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■消失

『王女たちの待避は完了しました』

「了解した。こちらも持ち場から敵機を迎え撃つ」


 ハクトはある方向をずっと見つめる。そこから空間が歪んで緑色の巨人が現れる。その巨体たるや一〇〇メートルは確実あるだろう。


 緑色の巨人は右腕を掲げると手のひらから漆黒の球体が現れて射出される。球体は着弾すると空間ごとぐにゃりと歪曲して天玉照は跡形もなく消失する。


『これで天玉照はいなくなったね』

 くくくと含み笑いをする声。シンゴであった。


『あとは君たちをこの世界から抹消するだけだ。このグリオンでね』

 グリオンの足下からタケノコのように緑色の人形が現れる。その数は一、二、三――どんどんと増えていく。


『天玉照は異空間で超新星爆発の爆心地へ送りこんだ。もう戻ってこれないよ』

 嬉々として語るシンゴの声を聞きながらハクトは嘆息してから続ける。


「全機に告ぐ。敵機を艦艇に近づけるな」


   ――◇◇◇――


「……どうなったんだ?」

 相変わらずうずく片目を抑えながらキリはあたりを確認する。


「超新星爆発に巻きこむつもりだったみたいだね」

 ポリムは呆れた口調であった。そんなもの何の役に立たないとばかりに。


「世界が何かを理解できないとは悲しいかぎりだね」

 空間の膨張率を何とでもできる技術があるのだから超新星爆発は空間の収縮で矮小化が可能だ。


 つまり超新星爆発はほぼ無効化ができる。

「どうやって戻るつもりだ?」


 問題は元のいた位置にどう戻るかであった。

「座標は計算できている。あとは旅をするだけだ。あらゆる宇宙が誕生してやがて収束していくんだ。それを一緒に見ていこう」


   ――◇◇◇――


「各機、戦況を報告しろ」

『こちら焔朱雀。左脚を破損した』

『こちら嶺玄武。右脚を破損』

『こちら蒼天龍。右腕を破損』

 ――白雫虎は左腕を破損。


 仕方がないとハクトは通信回線を開く。相手はシンゴの駆るグリオンだ。

「聞こえるか? わかっているかもしれないが、これ以上の交戦は繰者の生命を脅かすとして戦闘は中止しなければならない」

『だから? そんなものはガレイ閣下の統治がはじまれば何とでもなるさ』


 ――幼稚な考えだ。ハクトは呆れてため息がでそうになる。

「独裁者とて一人で国の統治なんてできやしないぜ。お前を守ることが自分の益になるならそうするだろうが、逆ならどうする? 奴はお前を本当に守ってくれるのか?」


『僕の力を見せつけて跪かせてみせるさ』

 ――こいつは深刻だな。


「お前が暴力主義者(テロリスト)扱いされる理由を教えてやる。自身こそが正しいとして暴力を直接行使した場合、勝利をすれば自身の正しさを証明したということになる。一方で敗北した場合は間違っているのは相手のはずだと自己正当化がはじまる」

『何が言いたいのかな?』


「自身の正しさを証明するために暴力装置を行使する輩はどちらに転んでも自己正当化する。罪を償うとは自らを省みるってことだ。俺たちは常にその道を開いてきたにも関わらず、お前はそれを否定し続けた」

『僕は何も悪くない! 正義は僕にある!』


「正義とは掲げるものにあらず。俺たちが教えられた唯一普遍の正義とは問いただすことだ。お前は本当に正しかったのかってな」


『だから何だって言うんだ。僕には力があるんだ。何とかしてみせる』

 視線を彷徨わせながら、口は震えている。


「悪かったな、説教なんぞして。だが、こっちも時間稼ぎが必要だったんでな。話を聞いてくれてありがとよ」

 上空の空間に亀裂が入る。ガラスが割れるようにピシリという音がしたような気がした。


『何だ?』

 あからさまにシンゴが動揺していた。この状況を理解できていないようだった。


「天玉照が復活したんだよ」


次回をお楽しみに。

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