伏せられた。


私の下で誰かがもがいているのが感じ取れ、その動きから相手の体勢を把握した。その情報を頼りに、私は素早く兜の視界窓バイザーの隙間を見つけ出し、そこにアミングソードを突き立てた。


煙の向こうから、さらに苦悶の声や罵声が響いてきた。私は手探りで周囲を探り、他の仲間たちの姿を求めた。すると、手枷の鎖で衛兵の首を絞め上げているアルウィンを見つけたため、私はその哀れな男を苦しみから解放してやった。


あたりは静まり返った。


私は手探りでリリヤの姿を探したが、触れたのは血の感触ばかりだった。


「リリヤ!」私は叫んだ。「生きているなら、返事をしてくれ!」


何の反応もない。


足元には、さらに血溜まりが広がっていった。


「ガオー!」


煙の中から飛び出してきたその少女を、私は危うく剣で串刺しにするところだった。


「まったく、無茶をするな!」私は苦笑いを噛み殺しながら、首を横に振った。


「怖がらないでくださいよ、旦那様。私はただのちっちゃな女の子ですもの。まさか『青の連隊』第九十九旅団に属する勇敢な騎士様が、私なんかに怯えたりしないでしょう?」彼女はくすりと笑った。


「戯言に付き合っている暇はないんだ。鍵は見つかったのか?」煙が晴れて姿を現しつつあるリリヤのシルエットに向かって、私は問いかけた。


「はい」彼女は鍵をジャラリと鳴らして見せると、扉の方へと歩み寄り、それを開けた。


扉が開かれる際、金属同士が擦れ合う耳障りな音が響き渡り、私の歯をきしませた。


私たち三人はその空間へと足を踏み入れ、手分けして素早く探索を開始した。


牢番の部屋は簡素なものだった。小さな一室の中央にある半月形の開口部に、板がボルトで固定されており、それが机代わりとなっていた。その開口部の向かい側には、トランクや独立式の棚、武器架などが所狭しと並べられており、それらすべてが『黒牢』に収監された囚人たちの所持品で埋め尽くされていた。


私は武具や鎧が収められた一画を見つけ出した。部屋全体と同様に整然と整理されていたおかげで、自分の装備をすぐに見つけ出すことができた。黒のガンベゾン、黒のマント、装飾のない黒のプレートアーマー、ロングソードとダガーを吊るした剣帯、そして私の愛用するポールアックスだ。全長6フィート(約1.8メートル)、黒檀の木柄に輝く鋼鉄。片端には三日月状の戦斧、もう一方には鋲を打った平らな槌。上端には尖った穂先、石突いしづきにもまた鋭い棘が備わっている。斧の刃には、『マカバイ記下』第7章第29節の言葉が刻まれていた。「この処刑人を恐れるな。兄弟にふさわしい者として死を受け入れよ。そうすれば、神の慈悲によって、お前を兄弟たちと共に迎え入れよう。」それを手に取った瞬間、私はまるで我が家に帰ってきたかのような安らぎを感じた。


旅支度の背嚢はいのうと杖を回収し終えたアルウィンが、私の元へと歩み寄り、よろいの装着を手伝ってくれた。


装飾こそない質素な鎧だったが、そこには魔法の呪文や神の祝福が込められており、いかなる名工が鍛え上げたものよりも強固な仕上がりとなっていた。


「あなた自身の鎧はないのですか?」私はその司祭に尋ねた。


「ええ、ありますとも。法衣の下に、チュニックの上から鎖帷子くさりかたびらを身に着けています。私に合うかぶとを一つ見繕うつもりですが、願わくは、それを本来の持ち主に返す機会が神様から与えられますように」彼はそう説明した。


「その兜を手に取ることこそが、その機会となるでしょう。兜一つ欠いていたがゆえに命を落とした、善良な男たちを私は幾人も見てきました」私は彼にそう促した。


「確かに、その通りですな。とはいえ、これほど見事な兜が他に見つかるとは思えませんが」彼はそう言いながら、私のための閉鎖兜アーメットを手渡してくれた。


私も彼に同意せざるを得なかった。装飾や飾り気は一切ない、ただの鋼鉄製でありながら、それは紛れもない芸術品であったからだ。


「さあ、行きましょうか」リリヤが棚の陰から姿を現した。彼女のベルトに下げられた革袋も、新たに手に入れたらしい袋も、今にもはち切れんばかりに膨れ上がっている。


「棚から持ち出したその荷物が、すべてお前の私物であることを祈るよ」私は彼女に話しかけるため、兜の面頬めんぽうを跳ね上げた。


「いいえ。アルウィン神父様と同じく、私も持ち出したものはすべて持ち主に返すつもりですよ」彼女は相変わらず、相手の肩書きを適当に呼ぶ癖を直そうとしない。「……もっとも、そのための『触媒カタリスト』は持ち合わせていませんけどね」彼女は思案顔で、唇を噛んだ。


「もうよい。急いでここを立ち去らねばならん」アルウィンが二人のやり取りを打ち切った。


一つの角笛つのぶえが鳴り響き、我々の運命は決定づけられた。


地響きを立てるような足音が、こちらへと迫ってくる。


石造りの建物そのものが震え出した。堅牢な黒石で築かれた牢獄の壁が、激しく揺らいでいる。


「主よ、急ぎ我らを救いたまえ!」アーウィンは立ち上がると、両手を杖にかけ、戦いの構えを整えてから扉の外へと歩み出した。

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