英雄の誕生
「「「頑張れーーー!!」」」
国中の応援が力になる。真紅のオーラが体を身に纏い、無限に力が湧いて来る。様々な想いを乗せた力が体中を駆け巡る。もう、負ける気がしない。
「ふざけるな! 何だその力は!? そんな力に俺はーーー!!」
「もう止めろ。お前の戦う理由では俺に勝てない」
「黙れ黙れ黙れーーー!! 俺の欲は尽きることが無い。この世界すらも呑み込み、救ってみせるんだ!!」
「何のために? 何のためにお前は世界を救うんだ? 独り善がりな正義を振りかざし、全てを傷付けるお前に救うなんてことは出来ない。
お前は、世界にとっての悪だ。救うなんて言葉を使って、自分を肯定してるだけ。最低最悪の悪だよ」
「悪? あぁ、悪でも構わない。だが、世界を救うのに犠牲無く行けると思ってるのが間違ってる! 例え、何万人という犠牲を払っても何十億という人を救うためなら必要な犠牲だ!!」
「必要な犠牲なんて無い!! 誰もが生きてる。その命に差なんて無い。だから、必要な犠牲なんて物は無いんだ。
大を救うために小を切り捨てるんじゃない。全てを救うために俺は、戦う。
・・・泣いてばかりいる人を見てるのは辛いからな」
「お前とは分かり合うことなんて出来ない!! だから、殺ス!! 俺は俺は俺は俺は俺は俺はーーー!!」
「悪魔の力に飲み込まれつつあるのか。今、終わらせる」
瞬時にマモンへと近付き、殴る。突然の攻撃に驚くが、すぐにマモンも反撃に出る。さきほどのように空中で轟音が鳴り響くが、徐々にマモンへ攻撃が当たり始める。
そして、地面へと思い切り吹き飛ばす。
「終焉の剣 デミス」
『マスター。お久しぶりです』
「挨拶はいい。やるぞ」
『了解です。周囲に終焉の破局の展開を確認。アブソーブ』
周囲に展開した終焉の破局をデミスによって吸収。そして、自身の魔力へと再変換。使用した魔力が戻るだけだと最初は思っていた。だが、一度構成された魔法は別の物へと変化している。
だから、終焉の破局を吸収することで新たな力を手に入れる。みんなの魔力が無ければ出来なかったことだ。
「ガガガガガガ・・・!! 力に・・・飲まれる・・・な。みんなの思いの魔力なら・・・いける!!」
『システムの上書きを確認。新たなる竜としての力を身に纏いました』
「次から次へと!! ふざけるな!!!!」
「みんなの思いと自身の力の融合。・・・お前は、多くの者を傷付け過ぎた。だから、もう終わりだ。
全消去」
「バ・・・バカなーーー!! 嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ!! 消えたくない!消えた―――」
『マモンの魔力反応が全消失しました』
「終わりか」
真紅のオーラを解き放ち。魔力を元通りの場所へと戻す。戦いが終わったんだ。
「凄いお祭り騒ぎだな」
「しょうがないわよ。国が救われたんだもの」
「お父さん! お母さん! 見て、花火だよ!!」
「本当ね。主様、今はこの時を楽しみましょう」
あの戦いの後、俺たちは英雄として国に受け入れられた。そして、オリヴィアもまた、王として国を治めるべき人物として認められたのである。
稀代の魔術師であるマクスウェルの葬儀には国にいる全ての国民が出席した。全ての国民が涙を流し、悲しみに打ちひしがれる中、オリヴィアのスピーチが国民の心を救った。
『私の母であるアリス=マクスウェルは、大きな罪を犯そうとしました。この国を滅ぼそうとしたのです。ですが、それは、私が不甲斐ないばかりに起きてしまった悲しい事です。
私は―――この国のために国民のためにと言葉で語っても心では語っていませんでした。母はその事を見抜いていたのでしょう。そして、私自身がその事に気付かされたのは、この場にいる友のアーデルハイトのお陰です。情けない話です。
・・・母は私を王とするため、自らが犠牲になることで成長を促したのです。
母のしようとしたことは大きな過ちなのでしょう。ですが、母がこの国を愛していたことは、誰でも無い皆が知っているはずです。
最期まで国のために私を成長させようとした母は私にとって最高の母です。
私は、この国が大好きだから。だから! どんなことがあろうと! どんな敵がこの国を襲ってこようと! 全てから国を守ってみせます!!
それが、母から継いだ魂です。
ごめんなさい。母の最期に悲しいのは似合わないかもね。だから、今日だけは涙を流しましょう。けど、明日からは笑顔で母を見送ってあげて下さい。
天真爛漫な母もそれを望んでいるはずです』
その日、国が泣いた。だが、絶望は希望へと変わる。新たな希望を見据えて、国民は動き出す。悲しみで足を止めることなんて出来ないから。前に進むしか出来ないから人は進む。
オリヴィアという希望を見ながら。
「七つの大罪の一人が落ちたか」
「はい。まさかマモンにまで覚醒したグリーが倒されるとは思いませんでした」
「いつの時代も悪は英雄によって倒される運命だからな」
「・・・次の作戦はどうされますか? 真帝」
「竜王女と眷属は四帝の協力を仰いで私に対抗しようとしているようだな」
「そのようです。ということは、次なる目的地は東の大国ですね」
「そうなるな。あいつがいる国か・・・。下手に手出しをすれば痛手を負うことは間違いない。七つの大罪には、手出しはせず、至高の宝の回収するように伝えろ」
「分かりました」
妖艶な女性が影へと消え、真帝だけが残される。懐からペンダントを取り出し、中に入っている写真を見続ける。
「あなたの願いを叶える日が近そうです。私が、この世界を救います。そして、あなたがいた世界に・・・紅 鏡花さん」
別世界の全てを巻き込んだ戦いは佳境を迎えつつある。全てを飲み込んで闇が動き始める。




