十話、遅刻するって案外勇気いるよね…それって自分だけ?巻
今、私と柊さんは頭から湯気がたつ程に、
怒っている覚さんにこんこんとお叱りを
受けている。
その姿を不思議そうに座敷わらしは見詰めていた。
覚さんが怒るのも仕方がない
何故ならAYAKASHIの会長ぬらりひょん様と
柊さんのご両親と私の母親が私の部屋で
二時間以上待たせていたからだ。
しかしそれ以上に
私は驚いていることがある。
それは六畳一間の私の部屋が
何故か広くなっている。
そもそもアパートの一室なのに二階に上がる階段が存在する事が不思議でしょうがない。
そんな事を怒られながら考えていたら
覚さんが心を読んで
「鈴木君!ぬらりひょん様があなた達のために部屋を拡げてくれたのです。」
「それよりちゃんと話しを聞きなさい!」
と更に怒る。
するとぬらりひょん様がため息をしながら
「覚!お主の説教も長いわ!」
「ご両親の皆様を待たしておるのだぞ。」
「いい加減にせんか!」
と言うと一口お茶をすする。
ぬらりひょん様の一喝で覚さんの怒りが
収まる。
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ぬらりひょん様と覚さん
そして私達の親達が集い今後の事について
を話し始める。
ぬらりひょん
「えー、第一回家族会議を始めます。」
覚
「司会、進行は私サトリが努めさせていただきます。」
覚
「皆様には改めてお互いの自己紹介をお願いいたします。」
源九郎
「ではオラから自己紹介するだ。」
源九郎
「オラの名は柊源九郎で志保の父親だべ」
源九郎
「オラ妖怪サトリで今長野の方で畑をやっとる。」
香織
「私は源九郎の妻で香織です。」
香織
「人間ではありますが宜しくお願いいたします。」
源九郎
「しっかし、いきなし、ぬらりひょん様が家に来て志保が結婚するから来い言うで。」
源九郎
「えらいびっくらこいて腰抜かしたで…」
覚
「次は鈴木君の母君、自己紹介をお願い
いたします。」
鈴木光咲
「太郎の母の鈴木光咲と申します。」
鈴木光咲
「この度は息子がお二人の大切な娘様に不貞を働き誠に申し訳ありません!」
鈴木光咲
「今後この様な事が起きない様に息子には
きちんとけじめをとらせますので!」
鈴木光咲
「今回はだけは愚かな息子を持つ不出来な
私に免じて許していただけませんでしょうか?」
鈴木光咲
「太郎!あんたも若い娘さんに手出したのだからきちんと相手に謝罪をしなさい!」
そう言うと私の頭を押さえて柊夫妻に
深々と一緒に頭を下げる。
母の勘違いによる謝罪にぬらりひょん様を
含め全員が「えっ!」と驚いていた。
覚さんがため息をしながら
「ぬらりひょん様、太郎君の母君に何と伝えて呼んだのですか?」
と睨む。
ぬらりひょん様は少し額に汗を滲ませて
「いや、普通に太郎君が志保ちゃんと言う
女性と、一緒に生まれてきた子供を育てるから結婚させます。」
「なので相手方のご両親と大切なお話しが
あるので来てもらえますか?」
と言っただけじゃよ。
ぬらりひょん様の話し聞いた覚さんは
「それは勘違いしますよ…。」
と言って頭を抱える。
ぬらりひょん様は自分の顔を指差し
「えっ、ワシ何か変な事を言った?」
と周りの人達の同意を求めていた。
私は母に事の成り行きを伝えると
母は青ざめた表情から一気に真っ赤になり
私の後ろに「すみません…」と言いながら
隠れる。
すると座敷わらしが母に近付いて
自分の事をたどたどしい言葉で自己紹介を
すると落ち込む母の心配をしていた。
その座敷わらしの可愛らしい仕草に母は
心を撃ち抜かれ「かわいい!」と言って
抱き締める。
座敷わらしは「苦しい…」と母の束縛を
振りほどき今度は
柊さんのご両親に同じ様に挨拶をしていた。
すると柊さんのご両親も座敷わらしに
心を奪われ虜となっている。
私は私を含めた様々な者達を虜にしている
座敷わらしに若干の恐ろしさと
将来は有望だという勝手な期待を
感じていた。
覚さんは冷静に自分の仕事をこなし始める。
覚
「では気を取り直して今後の事についての
話し合いを始めたいと思います。」
覚
「まずはぬらりひょん様からお願いいたします。」
ぬらりひょん
「最初に柊志保さん、鈴木太郎君、改めて聞くが二人で座敷わらしを育てる事に異論はないか?」
柊志保
「はい!」
鈴木
「異論はありません。」
ぬらりひょん
「よろしい!では話しを始める前に必要な事がある。」
ぬらりひょん
「枕小僧よ参れ!」
すると寝間着姿の枕を持つ子供が眠そうに
歩いて来る。
枕小僧は
「どうも妖怪の枕小僧っす。」
「今回自分が呼ばれた理由はここにいる
人達全員に夢の世界へと行く手伝いをする
為っす。」
「夢の世界では時間の流れが無いので好きなだけ話せるっす。」
「それじゃあ早速皆さんには寝て欲しいっす。」
と言うと何か呪いをかけた枕を
各々に渡して枕小僧はゆっくりと横になる。
ぬらりひょん様が
「雑魚寝はこの歳になると腰が痛くてつらいのぉ。」
と腰をさすりながらチラチラと私の方を見るので
私達は広くなった部屋を布団を探してまわった。
赤い扉の前に立つと覚さんがその部屋はまだ開けては行けないと言うのでそこだけは避け他の部屋を探す。
すると布団部屋と書いてある部屋を見付け
九人分の布団を覚さんと運ぶ。
私は柊夫妻の場所に三人分の布団用意する。
その姿を見て柊さんの母香織さんが
何をして良いか分からずウロウロしている
志保さんの方を見て
「あなたも見ていないで鈴木さんのお手伝いをしなさい!」
と伝えると「はい!」と言って志保さんは
他の人の布団をひきはじめる。
私は枕小僧さんの分も準備すると
「すいやせん!」
と言って布団の中に吸い込まれる様に
入って行く。
布団の準備を終えると枕小僧が
「では皆さん寝て欲しいっす。」
というと妖気を高めていた。
座敷わらしが私の布団にするすると入って
来る。
柊夫妻と覚さんとぬらりひょん様から寝息が聞こえる。
しかし私と志保さんと座敷わらしと母の光咲は一向に寝れる気配がなかった。
枕小僧が
「どうしたっすか?寝れねぇっすか?」
と心配そうにしている。
私達は、起き上がる
私は気分を落ち着ける為のホットココアを
四人分用意するとゆっくり飲み始める。
私の母鈴木光咲はいきなり
「志保さん、太郎の何処が良くて結婚するの?」
と志保さんに尋ねる。
私は思わずココアを吹き出してむせる。
鈴木太郎
「母さんさっきも説明したけど志保さんは
座敷わらしを育てる為の手伝いで結婚してくれるだけだよ。」
鈴木光咲
「それよ!そこが変なのよ。」
志保
「変とは?」
鈴木光咲
「座敷わらしちゃんを育てる為だけなら別に結婚しなくても良いじゃない。」
鈴木光咲
「太郎が困ってたらその時に手伝えば良いだけだし…」
志保
「確かにそうですね…」
鈴木光咲
「志保ちゃん結婚てそんなに簡単なもんじゃないよ。」
鈴木光咲
「ましてや志保ちゃんまだ若いんだから、
こんなおっさんといるよりもっと良い出逢いがあるかも知れないじゃない。」
志保
「それもそうかも知れないですね…」
志保
「でもお母様、私は太郎さんといると何故か安心するのです。」
志保
「確かに太郎さんを信用出来ず、最初は
座敷わらしの為に近くで見守るつもりで
いました。」
志保
「ぬらりひょん様が太郎さんと結婚をして
共に座敷わらしを育てよと言われた時も少し抵抗がありました。」
志保
「ですが今はずっと太郎さんと一緒に
座敷わらしと過ごす未来を楽しみにしている自分がいます。」
志保
「ですからお母様!太郎さんを幸せにするので私に下さい!」
そう言うと柊さんは私の母に頭を下げる。
その姿を見た母は柊さんに
「志保ちゃん、頭を上げて下さい。」
「こちらこそふつつかな息子ですが宜しく
お願いいたします。」
と言うと柊さんに頭を下げていた。
今度は私の方を見ながら志保さんに
「志保ちゃん、もしこの馬鹿息子が
志保ちゃん達を泣かす様な事をしたら私に
言って頂戴ね。」
「直ぐにとことん締め上げるから…」
そう言うと母は手の骨をパキポキと
軽く鳴らして不気味に笑う。
私の背筋が何故か凍り付く。
そして母は
「何か眠くなって来たから先に寝るわ。」
と言って布団の中に入って行った。
志保さんは私の顔を見て真っ赤になると
そのまま何も言わずに布団に入る。
座敷わらしも眠くなったのだろう、あくびを
していたので布団に運ぶ。
私は志保さんが言っていた言葉にドキドキしていて目が覚めてしまう。
枕小僧は、そんな私の姿を見て
「しょうがないっすね…」
と言うと背中から木製のバットを取り出して
いきなり私の頭をバットで殴る。
私はそのまま意識を失う…。




