■八卦衆の襲撃
『コード:イエローからレッドへ移行。欠月は出撃シークエンスを開始。敵対行動機体は当艦進行上に八機を確認』
指令が流れてくる中でキリは欠月で天神から出撃する。
「数が多いな……」
「突破口を作らないといけないよ」
数で圧倒的な不利な状況である。よって短期による一点突破で脱出口を開く必要があった。
たしかに作戦と呼べるものはそれしかない。一方でその遂行に際してこちら側の選択肢があまりに少なかった。
――言うほどうまくいくのか?
そんな疑問が頭をよぎる。すると砲撃がきて戦艦から距離を離される。
「連携をさせない気だね」
「……だろうな」
連携を断たれると突破口を開くという行為の難易度が途端にあがってしまう。
砲撃を目隠しにして敵機がこちらに接近をしてくる。
『我は八卦衆が一人、テンガク!』
白を基調とした機体が剣を振りおろしてくるのを光振刀で受け止めて何とかいなす。
『俺は八卦衆が一人、サワオクだぜ!』
入れ替わるようにハンマーで攻撃しかけてくるのをギリギリのところでかわす。
『僕こそ八卦衆が一人、カホウさ』
さらにドリルで脚の外装を削ってくる。
『拙者こそ八卦衆が一人、ライゴウと申す!』
ナギナタで光振刀が弾かれてしまう。
『八卦衆が一人、フウキですぜ』
鎖鎌が背面のスラスターを切り落とす。
『八卦衆が一人、スイキ』
矢が回避行動を妨害する。
『八卦衆が一人、サンロでござる』
斧の一撃が胸部装甲の一部を削る。
『八卦衆が一人、チジュウだよ~』
無数の光学兵器の雨が装甲を削いでいく。
「キリ、まずいよ。さっきの攻撃でメインスラスターが全損。離脱するだけの速度を出せない」
さらに決定力のある武装も失った。八機の機体に囲まれて退路もない。
――万事休す。
そんな言葉が頭に浮かびかけたときである。
『あきらめるのはまだ早いぜ』
――◇◇◇――
ハクトの白雫虎を先頭に焔朱雀、蒼天龍、嶺玄武が続く。
「各機へ、まずは欠月の包囲網を解くぞ。俺に続け」
ハクトが呼びかけると『了解』と三人から返答がくる。
焔朱雀と嶺玄武が前に出て、投げ斧と投げ槍を包囲している八卦衆に向かって投げつける。
投げ斧と投げ槍は軌道を変えて敵機の追尾をはじめ陣形を乱す。
チジュウが砲撃の姿勢を見せるとハクトは各機に指示を出す。
「各機は散開し、各個撃破に当たれ。数はあちらが有利だ。連携を許すなよ」
その指示通りに各機が動きをはじめる。そしてもう一つの重要任務をこなさなければならない。
「欠月の撤退を援護する」
『すまない』
キリから通信が入る。
「スラスターがだいぶやられているようだが、戻れそうか?」
『動かないわけじゃない』
「どうも天神に捕まえてもらうしかねえな。時間は稼ぐ」
ハクトは白雫虎で敵陣に斬りこんでいく。遠距離からの攻撃を得意とするチジュウとスイキを抑えるためだ。
オーハン海域で四対八の大規模な戦闘がはじまった。
――◇◇◇――
欠月が天神に収容されるのを確認した後にテンガクへヒズルから通信が入る。
『ここまでだ。撤退を指示しろ』
「しかし……」
『お前はあの四機を相手に無事で済むと思っているのか? 損害を出す前に撤退しろ』
「はっ」
おそらく追撃をかけようとすれば全力で攻撃をしてくるだろう。いままで欠月の退路を確保するための防衛であったものが攻撃に転嫁されるわけだ。
(ヒズル様の言うとおりか)
『おかげで奴らの目的地が読めた。作戦は成功だ』
示された目的地はノーゼ。そこにメイナがいるはずだった。
――◇◇◇――
ノーゼに到着した天神はすぐさま欠月を艦外へと運び出した。
「岩になったみたいだ」
キリは率直に感想を述べる。破損した外装を外されて四国で手に入れたパーツを取りつけると欠月は岩のような姿になったためだ。
ただの岩というわけではなく、所々岩の切れ目から青白い光が脈打つように光を発している。
「これからどうなるんだ?」
キリが首を傾げているとその問いに答える聞き覚えのある少女の声があった。
「天玉照を復活させる儀式を執り行うんだよ」
答えたのはヤシロであった。
「復活ってそもそも歴史上は存在したことがないんだろう?」
「川上から川下へ水が流れることが過去から未来へ時間が流れることの証左にはならないだろう。天玉照は世界を体現する存在なんだ」
「それに俺が乗るのか?」
神のような存在に搭乗するなど畏れ多いような気がしたのをヤシロが笑顔を向けてくる。心配するなということだろう。
「そう構えるもんじゃないよ」
「それで四人の姫巫女は何をするんだ?」
「ノーゼには強大な霊域が存在するんだ。それはあらゆる世界や時間に存在する魂の集積場所。その繋がりをもって天玉照は復活を遂げる」
それがどういった結果をもたらすのかは誰にもわかっていないらしい。
「君は自分の役目をまっとうしなよ。天玉照への祈りは僕ら姫巫女の仕事だ」
キリは少し背中を押された気がした。
――◇◇◇――
「シンゴ、わかっているな」
『わかっているさ。その代わり、僕の名誉を回復するという話忘れないでくれよ』
モニター越しにガレイはシンゴと会話をしていた。
「もちろんだ。四人衆はもうお前しかいない。お前だけが頼りなのだ」
『僕にとっても許せない連中の集まりだからね。任せてよ』
それだけ言って通信は切れる。まったくもって扱いやすい奴だとガレイは鼻で笑う。
「所詮は時間稼ぎ。せいぜい働いてくれ」
天玉照がどれほどのものだろうが、恐るるに足らずだった。自分には八岐災禍があるのだから。
「黒き炎で輝く黄金を覆い尽くしてくれるわ」
ラストが近づいてきたせいかテンションがあがっております。




