海を越えて
次の日、イブキはひたすら空を飛ぶ練習をした
飛ぶこと自体は簡単に出来るようになったが、上手な飛び方にはコツがいるようだ
本番では魔力をうまく制御しないと海の真ん中で魔力が切れるかもしれない
そうして二日目にはリリアーナを担いでも陸まで辿り着ける確信を得た
三日目はひたすら休息した
そして四日目、イブキはリリアーナを担いで海を渡る決心をした
シャルロッテとの合流場所は、港町ドラクセルの船着き場に決めた
イブキは救助を呼んでくることを船長のルシウスに伝え、リリアーナと共に海を渡った
魔道船では丸一日と言っていたが、魔法で飛ぶほうが早いようだ
半日くらいで到着するかもしれない
海を渡っている間、イブキはリリアーナにいろいろ聞かれた
「あなたはオルフェリア国の人なのですか?」
「いや、違う。もっと遠くの国の人間だ」
「それはどこにあるのですか?」
「うーん、うまく説明できない」
日本なんてこの世界には存在しない
「あなたは誰の依頼で私の護衛をしているのですか?」
「それは言えないんだよ」
言っても信じてもらえるとは思えない
逆に怪しまれるかもしれない
「そうですか。どんな人なのか気になります」
「なんというか、面白い奴だったよ。それに話しているとなんか落ち着くんだよな」
「そうなんですね」
そんな会話をしながら海を越えていくと思ったより早くに陸が見えた
大きな街も見える
あれが話に聞いた港町ドラクセルなんだろう
街に到着すると船着き場が見える宿を借りた
そして、港にいる人達に救助の話をすると快く引き受けてくれた
これで数日後にはシャルロッテもこの街に来るはずだ
そして、ここはもうリーベル国だ
オルフェリア国とは敵対関係にある国だが、逆に言うとリリアーナ王女のことはほとんど知られていない
偶然立ち寄ったこの街に刺客を用意する理由もない
そう言う意味では安心はできる
だが、シャルロッテを迎えにいくわけにはいかない
まだリリアーナを一人にしていい段階じゃない
しかし、ただ待っているだけというのも退屈だし、何かやることはないだろうか
そんな事を考えながら、宿から船着き場を眺めていると、そこには釣りをしている人が何人かいるのを見かけた
この世界にもあるのか
「リリアーナ、釣りはしたことがあるか?」
「え?ありません」
「そっか。まあ王女様だしな。一度やってみないか?」
というわけで、二人で釣りをすることになった
この世界の魚にも興味があった
船着き場にいる人達に釣り竿を売っている店を教えてもらい、二人分用意した
「この世界の海は本当に水が綺麗だな」
「この世界?」
「あ、いや、なんでもない」
そうして、二人で釣り糸を垂らす
時間がゆっくりと流れていく
しかし、一向にヒットしない
周りの人達は釣りあげているというのに
そうこうしているうちに日が暮れようとしてきた
近くで釣りをしていた子供が話しかけてくる
「兄ちゃん達、下手くそだなあ」
「・・・・・・」
「しょうがないから一匹めぐんでやるよ」
「・・・そりゃどうも」
そうして、その子供はそこそこのサイズの魚を置いていってくれた
いっそ魔法を海に向けて撃てば大漁になりそうだが・・・・
そんなことを考えていたとき
「きゃあ」
リリアーナが声をあげる
来たのか
「竿を立てるんだ」
「そんなことを言われても・・・・」
引きがとんでもない
「兄ちゃん、その女の人だけじゃ無理だ」
さっきの子供が駆け寄ってくる
慌ててイブキもリリアーナの竿を掴むが、二人まとめて海に引きずり込まれそうだ
水中に巨大な魚影が見える
この大きさは釣りあげるなんてレベルじゃなさそうだ
「仕方ない」
イブキは人差し指を海面に向け、貫通力の高い魔法を魚影に向けて何発か放つ
途端に引きは弱くなった
どうやら仕留めたらしい
その後、周囲にいた人達に手伝ってもらって魚を引き上げた
体長は2メートルくらいはありそうだ
「こりゃ、マンモセイルだ」
周囲の人達が驚いている
「マンモセイルって?」
「高級魚だよ。すげえ美味いんだぜ」
そうなのか
全く知らない魚だが
「よかったら、みなさんで食べませんか?」
リリアーナが提案する
どちらにしても二人で食べきれる大きさじゃない
どうやらこの世界には刺身は無いようだが、切り分けられた身を串に刺して焼いた
確かに、とんでもない美味さだった
リリアーナも驚いている
なんか、この世界で戦争が続いていたなんてウソみたいだな
イブキはそんなことを思っていた




