全てを終わらせるために
「この重力では、何も出来ぬじゃろ」
「クソ・・・。動けない」
「無駄じゃ。魔力の抑制も行っておる。ほぼ力だけで立ち上がるのは無理じゃ」
「妾ですらも動けぬとは」
「さて、計画を実行するのじゃ」
アリスがリザレクションコアを起動しようと手を動かそうとするが、その動きを封じられる。その人物を俺たちは見る。
「貴殿の計画を止めようか」
「お前は! あの時の侍か」
「覚えていたか。まだまだ力のコントロールが出来ていないようだな」
「なぜ、うぬは動いておるのじゃ!?」
「敵に教えるとでも?」
侍による攻撃が繰り出される。並の人間なら何が起きたかも捉えることが出来ない攻撃の数々がアリスのバリアによって防がれる。
「ワシは近接はとても苦手じゃ。なので、絶対防御の盾を作った。100年以上もの魔力を練り込んで作った盾じゃ。そう簡単には破れぬ」
「ふぅ・・・。さすがは稀代の魔術師といったところか。ならば―――」
「居合か。ワシの絶対防御は揺るがないのじゃ」
「居合 絶無双」
前に見た居合と違う。何度も鞘から刀の出し入れを超高速で行う。そして、生まれた力を利用しての居合。あの時の絶無よりも遥かに強い攻撃。
「やるのー。だが、ワシの盾をほんの少しだけ傷付けただけのようじゃの」
「む・・・。さすがにこの結界の中ではもう限界か」
「魔力のコントロールによって動けていたようじゃが、もう無理じゃろ。さて、計画の発動を―――」
「戦いの中の油断は死を招く」
侍による刹那の攻撃。だが、それすらも防ぐ。なんなんだあの盾は。
「絶対防御、自動発動。それら2点だけに特化した盾じゃ。何人たりとも破れぬ」
「ふむ・・・あまり使いたくは無かったが、仕方があるまい」
侍は、刀を構える。今までの居合の形ではない構え。正面に刀を構えて、魔力を通わせた状態で空間を切る。その瞬間、アリスの腕が吹き飛ぶ。
「む・・・。ワシの盾を無視するとは。防御貫通の攻撃じゃな」
「いかにも。次は外さぬゆえ」
「厄介じゃのー。じゃが、無意味じゃ」
「・・・なるほど。リザレクションコアを使用して腕を復活させたか。だが―――」
「ワシ一人ぐらいなら頭が吹き飛ぼうが、心臓を貫かれようが死なぬようにプログラムしてあるのじゃ。何をやっても無駄じゃ」
「リザレクションコアの魔力も無限ではあるまい? 有限を無にするまで」
「仕方あるまい。ワシも戦うか」
アリスは回復した腕を侍へと向ける。侍もその手から逃れつつ、さきほどの技を出すために魔力を練り込む。
「ワシの前で魔力を使用するということの意味を知るのじゃな」
侍とは違った方向に向いている腕から魔法が放たれる。見当違いの攻撃に侍も最初は警戒を解くが、すぐに回避行動に移る。
放たれた魔法が侍を追尾し続ける。
「相手の魔力を感知し、追尾し続ける魔法じゃ。更に特別仕様で、全属性を練り込ませて貰ったのじゃ」
「マズいな・・・」
侍は額から汗を流す。そんなに全属性攻撃を受けるのがマズいのか?
「スカーレット、全属性の攻撃はそんなにマズいのか?」
「うむ。妾の属性は火だ。それは、攻撃だけではなく体に流れている魔力も同じになる。体の表面に無意識で流れる魔力も防御に使われる魔力も全てが本人の属性に由来する」
「なるほど。全属性の攻撃なら相手の魔力の属性を知らなくても関係なく大ダメージが与えられるってことか」
「そういうことだ、主様。だが、一つの属性を分散させているからダメージもそれだけ分散するはずだが」
「竜王女よ、それは違うのじゃ」
アリスはこちらを向いて説明を始める。侍はもう眼中に無いってことか。
「ワシの属性は無属性。なら、全属性を極限まで上げた状態にすることも出来るのじゃ。まぁ、制約などで他のことは出来ぬようになってしまうのじゃが」
「ふざけてる・・・」
「そのふざけてるようなことをするのがワシじゃ。稀代の魔術師に不可能は無いのじゃ」
「余所見する余裕を見せるのは、油断し過ぎだな」
侍による攻撃で、今度はアリスの首が吹き飛んだ。
「無駄じゃと言ったじゃろ? ワシは死なぬ」
首だけの状態のアリスが喋り出す。いや、もうホラーだろ。そして、体が動いて首を拾い上げてくっ付く。
「ふむ・・・。1発だけの魔法ではさすがに仕留めきれぬか」
「某の力を舐めて貰っては困るな」
「なら、1万発の魔法ならどうじゃ?」
アリスの背後に無数にも思える数の魔法が生成される。先ほどと同じ魔法なら侍に勝機は無い。さすがの侍も驚きを隠せない。
「なるほど。万事休すか」
「そういうことじゃな。久々に楽しめたのじゃ。バイバイ」
放たれる魔法。それらを避けるが、膨大な数に侍は攻撃を受ける。全てが終わった場所には、無残な姿の侍がいるだけだ。
「さて、計画を実行するのじゃ」
「私のことを忘れたらダメじゃない」
「オリヴィア・・・出来れば傷付けたく無いのじゃ。大人しくしておれ」
「そうもいかないわ」
「国民は皆、オリヴィアを見捨てた。なのに、なぜ、そんな者のために戦うのじゃ!?」
「それは、洗脳で―――」
「洗脳なんて無いのじゃ。ワシがそうさせたように見せただけで、洗脳なんて無いのじゃ。実際に国民はオリヴィアを見捨ててたのじゃ」
「そう、だったのね・・・」
「分かったじゃろ。だから、戦うことは―――」
「それでも、戦うわ」
「なぜじゃ!? なぜ、戦うのじゃ!?」
「私が、この国を愛してるから」
何を言ってるのか分からないといった感じでアリスはオリヴィアを見続ける。確かに、オリヴィアは国民から存在を消された王。なのに、どうしてそこまで国のために戦うんだ?
「ある人に・・・逃げるなと言われたわ。それから、ずっと考えてた。なぜ、国民は私を王から下ろしたのか。私には王の資格が無かった。だから、王から下ろされた。当然よ。
けど、どれだけ蔑まれても、どれだけ存在を無視されてもこの国は忘れることなんて出来なかった。
私を受け入れ、時には厳しく時には優しく接してくれた人々がいる。街で生活するようになってから特に分かったわ。この国の人は私を特別扱いすることなんてない。ダメなことをすれば叱り、困ってたら助けてくれた。王としての肩書きを失ったことで初めて、みんなとしっかり接することが出来た。
私は、王として何をしてたんだろう。国のためと言いつつ、王として何もやれて無かった。今更気付けたの・・・。王としてじゃなく、一人の国民としてこの国が本当に好きなんだなってことに。
だから! 私は、この国の王として、戦うんじゃない。この国を愛する一人の民として、戦います!!
王なんてどうでもいい。私は、愛する者のために戦う。
オリヴィア=トワイライト。あなたがくれた名で。あなたの娘として。この国を愛する者として。あなたを止めます。
来なさい。ケーリュケイオン」
オリヴィアの呼びかけによって現れた杖を握る。その瞬間、魔力が急激に増大、密度を増した。これが、本当のオリヴィアの力。
「ワシと同じ存在だから、この環境下でも動けて戦えるのじゃな。いいじゃろ。オリヴィアの覚悟に応えて戦うのじゃ」
オリヴィアとアリスの全てを終わらせる戦いが始まる。




