20年後
オルフェリア国とリーベル国が和平を結んでから20年ほどの平和な世の中が続いた
しかし、不穏な気配が近づいてきていた
「イブキ様、サロス教団の新たな拠点が発見されました」
「わかった。兵を向かわせて調査をする」
この20年、コーネリアスとイブキの二人の王はサロス教団を抑え込みに動いていた
稀に、両者に刺客が送られることもあった
どうやら教団の根は思ったよりも深いようだった
和平交渉からそれほど時間を置かずにイブキはリリアーナと結婚し、オルフェリア国王としてその世界で生きることになった
二人の間には娘がいた
ローゼ、17歳
オルフェリア国の第一王女
イブキは休暇の日にはよく家族を連れて釣りに出かけていた
「今日も例の魚は釣れませんでしたね」
リリアーナがそう言うと
「やっぱりあれはかなり珍しい魚なんだな」
イブキはいつかあの魚をローゼにも食べさせたい
そんな事を思っていた
ある時、ローゼが尋ねた
「お父さんとお母さんはどうやって知り合ったの?」
イブキは困りながら答えた
「とある人に頼まれてリリアーナの護衛をすることになったんだ」
「とある人って?」
それに対して、リリアーナも興味を持つ
「私もその人のことが知りたいです」
二人に聞かれてイブキは仕方なく答えた
「女神様・・・かな」
「なにそれ」
どうやら誰も信じてくれないみたいだった
そうなるとは思っていたが
「昔のことであまりよく覚えていないけど、なんとなくローゼに似ていたような気がするよ」
そんな平和な日々を終わらせたのは、兵からの報告だった
「サロス教団の拠点を調査しに行った兵が壊滅しました」
イブキは思わず立ち上がる
教団が兵を撃退しただって?
もうあの教団にはそこまでの力は残っていなかったはずだ
「わかった。後日、再度調査をする。今度は俺もその拠点に向かう」
そして、イブキは精鋭の兵を集め出した
そんなある日のこと、城内で騒ぎが起こる
城内で何度も爆発が起きた
まさか敵襲なのか?
すぐさま城内の兵が王の間に集まり守備を固める
待ち構えるイブキの元へ一人の人物が現れた
その人物を見てイブキは声が出なかった
代わりに声を発したのはリリアーナだった
「ヘムァン・・・!」
かつてイブキが倒したサロス教団の大司祭だった
ヘムァンは静かに語り掛ける
「ようやく我らの計画は最終段階を迎えた」
その語り口は特に威圧のようなものは感じない
ただただ不気味さだけを感じた
「なぜ生きている?」
ようやくイブキは声を発する
「これが我らの神の力だ。そしてようやく我らの神は復活する」
「神だと?」
「この国に封印されていた神だ。我々はこの時のために準備をしてきた。若い魂を神に捧げ続けた」
「どういうことだ?」
「二国の間に戦争を起こし、長年にわたって戦乱状態を続けていたのだ」
「お前達が和平に反対していたのはそういうことか!」
「そうだ。お前達に邪魔はされたがようやくこの時を迎えた。復活の準備は整った」
つまり、サロス教団は大昔に封印された邪神を復活させようとしていたのか
あるいは邪神に操られているのか?
「残る最後の仕事はステラクリスの破壊だが、その前に個人的にやっておきたいことがある」
ステラクリスは神々の力を宿すと聞いた
その力で邪神を封印した英雄がいた
ヘムァンがここに現れたということは、邪神を復活させる儀式はもう完了しているのかもしれない
ならば、再びステラクリスの力が必要になる可能性がある
「なるほどな。だいたい話は掴めてきた。で、お前が個人的にやっておきたいことってなんだ?」
ヘムァンの顔がニヤける
「聞かなくともわかっているのだろう?」
そして、ヘムァンから膨大な魔力が放出される
「あの時、お前に受けた屈辱を晴らすことだ!」
そう言って魔法を放つ
それをイブキが弾くと天井に当たり爆発する
「全員、下がっていろ!」
イブキは周囲にいた兵にそう指示を出す
「リリアーナも奥に避難しているんだ。奴の狙いは俺だ」
「わかりました。どうかご無事で」
そうして、イブキとヘムァンの二度目の戦いが始まった
その戦いは30分近くにも及んだという
長時間にわたって続いた轟音が終わり、やがて沈黙が訪れる
リリアーナは自室で抱きかかえていたローゼに告げる
「様子を見てくるから、ここで待っていて」
そして、王の間に二人の人物が倒れていたのを見た
「イブキ!」
リリアーナはイブキに駆け寄る
イブキはかろうじて息をしていた
「しっかりして!」
その声を聞いたイブキは目を開ける
「リリアーナ・・・」
リリアーナは返答ができないでいた
「すまない・・・。ほとんど相打ちみたいになってしまった。奴は以前よりも強かった・・・」
「すぐに医者を呼んでくる!」
しかしイブキはリリアーナの手を掴んだ
「リリアーナ。よく聞くんだ・・・。どうやらこの国に封印されていた邪神が復活するようだ。お前はこの国の住人を避難させろ・・・・」
「え?」
「そして、お前自身もローゼを連れてリーベル国を目指せ。コーネリアスに協力を求めるんだ・・・・」
「イブキ!」
「ローゼのことを・・・・頼む・・・・」
それがイブキの最後の言葉となった
リリアーナはしばらくその場から動けなかった




