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教会本部内での食生活の実情を知りました。

・村の外れで細々と育てている麦。

 その麦から作られる、固くぼそぼそとしたパンーーいえ、パンと言うよりはビスケットに近いものですね。

 だからと言ってビスケットみたいにさくさくもしてないし、やわらかくなくて、がちがちに硬くて、基本的にはスープとかの水物に浸してやわらかくして食べる物です。


・近隣の山々に生息している野生動物。

 鹿や野うさぎですね。たまに猪。

 さすがに熊は無理です。熊ってすごく獰猛(どうもう)で、熊なんて出た日には冒険者に討伐依頼を出します。村人で何とかしようなんて、そもそも考えません。

 卵と肉用に、にわとりは飼っているけど他の家畜は飼っていない。馬も牛もいない。それほど広くない麦畑しかないから農耕用の家畜もいらないしね。


・近隣の山々から採れる山菜。

 形は見た事あるけど、名前まではよく知りません。ぜんまいとか、ワラビとか? どっちがどっちか知りませんけど。

 それと全く見た事も無い何かの山菜? みんなが普通に食べているので問題無いのでしょう。

 ちなみに、畑は無いです。人数の少ない山間の寒村。先ほど言った麦を育てるのに精いっぱいで、そこまで手が回らないのが現状です。


・近隣の川から採れる川魚。

 塩は貴重品なので塩焼きなんてしません。そのまま焼いたり、煮込みます。塩をほとんど使わないので物足りない感がありますが、慣れれば意外とイケます。

 釣りはしません。わたしはよくわかりませんが、魚が勝手に引っかかる罠があるんだって。それを定期的に回収に行くそうです。


 以上が、わたしがいたマール村での基本的な食糧事情です。


 食材の種類、料理のレパートリーこそ少ないものの、麦の収穫量、狩りの成果、魚の量的には村は十分に回っていきます。


 狩りの獲物である鹿や野うさぎ、猪は肉以外の部分、毛皮や牙、ツノは猟師やわたしたちの服飾品となる事もありますけど、基本的には村の外に持って行って売る。現金収入の手段です。

 そのお金で塩を買ったり、村では採れない食料、日用品なんかを買います。


 外部の人間を排除しているわけじゃないけど、マール村はその先に何もない山間の寒村なので、そもそもが滅多に人が来ません。

 満ち足りたぜいたくな生活ではないですけど、別段困っているわけでも無いので、こんなものです。


 さて、何が言いたいのかと言えばマール村の生活水準です。

 近隣の街、町。ましてや王都に比べれば、生活水準が低い事この上ないけど、寒村の生活事情なんてどこもこんなものでしょう。


 わたしが、なぜか聖女として王都に連れて来られてから10日が過ぎました。

 この10日間の間にわたしは教会内をいろいろ散策しましたし、護衛が付きましたけど、王都の中も散策しました。

 そこでわかったのはマール村の生活水準の低さ。


 神殿騎士ロッソさんにマール村から連れ出され、マール村から一番近い街、ケールに着いた時はその大都会ぶりに驚いたものだけど、王都までの3ヶ月間に逗留した町、街の度に驚き、マール村の生活水準の低さに気が付いたものです。

 後に、最終的に着くことになる王都の規模と生活水準の高さに驚く事になるんだけどね。


 まず、狩りの獲物である動物の毛皮を着ている人がいなかった。

 動物の毛皮で作った服は、猟師には勲章みたいな物みたいらしいし、わたしたちも着ていたけど以外にあったかくて使い勝手が良かったんだよね。

 村一番の猟師が着ていた、熊の顔も付いているので着ると、見た感じが最早熊になる全身熊装備なんかかっこいいのにね?

 あ、冒険者は別ね。

 冒険者は普通に毛皮とか、動物の皮で出来た鎧とか普通に着てた。


 食べ物なんかも、お店には食材がいっぱいだし、屋台や出店では出来合いの食べ物がいっぱいです。

 買ってその場で食べ始める人もかなりいるしね。


 見るからに高級そうな服を着てる人もちらほら見ますし、周りとは明らかに店構えが違う高級店なんかも見受けられます。


 さて、わたしは今、王都の教会にいるわけです。


 マール村から出て来たばっかりの頃ならともかく、3日もすればわたしを取り巻く環境と、周囲のわたしに対する扱いもわかります。


 着のみ着のままだったわたしの服は白い服になりました。

 教会が用意した服で、よくある中世ヨーロッパの貴族や貴婦人が着るようなドレスじゃなく、形としてはミレッタやコニーが着る様な修道服が基本です。

 ただ、色合いがミレッタたちの黒を基本とした色合いじゃなく、白を基本としたカンジです。


 教会に来た初日にわたし用の服を作るという事で、身体のサイズを測られていました。

 まあ、5才児の修道服なんて無いでしょうし、新しく作る事になるのは仕方ないと思いますね。

 あ、もちろん身体のサイズを測ったのはミレッタですよ?


 ただ…ねぇ。

 形は修道服だけど、色が白で…これ、たぶん絹。シルクです。

 つるつる、すべすべしてて、すっごい肌触りが良いのよ?

 総シルクの服なんて現代日本ですら着た事無いよ?


「これは…すごく高いんじゃないのでしょうか?」


「金額までは私にはわかりませんが…高い事は確かでしょう。ですが聖女のミリィ様にはそれ相応の格好と言うモノがありますので」


 高い衣装に焦ったわたしに、ものすごく普通に返されたミレッタの言葉がすごく印象的でした。


 綺麗な服、可愛い服、高級なブランド品と言うのはオンナノコの憧れではあるけど…正直、気が引けます。

 某通販サイトの樹海だと総シルクのワンピースで15,000円くらいからだったかな…?

 工業化された現代日本価格でそれだから、完全手作業の中世ヨーロッパ風のこの世界じゃ値段がとんでもない価格になる気が…


 とは言え、ミレッタの言葉にも納得出来る所もあります。


 まがりなりにも、わたしは聖女として良くされています。

 まだ教会以外の人とは会ってないけど、いずれは他の人にも会う事が出てくるでしょうし…

 その時に村娘の格好じゃ格好が付かないって事なんでしょう。


 あれだね。

 有名アイドルグループのライブを見に行ったのに、全員がステージ衣装とかじゃなく、毛玉まみれの着古したジャージ姿で出て来られた時のがっかり感とかそんなカンジかな?

 あえてそんな恰好したんじゃ無ければね。


 GOになればGOに従って進めって言葉もありますしね。


 そうそう、10日もあれば食事事情も分かります。


 焼きたてのパン。生野菜のサラダ。肉料理。野菜や肉類の具材がたっぷり入ったスープ。きゃべつの千切りのちょっと酸っぱい…なんて言ったかな、アレとか。


 フランス料理のフルコースじゃないけど、前菜、副菜、メイン、魚料理、スープ、デザードとかとにかくいっぱい出てきます。

 フランス料理のフルコースなんて食べた事無いから順番とか前世と同じかどうか知らないけどね。


「すごく良くしてもらってて、嬉しいのですけど…こんなにいっぱいは食べられません…」


 サラダにしろ、肉料理にしろ、スープにしろ、とにかく大皿でものすごい量が出てきます。

 食べきれるわけないじゃん!

 5才児が!


「それに、すごく高級な料理の数々じゃ…」


 山間の寒村の食生活に慣れたわたしには、この間外出した時に見た屋台の料理の数々でさえ、収穫祭でも出た事の無いごちそうに見えたんだよ?

 教会で出される食事は、明らかにそれ以上の高級感が漂ってます。

 見た目とか。盛り付けとか。

 それはもう、ぷんぷんに!


「まあ、確かに、わたしたちが普段食べてる料理に比べたら豪勢ですけど、だからと言ってそこまで物凄く豪勢と言うわけじゃないですよ?」


「そうなんですか?」


「ええ。多少ランクと数は落ちますけど、似た物を食べてますし、それにーー」


 ミレッタはいったん言葉を止めます。


「それに?」


「ミリィ様はもう少し食事を増やして食べていただかなければ。失礼ですけど、ミリィ様は王都の同年代の子供と比べても痩せすぎていますし」


 山間の寒村での今までの食生活では仕方ありませんけど…とミレッタは続けます。


 まあ、たしかに、食事に困っていたわけじゃないけど、豊かとは言えないからね。

 痩せすぎと言うのも否定できないし。


「それにですねーー」


 ミレッタが続けます。


「食べきれないのは分かっていますし、残してもかまいませんよ? と、言いますか残されるのを前提の量で作っていますよ」


「え?」


「ミリィ様の好みを探すというのも兼ねているんですよ。好みに合って量が足りなくなるというのが一番駄目ですから」


「はあ」


 自分の好みを、自分から言うんじゃなく、探られるというのはあんまりいい気はしないけど、わたしの事を思っての事だし、ここは受け入れる所なのかな?


「でも、わたしだけすごい料理を食べていては、他の方たちから良く思われないのでは…?」


「教会内での地位が上がれば、良い食事、良い生活になるのは当たり前ですし、当然の権利です。だからみんな地位を上げて頑張ろうとします。残された料理は他の修道女や修道士に回されてみんなで食べますので、食材を無駄にしているわけじゃないですよ。1品2品豪華な料理が増えるのでむしろ喜ばれてますよ」


 ええー…

 自分の残した料理が他で食べられてるって…ちょっと、いやかなりヒクんだけど…

 ここではそうと納得するしかない……んでしょうね。


「何と言いますか…世俗的と言うか俗世にまみれてると言うか…」


 一瞬、きょとんとした表情をしたミレッタだったけど、ああ。と言った表情をしました。


「ミリィ様がいた村には教会とか無かったですからねぇ。勘違いされているんですね」


 勘違い?


「別に教会は粗食に耐えてあらゆる欲に耐える、清貧に過ごすとかではないですよ?」


「そうなんですか?」


 衝撃の事実がミレッタの口から出ました。


「はい。教義にもありますよ。えーと…ミリィ様にわかりやすく説明すると…『一生懸命働いて得た対価は当然の権利。好きに使って何が悪い』『清貧に耐えて何になる。一生懸命働いて美味しい物を食べて、良い生活を送る』と言った感じです」


「ぶっちゃけすぎです!」


 何ですかその教義!

 何て漢らしいまでの開き直り感。


「まあ、かなり極論した説明ですけど。角が立たない様に布にくるんだ感じで流布されてますけど、おおむねそんな感じですよ? と言うのも、天光降(サン・レイ)教が出来た頃は今よりずっと食生活も悪いものだったでしょうし、食べるという事は何より大切だったはずです」


 ああ…そういう説明されれば納得できますね。

 まがりなりにも聖女とされているから、そのへんの教義や宗教の成り立ちなんかも勉強しておいたほうが良いね。


「お酒とかはどうなんです?」


 ぐでんぐでんになってたり、酔った勢いで強気に出てクダを巻いて周りに迷惑をかける『酔っ払い』はわたしは特に嫌いです。

 警察の奮闘を特集したTV番組とか良く見てましたけど『酔った勢いで~』『飲み過ぎて~』なんて言い訳を聞くと腹が立ちます。

 迷惑をこうむった方から見れば『酔った勢いで~』『飲み過ぎて~』なんて言葉で済ませてほしくないです。


 部活帰りで遅くなった時、駅のホームで何度か絡まれた事あるけど、「おう、おねえちゃん。ちょっとちょっと。ちょっとこっち来て」って何ですか? 行くわけないでしょう。行ったら何するんですか? で、行かなきゃしつこく呼ぶし、それでも行かないとキレたり無理やり腕掴もうとするし。

 ホームのベンチに座ったまま「おねえちゃんJKか? 駄目だな~、もうちょっとおっぱい大きくなきゃ男誘えないぞ?」とか余計なお世話だね。ぶん殴りたいね。おまけに周りの酔っぱらいもそれに合わせてげらげら笑って止める事もしないし。

 今思えばセクハラで駅員さんに泣きつけばよかったかな?


 あ、今思い出しても腹が立ってきた。


 そういう酔っ払いも、自分で稼いだお金だから~って事でOKだったら、ちょっと考えなきゃいけないね。

 そんな所で聖女ですなんて言いたくない。


「お酒も普通に大丈夫ですよ? とは言え人前では飲まないのが慣例になってます。前後不覚になるほど飲んでその上、他人に絡んだりしたら処罰されます。下手をしたら平民が同じ理由で衛兵の世話になるより重い罰が下されますよ」


 あら、その辺はしっかりしてるみたいですね。

 わたしが酔っ払いを嫌っている事に気が付いたのかずいぶん詳しく説明してくれます。


「同じく、お金にあかせて怠惰な生活をしてぶくぶく太ってたりも駄目ですね。そう言った者は早々に教会から放逐されます」


 人に見られる職種と言えますからね。

 いちじるしく教義から逸脱したり、見た目が適さなくなるとダメという事ですか。

 そう言えばレヴァンさんもけっこう偉いと思いますけど、太ってないですしね。

 他の偉いっぽい人たちも体格のいい人はいたけど肥満体形の人はいなかったですね。

 何人かは多少太ってはいたけど、あれは肥満とかじゃなく、年齢とかでおなかが出て来たってカンジでしたしね。


 うん。こうしてミレッタとの何気ない会話でも、結構勉強になるね。

 宗教組織なのに『清貧であれ』を真っ向否定した教義なのにはびっくりしたけど。

わざわざ注約しなくてもわかるとは思いますが…

ミリィが文中で思った『GOになればGOに従って進め』とは『郷に入っては郷に従え』です。

誤字ではありません。

ミリィが間違って覚えてるだけです。


1週間に1度くらいは更新できたらいいなぁ…

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