王都の奪還
ペマーレの街に辿り着くと、イブキはサロス教団の信徒の一人から教団の服装を強奪した
そうして、教団の信徒に変装したイブキはその街にある教会へと向かった
教会の内部には多くの信徒がいた
1日のうち何度か定期的に祈りを捧げているようだ
イブキもそれに加わるものの、具体的な行動は思いつかない
おそらく近くにリリアーナがいるはずだが、その所在を直接聞くと疑われるかもしれない
だが少なくとも自力で見つけ出すには時間がかかりそうだった
手をこまねいているわけにもいかない
イブキは行動を起こすことにした
まず手紙を書いた
内容は「明日、ステラクリスを持って教会に行く。王女を目視したら姿を現す」という内容だった
それを見知らぬ誰かに託されたという名目で教団の幹部らしき人物に手渡した
それを受け取ったその人物の顔はニヤけていた
どうやらうまくいきそうだ
勝負は明日
おそらく何人かの魔導士と戦うことになるだろう
しかし、戦闘は後回しだ
まずは教団の信徒のフリをしたままリリアーナに近づき、救出したら逃げる
追手が来たら蹴散らす
不利な戦いになるだろうが、やるしかない
その日、イブキは街の宿に泊まり、その時を待った
同じ日、コーネリアスは精鋭を連れて隠し通路を進んでいた
そこにシャルロッテも加わっていた
シャルロッテはコーネリアスに尋ねる
「この隠し通路はマルエガには知られていないのか?」
「知られていない。これは王族のみが知っている通路なんだ」
「しかし、本当は知られていて敵兵が大勢待ち構えているという可能性もあるのではないか?」
「いや、もしマルエガに知られていたら、最初の奇襲で俺は逃げ延びることができなかった。つまりはそういうことだ」
「なるほどな」
そんな会話をしながら50人ほどの隊は通路を進んでいく
そして、通路を抜けた先の隠し扉から周囲の様子を確認すると、その部屋には誰もいなかった
どうやら、ここは王族のみが立ち入ることが出来る書斎のようなところらしい
そこから隊を二つにわけることにした
一方には30人ほどの兵士
こちらは城の兵士が反乱を起こしたかのように見せかけて、城内の敵兵を引き付ける
「彼らは大丈夫なのか?」
シャルロッテが尋ねる
「ああ、彼らは俺の部隊の中でも精鋭だ。数で劣ろうともマルエガに寝返った兵達とは質が違う」
コーネリアスの表情には余裕のようなものが感じられた
しかし、その余裕の表情は次の瞬間に消える
「しかし、問題はマルエガ本人だ。奴は歴戦の強者。今は宰相をやっているが、もとはリーベル国の軍神だ」
それを聞いたシャルロッテは
「ああ、その名はオルフェリア国でも響き渡っている。私の父も戦場で奴に殺された」
それを聞いたコーネリアスは
「そうだったのか」
とだけ答えた
そうして、陽動が功を奏し、城内で騒ぎが起き始めた頃、コーネリアス達は一気に王の間に向かった
そこには10人ほどの兵士とマルエガがいた
コーネリアスを見るなりマルエガは
「ほう、わざわざ死にに戻ってきたのか」
「そんな風に見えるか?」
「まさか、私を倒すつもりか?お前に剣を教えたのは私なんだぞ」
マルエガは余裕の態度を見せる
次の瞬間に戦闘が始まった
マルエガを守るように立つ10人ほどの兵士
そちらも精鋭と言ってもよかった
コーネリアスの兵と引けを取らない
しかし、その中にマルエガが加わることで一気に敵が優位に立つ
一人
二人
次々とコーネリアスの兵が倒れていく
それでも敵の兵も倒れていった
両者ともに兵の損耗比率は同じ
しかし、それはつまりマルエガのほうが2倍の相手を倒している計算になる
そんな中、コーネリアスは隙を見てマルエガに斬りかかった
しかしマルエガはそれを剣で受け止めると力で押す
「思ったよりは強くなっているが、まだまだだな。最後の指導として、敵兵を圧倒して殺す戦術を教えてやろう」
そうして、マルエガは蹴りを放つ
それを受けたコーネリアスは吹き飛んだ
そこにマルエガが迫る
しかし、その振り下ろされた剣をシャルロッテが受け止めた
「どうやら、コーネリアスには荷が重い相手のようだ」
「誰だお前は?」
マルエガは見知らぬ相手を見て疑問を浮かべる
「力だけが剣技じゃない」
そう言うと、シャルロッテは手数に打って出た
それを躱しながら、重い一撃を繰り出すマルエガ
しかしシャルロッテは余裕でそれを躱す
「やはりな。お前は力はまだ十分にあるが、動きが鈍い。衰えたな、マルエガ」
そう言い放つと、シャルロッテの素早い攻撃がマルエガに少しずつ確実にダメージを与えていく
受けきれないことを悟ったマルエガは大振りの一撃に全てを込める
しかし、それが振り下ろされる前にシャルロッテは懐に入り、その剣がマルエガの胴を捉えた
しかしマルエガは剣を離すと、素手でシャルロッテを捕まえると首に手をかけた
「こうなれば、お前も道連れだ」
その両手に力を込める
しかし次の瞬間、コーネリアスの剣がマルエガの首を貫いた
マルエガはその手をシャルロッテから離すとその場に倒れた
その後、周囲を見回したコーネリアスは、その場にいた敵兵が全て倒されているのを確認した
マルエガが倒されたことを知った敵兵は投降を始めた
こうして、王都の奪還の作戦は成功に終わった




