王様の、おなーりー。
リアルでちょっと忙しくなります。
次回の投稿は、ちょっと間が空くかもしれません。
『今日は、王様との面会があります』
『実は、もう、王様は来ていて、待っています』
突然そう言われても、困ってしまいます。
『突然来たんだから、待たせておっけー』
いえ、そうは言ってもですね。
相手は王様なわけでして。
「ミレッタ。どうしましょう、わたしはこれしか服を持っていませんよ?」
わたしは自分の服を見下ろします。
『村娘の服D』
防御力:2
耐久力:5
価値:F
備考:特に何の変哲も無い布製の服。
村の娘が日常的に着るよう多少丈夫に作られているが、それだけのモノ。
村民同士でのお下がりが繰り返されている為、もはや価値は全く無く、換金すら不可能。
ゲームで言えば、こんなところでしょうか?
さすがに、王様に会うのに、この服じゃマズいでしょ? って事くらい分かりますよ?
「貴族や裕福な者ならドレス等で着飾る事もありましょうが、ミリィ様は昨日まで村で生活していたのですから、そのままの格好でも大丈夫でございますよ」
わたしに問われたミレッタは答えに困っていたみたいですが、代わりにレヴァンさんが答えてくれました。
「失礼にならないでしょうか?」
「陛下が各地の村に巡幸する時も、村人は普段着ですので大丈夫でございますよ」
そんなもんですか。
マール村には偉い人が来た事なんて無いので知りませんでした。
せいぜい、わたしを迎えに来た全身鎧でがっしょんがっしょんいってた騎士様くらいでしょうか?
「なに、一人で陛下にお会いするわけではございません。私も側におりますので大丈夫でございますよ」
「1人で会うのかと思っていました」
「ミリィ様はまだ王都に不慣れでございますからな。当然の事でございます。ミリィ様に答えられない質問や分からない事があれば、すべてこのレヴァンが代わりに答えますので、気楽になさっていてくださって結構でございます」
「よろしくお願いします。レヴァンさん」
そうと決まればーーという事で、わたしは身体のお手入れをされました。
温かいお湯に浸したタオルで身体中を拭かれーー特に顔を重点的に拭かれましたーー髪には櫛を丁寧に入れられました。
昨日王都に来てから、夕ご飯を食べる事無く寝ちゃっていたようですし、着のみ着のままでしたしね。
あ、レヴァンさんは外に出ててもらいましたよ。
5才児でも恥ずかしいじゃない?
さすがに5才児に合う服なんて修道院にあるわけないらしいので、服はそのまま。
「どうです、綺麗になりましたよ、ミリィ様」
ミレッタが姿見の前にわたしを連れて行き、褒めてくれますが……
あれですね。
よく、漫画やアニメでみずぼらしい村娘をお風呂とかに入れて丁寧に汚れを落とすと、なんとそこには美少女が!!
ってなりますけど、あれはウソですね。
結論! コギタナイ幼女を磨いたところで、まだまだコギタナイ幼女が出来上がるだけ!
ああいうのは、普段からお肌のお手入れとか、箸より重いモノを持た事が無いような人種に限られるんですね。
村娘Dは、どこまで言っても村娘Dなわけですよ!
…………ちょっとだけ期待したっていいじゃない。
わたしだってオンナノコなんだし……
さて、気を取り直して、やって来ました大聖堂。
さすがに、王様もいるし大ホールは無理って事で、大ホール脇にある歓談室に通されました。
かちゃりと開けられた扉の向こうには10人くらい座れる丸テーブルに同じく並べられた10脚の椅子。
窓からおひさまの光がよく入ってきていて、明るい部屋です。
レヴァンさん、ミレッタ、わたし、コニーの順で部屋に入ります。
「おお、来たかレヴァン!」
大きな声が部屋の奥から聞こえました。
声は聞こえど、姿は見えずーーなんてカッコイイこと考えてみますが、ぶっちゃけ、わたしがちっちゃいせいで見えないんですよ。
わたしの周りはみんな大人だし、しょうがないじゃない。
更に部屋の奥に通されてようやく人が見えました。
数人の人の塊があってーー真ん中に男の人。
その両脇に、キツイ目つきでわたしたちを見てくる男の人。
「お待たせしましたな。陛下」
「まったくだな。会わせろと言っても会わせんし、こうして公務にせねば会わせる気が無かったのではないか? レヴァン?」
「ですから、昨日も何度も申し上げた通り、聖女様は王都に到着されたばかり故、お疲れであると」
「だからワシ自らこうして参ったのだ。文句は無かろう?」
レヴァンさんと中央の男の人が話し合っています。
レヴァンさんが『陛下』と言って、中央の男の人はそれに応えていますので、この人が王様なのでしょう。
なんといいますか……普通ですね。
普通のおじさんです。
がっちりしてるわけでも無いし、ひょろっとしてるわけでも無い。
眼光鋭いーーってことも無いし、若くイケメンでもないし渋いオジサマでもない。
普通です。
大事な事なので何回か言いました。
言葉には出さないけど。
どこにでもいる普通のおじさんってカンジです。
王様なのに王冠かぶってないんだね?
王様って王冠が本体だと思ってたのに。
「ところで…ここにいるという事は、その…子供がそうなのか?」
王さま(暫定)がわたしに目を向けました。
着るもの派手ですね。
わたしが着ている村娘の服Dとは全然違います。
お金かかってますねー。わかります、はい。
身振り手振りや、ちょっと身じろぎしただけで、服自体がきらきら光ってます。
うおっ、まぶしっ!
ラメ入りでしょうか?
服全体が光ってるんじゃなくて、しわや光の加減によって光ってる箇所が移動していく感じです。
全体的に青ですね。
ゆったりしたサーコート? の上に丈の短いベストっぽいのを着ていて、わたしの顔以上の大きさがありそうなバックルのベルト。肩からは何かの毛をいっぱい生やしたコートを羽織っています。
刺繍や各種装飾品が至る所にあって、アクセントで金糸や銀糸が縫い込んであります。
ミレッタやコニーは黒や、紺と言ったシックな色合いで、襟元や袖口などアクセントとして白が入っていて、全体的に見れば地味系。
レヴァンさんは白を基調として白糸や所々にある銀糸で刺繍とかに力が入っていますが、やっぱり基本が法衣だから、地味系の中での派手系ってカンジ。流石に昨日のバリゴージャス版ではないみたい。
わたしたち教会側から見るととっても派手ですね。
「はい、こちらが昨日お話しした聖女様です。例の噂の人物でございます、陛下」
うわさ……?
気になる単語が聞こえました。
「……こんな幼い子供だったのか?」
「その、幼さという事も加味して、聖女様はお疲れですから、と申し上げていたのですよ?」
「だったら、始めからそう言えばよかったろう」
「まったく聞き入れておいでではなかったようですが? 一言目には『会わせろ』二言目には『会わせろ』三言目には『会わせろ』と」
「ぐむ……まあ、いい。噂の方も…どの程度なのだ?」
「実際に見てもらうのが一番ですが…天光降教の聖女と呼ばれるにふさわしきお方ですよ。最早切断するしかないような怪我を負った者を、魔法で治す様をこの目で見ましたゆえ」
「そこまでか…」
どうやら、わたしの事が思っていたよりも幼いので驚いているみたいです。
「聖女様。実は、この王都では数ヶ月前から聖女様の事が噂になっていたのですよ。もちろん直接聖女様の事では無く、腕の良い治癒師がいるという事で」
レヴァンさんが、わたしに話しかけてきました。
なるほど。
それが、さっき言っていたうわさってヤツですね。
「その噂の治癒師が聖女様だという事がわかって、マール村まで迎えに行ったのです」
「済まんな。呼びつけたのに、ほったらかしにしてしまって」
王さま(暫定)がようやく、完全にわたしを向きました。
「この国、コンラード王国国王、アレックス・レム・ド・コンラードだ」
(暫定が)とれました。
王さまに間違いないようです。
「ミリィです。王さま」
わたしはきちんと頭を下げ、お辞儀をしました。
「…おお、こんなに幼いのに立派なレディだな」
王さまはわたしの態度に驚いたようです。
ふふん、日本人は礼儀正しいのですヨ。ふんすっ。
「今、レヴァンが言った様に、王都では数ヶ月前からおぬしの噂でもちきりでな。この王都まで来るのは大変だったろう」
「いえ、騎士のロッソさんが良くしてくれましたので、大丈夫でした」
「騎士ロッソ?」
「神殿騎士のロッソ・アンダーソンですよ。陛下」
一瞬「?」となった王さまにレヴァンさんが答えました。
「ああ、神殿の方の騎士か」
「?」
「ああ、済まぬな。王国軍、近衛騎士団にもそれぞれ騎士がおってな。ロッソ・アンダーソンの名前が一瞬出て来なかったのだ」
騎士もいっぱいいるでしょうしね。
仕方ないでしょう。
「それで、ミリィはいくつなのかな?」
「5才です」
「王都は初めてかな?」
「はい、初めてです、王さま」
「もう、王都見物はしたかね?」
「いえ、馬車の中から眺めるだけで、まだ見物には行っていませんが、人や物にあふれていて、とても賑やかで、楽しそうな街並みでした。折を見て行ってみたいですね」
「ほう、わずか5つで、ここまでの対応を出来るとは。レイミーにも見習わせたいものだな」
知らない名前が出ました。
「レイミーと言うのは、ワシの末の娘でな。ミリィの噂話に夢中になっておってな。噂の治癒師に会えるとなれば喜ぶだろう」
王さまの娘って事はお姫様じゃないですか。
偉い人は、もうおなかいっぱいなんですけど。
「歳は10だから、さほど離れておらん。いつでも王宮に遊びに来なさい」
その後、王さまといくつか話をした後、王さまは帰って行きました。
12/17 17:40 誤字修正いたしました。
誤字報告、ありがとうございます。




