和の国
「ここが東の大国? 懐かしい感じがする」
「そうなの? 何だか不思議な感じの国ね」
「はぇー・・・」
三者三様の意見を国の様子を見て思う。俺がいた世界の昔の様相に似てる。というか、まんま江戸とかそういった感じの国だ。
「ここに最後の四帝がいるのか」
街の中を歩いて行く。街並みは質素という言葉が相応しい感じであり、豪華な建物は一切ない。だが、人々は活気に溢れていて、とても心が躍る街となっている。
「さっさと四帝の場所まで行くか。・・・どこなんだ?」
「分からぬ。一国の長がいる場所は今まで通りなら城などだと思うのだが・・・何も無いな」
「それなんだよな。いる場所が見当たらないってのも困ったな」
「ふむ・・・とりあえず聞き込みかな」
それから地道な聞き込みをするが、誰一人として国の君主である四帝を知らなかった。顔も名前も知らないという国民ばかりで、四帝探しは難航した。
「・・・どうなってるんだ」
「国の主というのに一切姿が見えない」
「皆、四帝を尊敬してるのにその姿を見たことないの不思議」
それからもどこを歩いても情報を得れずに時間だけが過ぎていった。時間が無いのもあって焦りが出てくる。にしても、本当にこの国は治める人間がいないのか?
「よぉ、兄ちゃん達は誰を探してるんだ?」
「この国の主なんだが知らないか?」
「なるほどな。兄ちゃん達、別の国から来たんだろ」
「そうだけど、よく分かったな」
「ククク・・・分かるさ。この国の主を知ろうなんて人間、この国には誰もいないからな。誰もが口を閉ざし、誰もが忌み嫌うのがこの国の主だ。俺らみたいな年老いた人間ぐらいなら知ってるだろうが・・・まぁ、知らぬが仏ってやつだ。あまり深追いをしないこった」
それだけ言い残して老人は歩いて行ってしまった。何がどうなってるんだ? 記録からも記憶からも抹消された王。それが最後の四帝・・・。
「何もかもがおかしい国だ。王を敬う訳でもなく憎むわけでもなく存在を無かったことにしている。それなのに国として成り立っている。何がどうなってるんだ」
スカーレットの言う通りだな。国として成り立っているのに国を治める人間がいない。国民はそれでも何とも思わない状態で良しとしている。この国の闇は思った以上に深そうだな。
「さて、これからどうするかなー・・・」
「困ったものだな。王に会えないと協力してもらえない」
「世界の今後のためにも協力してもらえないとマズい」
宿を取って作戦会議をするが、そもそも王に会えない時点でどうしようもない。あれから道行く人全員に聞いても知らない人ばかりだった。
一体この国で何があったのか。
次の日も変わらず聞き込みを続ける。だが、前日と同じく収穫は一切ない。そして、表の場所だけではダメだと思い、裏へ聞きに行く。
「ジャンヌとスカーレットは宿にいてくれ」
「妾たちは強いから問題ないぞ主様」
「まぁ、そこら辺の人間に比べれば強いだろうけど、これから行こうとしてるところは強さだけじゃなく悪意がある場所だ。ジャンヌの教育にも良くないからな」
「なるほど。分かった。気を付けていってらっしゃい」
「いってきます」
ジャンヌとスカーレットに別れを告げて裏の場所へと出向く。どの街にも必ずある裏の顔。そこでなら表で知りえない情報を知れるはずだ。
にしても、表とは違って裏の場所は派手だな。カジノに風俗まであるのか。それと人通りも多いから活気もあるな。ここなら情報がありそうだ。
「すまない。情報屋を教えて欲しいんだが」
「兄ちゃん。人に物を聞くときは出すものがあるんじゃないか?」
「これでいいか?」
「毎度あり。腕利きの情報屋ならこの店に行ってみな。ガイルって名前を出せば通してくれる」
「ありがとうな」
裏通りの道を歩いて目的の店に到着する。ただの露店に見えるな。店の前に辿り着くと、店主とおぼしき人物に話しかけられる。
「どうした兄さん。欲しい品物があるなら渡してくれ」
「ガイルって人物に紹介されたんだが」
「ガイルに? ・・・オーケイ、こっちに来な」
店主に案内されるまま店の奥にある扉へと入っていく。中は階段が下に続いており、その階段をひたすら降りていく。
しばらくして店主が止まり、頑丈な扉の鍵を外して中に入る。
「ようこそオロチへ。武器、薬、情報なんでもここにはある。さぁ、欲しいものを言いな」
「欲しいのは情報。この国の王についての情報をくれ」
「なるほど。兄さんが王の素性を嗅ぎまわってる人間だったのか」
「情報はあるのか?」
「あるさもちろん。俺のところで無いものは世界を形成した秘宝ぐらいなもんさ」
「そんなことまで知ってるのか・・・」
「情報屋を舐めるなよ。知らないことがあれば死を意味する情報屋において情報を常に仕入れるルートってのは作っておくものさ」
「それは心強いな。それで、王の情報はいくらだ?」
「そうだなー・・・この国の王の情報は秘匿されてて漏れたとなったら俺でも命が危ない」
「売れないってことか?」
「バカ言うな。情報屋が金を積まれて情報を売らなかったら何のための情報屋だ。100億ビリスってとこか」
「100億!?」
俺たちの世界の通貨に換算して1000億円か。それだけの情報なのは分かるが、100億ビリスなんて大金持ってないぞ。
「何だ文無しか?」
「さすがに100億ビリスは持ってない」
「なるほどな。文無しは帰りなってなるところだが、今回は特別だ。俺が出す依頼をこなしたら情報をタダでくれてやるよ」
「本当か!?」
「ああ。情報屋は噓をつかない」
「それで、その依頼ってのは?」
「この和の国は3つの巨大な組織によって裏世界が牛耳られている。一番古くから存在する大和。大和から離反したメンバーによって作られた武蔵。そして、第3勢力として最近現れた信濃。その3つの勢力によって裏世界はある意味で今のバランスが保たれている。
かつてはバランスもクソも無いほど荒れていたが、今では裏世界もそれなりに落ち着いてるのは力関係が均衡してるからだな。だが、それが崩れつつある」
「どこか1つの組織が力をつけてきたのか」
「いや、1つじゃない。3つの組織それぞれが力を増したんだ」
「ん? それだったらバランスが崩れることは無いだろ」
「誰がバランスが崩れていると言った。崩れているのは裏世界の平和だ。まぁ、平和なんておかしな話だがな。それでも子供たちが死ぬことなんて無く過ごしてたんだ。今じゃそれがもう無理な世界になってきている」
「抗争の激化ってことか」
「その通り。力が増した各組織がする事は一つ。各組織の力をそぎ落とすこと。そのための抗争が日に日に増して行っている。それを止めて欲しい」
「止めて欲しいと来たか・・・つまり、俺に3つの組織を潰せってことだろ?」
「いや、潰さずに止め欲しいんだ」
「更に難題か。いくらなんでも無理だろ」
「そんなことは分かっている。だが、この裏世界を支えてきたのも組織たちだ。根は悪くない。ただ、焦っているんだ」
「焦ってる?」
「世界の終わりを生き残るために秘宝を欲しているんだ」
「優秀な情報屋によってもたらされた情報が逆に仇になってるのか」
「因果なものだな。世界の終わりが近づくにつれ生き残りをかけた組織同士の抗争が増しているんだ。こんなことを外部の人間に頼むのはおかしいと思う。だが、頼めるのは兄さんしかいない。頼む。俺たちの国を救ってほしい」
「まさか王の情報を辿って行ったら国を救うことになるなんてな。王の情報はしっかりと貰うぞ」
「あ、ああ! ありがたい!」
情報屋から裏世界の組織の情報を改めて聞き、その日は宿へと戻る。まさか世界の終わりの情報が一般の人にまで知ってるとは。そのせいで焦って秘宝を欲して無関係な人間まで巻き込まれるのは放っておけないな。それに、それを見過ごしたらスカーレットたちに怒られることになるだろうしな。
とりあえず、各組織に出向かないとか。




