第4章 19:00
-矢野摩耶の場合-
坂本凛という女性から聞かされた衝撃の事実。
それは、僕に起きている不可解な出来事の真相。
つまり死んだような感覚があるのは気のせいでは無かった。
本当に死んでいて、誰かの介入によって時間がまき戻り死ななくなっているという。
にわかには信じられない。
その感覚さえ無ければ。
「そろそろだと思う」
そろそろ?
「どういう意味?」
「犯人が目的の場所へたどり着く時間よ」
え?
「このバスは陽動だったの。時間まで警察の注意を集める為に。でもその警察がやって来ないことにあいつらも不思議がっていた」
そうか。
この現象が分かっているのは僕と坂本さんだけだ。
バスジャック犯ですら何が起きているのか分かっていない。
「そして予想では、そろそろ秋葉原ダイビルに行くはず」
秋葉原ダイビル!?
「なんで?あそこは駅からすぐじゃないか!?なんでこんな回りくどい事を?」
「だから言ったでしょう?警察の注意を集めるため、わざとやっていると」
確かにそうでなければ同じ場所をぐるぐる回る意味が無い。
「そして、私がダイビルに入れる時間でもあるの」
入れる?
「言ったでしょう?私は同じ時間を繰り返してるって。だから19時にならないとダイビルに入れないって事はなんとなく分かっている」
外をちらっと見る。
確かに。
すでに駅に向かってバスが走っている。
「でもここからが問題なの。これから起こる事を止めるには、私だけじゃ無理だって」
「なんで?すでに起きる事を知っているんでしょ?」
「因果律よ」
因果律!?
聞いた事がある。
ある結果を生み出すには原因があり、それは密接な関係があるって考え方。
「それを打ち破るには一人の力じゃ無理なの。実際、一度失敗しているしね」
ということは。
少なくとも彼女は3回同じ時を繰り返してる事になる。
まず何も知らない1度目。
そして阻止しようと行動した二度目。
そして今回の三回目。
なるほど。
なんで彼女が今回の事を分かっているのか、理解出来たかもしれない。
3度目ともなれば、すでに慣れた事。
だからこそ、今回のバスの人質の中で一番冷静に事態を見ていたんだ。
僕は慌てながらも辺りは見ておいたけど。
まるで分かっているかのような落ち着きぶりをしていた記憶がある。
そういう事だったのか。
あっ!
外を見た僕達の目の前に。
秋葉原ダイビルが目に入った。
すでに路肩を乗り上げて。
バスは暴走している。
「ぶつかる!」
入り口のガラスを突き破って。
バスは内壁にぶつかった!
「くっ」
なんとか爆弾は死守する。
「あいつらが逃げた!」
なに!?
「追いかけるわ!ついてきて!」




