第3章 12話
あれ?
今一瞬変な感覚を覚えた。
なんだろう?
辺りを見渡す。
「大丈夫?水谷さん」
「え?ええ。ちょっと気のせいだったみたい」
そうよね。
だって何事も無くお店に帰って来たんだもの。
なんでもの凄い熱い空気に包まれたかのような感覚を覚えたんだろう。
今日はちょっとおかしいかもしれない。
「それで、お店は大丈夫だったんですね?」
「ええ。売上は上々でお店が潰れるって事は回避出来たわ。これもみんなのおかげよ」
良かった。
微力ながらも力になれてよかった。
「それで、犯人の目星は?」
「さあ。それが分かれば苦労はしないんだけど」
確かに。
そもそもの心当たりがあれば、すでに警察に話してある。
待って。
もしかして経営者側の立場だから見落としている事があれば、それは知りようのない事実として把握できる訳がない。
そう思ったのは、今日ここに来る前にすれ違った人物の事を思い出したから。
「ねえ、今日バイトを休んでいる子がいたわよね?」
「ええ。橋本さんね。彼女がどうしたの?」
「実は今日、ここに来る最中にすれ違っていたの。お店の近くじゃないし、別の用事が出来たと思ってすっかり忘れていたんだけど」
「すれ違っていた?それだけで怪しいと?」
「ええ。実は彼女はこっそりとお店の鍵を複製していたという話を聞きます」
お店がざわつく。
「それは確かなの?」
「私も実際に見た訳じゃありません。でもお店の鍵を持ち出し複製を作ったというのは確かです。そして彼女以外はその鍵を持っていないはずです。彼女だけまだその事を聞いていないから可能性は一番高いです」
合鍵の事は鍵を複製するお店からすれば重要な事。
お店の鍵というのは特殊だからすぐにバレる。
「まさか」
私も不確かな情報で犯人にはしたくない。
「こういうのは内部の犯行が一番可能性が高い。でも、今日共に頑張ってくれた皆さんの中にいるとは思えない。今の現状で一番怪しいのは彼女です」
たまたすれ違っただけ。
そして、合鍵が作られているかもしれないという情報。
どれも確信がある訳じゃない。
だから今まで話題にもならなかった。
でも。
「確かめさせて下さい。それで気のせいや偶然ならそれでいいんです」
まずは内部の犯行という可能性を潰したい。
みんな同じ仲間のはず。
それを信じたいから。
「分かったわ。住所を教えるから行ってちょうだい。私もお店を閉めたら行ってみる」
そうちょっとした確認を取るというだけでいい。
それで外部なら、後は警察に任せるだけの事。
でも内部なら警察がそこまでたどり着くか分からない。
合鍵の事まで分かればそっちにも捜査がいくだろうけど。
それは時間がかかる。
それまでに証拠隠滅されたら終わり。
今日のうちに確かめなくては。




