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王都を散策しましょう。

ずいぶん間が空きましたが、久しぶりの更新です。

「ミリィ様。王都を散策しましょうか?」


 王さまとの面会が終わり、修道院の中にある、わたし用にあてがわれた客間に戻って来ています。

 レヴァンさんとは、途中でお別れしています。

 レヴァン様も、結構偉いはずなので色々と忙しいのでしょう。

 ミレッタから、言葉をかけられたのは、そんな時でした。


「王都……と言うと、この街の中ですか?」


「はい、先ほど国王陛下とご歓談の際に、ミリィ様が王都を散策したいと言っていましたので」


 あー…そう言えば、そんな事言った記憶があります。


「そう言えば、先ほどはミレッタもコニーも一言も話さなかったですよね?」


 思えば、さっきはわたしと王さま、レヴァンさんしか話をしていませんでした。

 ミレッタもコニーもそして、王さまの脇に居た人たちも会話に入って来ていませんでした。


「は? …ああ、はい」


「せっかく王さまに会えたのですから、何かお話ししても良かったのではないですか?」


「まさか! 陛下に直接お声をおかけするなんて! 本来なら、私もコニーも陛下と同じ部屋に居る事すらかなわないのですよ?」


「あれ、でもさっきは…」


「それは、ミリィ様と一緒だったからですよ。でなければ陛下のお姿さえ間近で見る事も無かったですよ」


 大袈裟ですねぇ…村娘Dのわたしでさえ、普通に話をしてよかったんですよ?

 あ、そうか。

 わたしは、ぴんと来ました。


 ここは、中世ヨーロッパ風異世界だから身分の違いがあるのでしょう。

 日本には身分なんてありませんからね。

 せいぜい会社の社長とか、政治家が偉いってくらいでしょうか?

 あー、でもわたしも政治家の人や社長とかと話をしろって言われたら緊張しちゃいますね。

 それと同じって事かな?


 この世界は、もっと身分の違いが厳しいのかもしれませんね。

 わたしはこっちで生まれてからも、村の中しか知りませんでしたから、意識した事無かったですね。

 こういうのをなんと言いましたっけ?

 えー…と、……そうそう、封建(ふうけん)制度!

 ふふん、これくらいは知ってますよ!


「コニーもですか?」


「そうだな。近衛騎士団の連中ならともかく、王国騎士団の連中なら隊長クラスじゃないと陛下のそばに行く事は無い。私が居た神殿騎士団なら陛下に会う事などまず無い。神殿騎士団団長でも陛下には会った事は無いのじゃないか?」


「騎士団の団長でも会えないのですか?」


「近衛騎士団、王国騎士団、神殿騎士団。それぞれ仕事の向きが違うんだよ」


「仕事の向きですか?」


「ああ、近衛騎士団は陛下や王族だけを守る騎士団で精鋭ぞろいだ。王国騎士団は国内の治安維持や他国との争いの際の組織。神殿騎士団は聖女様と教会組織の為のものだ。その実力は凄いぞ。近衛騎士団などには負けん!」


 コニーは負けず嫌いのようです。

 いえ、自分の仕事に誇りを持ってると言った方がカッコイイでしょう。


「それで、どうしますか? 街に外出も可能ですよ?」


「行ってみたいです!」


「では、行きましょうか」


 わたしは王都の散策に行く事になりました。




 と、いう事で、やって来ました王都です!

 と言っても、教会の敷地から出ただけですけどね。

 もちろん、ミレッタもコニーも一緒ですよ。

 ミレッタが居ないと、ドアも開けられないしコニーが居ないと、ひょいと攫われてしまいますからね。

 王都どころか、村から出るの事態初めてなんです。

 こういう時は、臆病なくらいがちょうどよいでしょう。

 石橋は叩いてみて割れれば危険という事がわかりますからね。


 で、王都の様子なのですが、教会を出てすぐは静かなモノでした。

 でも、通路を一本過ぎて大通りに出た途端ーー


 すごいです!


 自分で言ってあほっぽいですが、それしか思い浮かびません。

 村で秋の終わりにやるお祭りの何十年分でしょうか?


 収穫祭ですか?

 まあ、村のお祭りは収穫祭とはちょっと違いますけどね。

 山々から木の実とか採れる時期ですから収穫祭とも言えなくはないけど、マール村には麦畑なんて村の外れにちょっとあるだけですから日常的なごはんになりません。

 山々から木の実や山菜を採り、イノシシやシカなどをたくさん狩ってきて、冬を迎える準備をします。

 一日だけ好きなだけ飲み食いしてあとは春になるまで待ちましょうーーって言う、食べ修め的な意味が高いお祭りですからね。


 とにかく、人がすごいです。

 人、人、人。

 雑踏がすごいです。

 広い通路の真ん中には広い馬車道があって、絶えず馬車が行きかっています。

 その両脇には色々な商店、出店が並び、その前をすごい人が行きかっています。

 日本の雑踏と違って、室内店舗はともかく、出店や屋台からの掛け声がすごいです。

 そして出店や屋台の人の声もすごいけど、そのお客の声もすごいです。

 こんなに、がやがやしてるのは初めでですね。


「すごいです! 王都って、みんなこんなに賑やかなのですか!?」


 こういう、にぎにぎさに当てられると、なんだか気分もうきうきしてきます。


「流石に王都全てがこうなわけではありませんよ」


 ミレッタか苦笑した様子で話します。


「ここは、王都でも一番の商業区の目抜き通りですので、ここまで賑やかなのですよ。もちろん、他の商業区や通りも賑やかですが。ほら、先ほどの教会付近は静かなモノだったでしょう?」


「すごいです! まるでお祭りです!」


「ふふ。お祭りではありませんよ。王都はいつもこんな感じです。お祭りの時はもっと凄いですよ」


「はー…すごいですねぇ…」


「ミリィ様、はぐれるといけませんから手を繋いでおきましょう」


 ミレッタはそう言ってわたしの手を握りました。


 そうですね、わたしは子供です。

 今の目線では、あっと言う間にミレッタやコニーの姿を見失ってしまいますね。

 はぐれたら……ミレッタとコニーを見付けられる自信がありません。

 と、言いますか、まず迷子になっちゃいますね。

 そしたら、ひょいと攫われるんですね。

 こわや、こわや。


「もし、迷子になったら、無理に私たちを探し回らなくていい。どこでもいいから一番近くの立派な店に入って、迷子だから教会に連れて行ってほしいと伝えればいい」


「そうなのですか?」


「ああ。立派な店と言うのが重要だ。それなりに立派な店なら、店員も教育が行き届いているからな。子供の迷子でも無下には扱わない、両親などに恩を売れるからな」


「そうですね。逆に出店や…特に屋台は駄目ですよ」


「どうしてですか?」


「屋台は食べ物屋が多くてですね、しかも一人でやっている者が多い為、『商売のジャマだー』って事になりかねないのです。あ、もちろんすべての屋台や出店がそういうわけじゃないですよ。でも、そういう屋台が多いのも事実なのです」


「わかりました!」


 わたしは元気にあいさつをします。


「あとは…何かあれば警備兵に言うのが一番なんだが……」


「初めて村から出て来たミリィ様には分からないでしょうね…」


「警備兵って事は、剣を提げている人でしょう?」


 日本には異世界転生モノの小説は溢れているのですよ?

 もちろんわたしはそう言ったモノも読んでいました。

 中世ヨーロッパ風異世界転生モノに転生したわたしに死角は無いのですよ! ふんすっ!


「んー……ああ、ほら」


 コニーがわたしの横にしゃがみ込み、わたしの目線に合わせて腕を伸ばし、あるところを指さします。


「あれが警備兵。胸のプレートが青いのが目印だ」


 コニーの指さした先には、コニーの言う通り、青い胸プレートをした人物が立っています。

 あれが警備兵ですね。

 全身がっしょんがっしょんじゃないけど、ほら剣を提げてるじゃないですか。


「ミリィ様のさっきの答えだと、冒険者にも当てはまるな。ほら、ああいうのが冒険者だ」


 コニーは再びある方角を指さします。

 指さした先には……うん。冒険者ですね。

 まんま、冒険者です。

 王道、中世ヨーロッパ風異世界にありがちな格好です。

 一切統一されてない武器と防具。

 同じパーティと思わしき集団でも、同じ格好の人はいません。

 小奇麗にしている人もいれば、全身真っ黒に汚れている人もいます。

 それに比べると、所々に見られる警備兵は同じ剣に、同じ青い胸プレートで統一されています。


「この国では、青い胸プレートは王都の警備兵しか着けていない」


「そう言えば王さまも青かったですね」


「お、よく気が付いたな。青は貴色ーーこの国コンラード王国、そして王家の色なんだ。だから青い色は普通使われない。まあ、使ってはいけないという法は無いが、皆、遠慮して使わないな。」


「とは言っても、国外の人や冒険者は使っていますので、逆に言えば青を使ってる人は王族か警備兵、国外の人物と判断が付きやすいですよね」


「と、言う事だ。青い色を使っていても例外はあるから、それなら初めから店に駆け込んだ方が無難なわけだ。慣れて、警備兵が見分けが付くようになったら、その時は警備兵に言えばいいさ」


「わかりました」


 いろいろ心配かけちゃってますね。


「そう言えば、コニーは剣を提げていないのですね。神殿騎士団からわたしの護衛に来たのですよね?」


 そうです。

 コニーはわたしの護衛なのに剣を提げていないんですよ?

 護衛=剣だと思うのですが…

 はっ! まさかの殴り専門のパターン!?

 ナックルは……着けてないですね…素手の拳派?


「所属は確かに神殿騎士団だが、今は曲がりなりにも聖女様付きだからな。普通の修道女の格好をしなくちゃいかん」


「ふふ」


 ミレッタが軽く笑いました。

 これは何か知ってる顔ですね!


「ほら」


 コニーがわたしの手を取って、自分の太ももあたりに触れさせました。

 んん?

 修道服越しに、こつりと手に固い感触があります。


「剣は下げていないが、ちゃんと武器は隠し持ってるよ」


 おおっ!

 何かあればスカートたくし上げて隠しナイフですか!

 太ももあらわにしてお色気路線ですか!?

 宝塚星組トップが一瞬だけ突如見せるお色気……アリですね。


「コニーは普通の剣より、短剣とかナイフの方が得意なんですよ。りんごの皮むきやじゃがいもの皮むきをやらせたら修道女の中では最速でしたよ。コニーが神殿騎士団に行くまではずいぶん助かってました」


「ミレッタ! 後半は必要の無い情報だ!」


「ふふ」


 ミレッタとコニーのやり取りに、わたしは自然と笑みが出ました。

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