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オリヴィア=トワイライト

「魔法の師であるワシに勝てるわけがないじゃろ!」

「勝つとか負けるじゃない。あなたを止める!」

 侍に放った魔法をアリスは次々とオリヴィアに放つ。侍の時と同様に何万発もの魔法を何度も浴びせるが、オリヴィアはそれを防いでいく。

「はぁ・・・はぁ・・・」

「もう息切れかの? ワシはまだまだ余裕じゃぞ」

「何言ってるの? まだまだよ。私を鍛えたアリスなら分かるでしょ?」

「・・・」

 アリスによる攻撃が更に激化する。先ほどよりも多い数の魔法を次々と放つ。次第に防ぎきれなくなってきて、オリヴィアは攻撃を受けてしまう。

「終わりじゃの。さて、計画を―――」

「私を止めたいのなら殺さないとダメよ」

「何じゃと!?」

 そこには無傷で立っているオリヴィアがいた。あの猛攻を防いだのか? いや、攻撃は当たっていたはず。

「確かに手ごたえを感じた・・・。なのに、なぜ生きておるのじゃ!」

「私の魔法は感知に特化してる。そして、それは精度をより高めて一つの極地に至ったの」

「極地じゃと? 魔法を極めるということの意味を理解しておるのか!」

「理解してるわよ。理解してるからこそ、その場所に立てたの。私の感知魔法はありとあらゆる魔法を感知する。そして、魔法の特性や性質すらも見極めれる」

 馬鹿げてる。全ての魔法を見極めれるっていうのかよ。さすがのアリスも狼狽してる。

「魔法の特性や性質もじゃと・・・。ということは、ワシの魔法を全て撃ち落としたということか」

「そういうことになるわね」

「天才ということじゃな」

「天才なんて言葉で片付けないで。私は・・・いえ、何でも無いわ」

「分かっておるのじゃ。血を流し汗を流して、誰よりも努力しておった。芽はついに開花をしたということじゃろ。

 ならば、ワシも応えねばなるまい」

「街全体が・・・震えるほどの魔力・・・」

 漫画の擬音があるのなら、ゴゴゴゴゴゴ・・・という音が見えそうなほど、世界が震えている。これほどまでの力があるのか。

「ワシは生まれてから1000年もの間、魔法を探求し続けてきたのじゃ。魔法とは魔道。ゆえに、本質を知ることが大事じゃ」

 アリスは両手に黒い塊を作り出す。その塊を小さな小さな物へと圧縮する。そして、その塊を上へと放つ。

「降り注ぐのじゃ。黒き雨」

「マズい! グレン達! 逃げて!」

「逃げろって言われても動けないんだが!?」

「魔力のコントロールよ。それを思い出して」

 魔力のコントロール・・・。体を流れる魔力を感じ取り、隅々まで行き渡らせる。魔力を抑え込まれて少なくなっているが、繊細にコントロールすることで全身に魔力を供給した。

 これなら動ける。

「速くその場から逃げて!」

「あの黒い雨か。ジャンヌ、スカーレット動けるか?」

「うむ、主様。妾は動ける」

「私も何とか動けるよ」

 身体能力が俺たちよりも低いジャンヌを抱えて、その場から逃げる。俺たちがいた場所とオリヴィアがいる場所に黒き雨が降り注いだ。

「黒の魔法・・・? いや、何かがおかしい」

「妾達がいた場所が全て消失していく」

 俺たちがいた場所が黒く消失していく。俺の終焉の破局の効果に似てるが、性質が違ってる。凶悪な魔法・・・。

「死の雨と呼ばれるこの魔法は、禁忌とされておるのじゃ。この雨に当たった者は完全消失するのじゃ」

「何て魔法だよ・・・。オリヴィアは!?」

「無事・・・とは、言えぬようじゃな」

 満身創痍のオリヴィアはそこに立っていた。あの完全消失の魔法を受けて生きてる方が凄いぐらいだ。だけど、もう体はボロボロか。

「はぁ・・・はぁ・・・私は、戦う。この身が例え、朽ち果てても・・・戦う!」

「なぜじゃ。ワシは―――」

 悲痛な表情を一瞬だけ浮かべたアリスだったが、すぐに手を突き出し、また同じ魔法を繰り出す準備をする。マズい・・・。あの攻撃をまた受ければ、オリヴィアは死ぬ。

「ちっ! 体の動きが遅い・・・」

「無駄じゃ。もう遅い。黒き雨よ」

 無情にも降り注がれる雨。その攻撃の余波が終わり、アリスは勝利を確信していた。だが、そこにある光景は信じられないものだった。

「なぜ・・・なぜ貴様らがおるのじゃ!!」

「俺たちを守ってくれようって言う王女様を放ってはおけないだろ? なぁ、みんな!」

「「オオオォォォーーー!!」」

 そこには何百人という国民がオリヴィアの上に盾を作り、雨の攻撃を防いでいた。

「なぜ、この結界の中で動けるのじゃ。魔力を持った人間は総じて動けぬはず・・・」

「魔力持った人間ならだろ? 俺たちの魔力はもう無いぜ」

「・・・なるほど。リザレクションコアか!」

 リザレクションコアに貯まっている魔力は国民の魔力だった。つまり、魔力を持たない人間になっている国民ならこの結界の中で動けるってことか。

「にしても、魔法一発を防ぐだけでこの様か・・・」

 盾となった人のほとんどが重傷。ほぼ動けない状態になっていた。その惨状にやっと気付いたオリヴィアは、駆け寄って、傷を手当てし始める。

「俺たちはいいか―――」

「黙っていて下さい!! 私は、私の民を傷付けてまで生きようとは思いません。あなた方が死んでも守ろうとする私は、逃げた卑怯者です」

 パァン! と乾いた音が鳴り響く。オリヴィアの近くにいた女性が思い切りオリヴィアを叩いたのだ。そのことにオリヴィア自身も戸惑いを隠せない。

「あんたが逃げた卑怯者? そうだ。私たちは王であるあんたが逃げたことに絶望した。そして、あんたを憎もうとした。

 けどね、絶望と同時に皆が思ったよ。あんたが血反吐を吐きながら魔法を取得するなんてこと、もうやらなくていいんだってね。だから、冷たく当たって遠ざけようとした。魔法から、この国からも。

 私たちにとって娘のようなあんたが、何よりも大事なのさ。

 だから、私たちを傷付けてまで生きようと思わないなんて言うんじゃないよ! 少しぐらい私たちにもあんたの背負ってるものを背負わせてくれてもいいじゃないか」

 その言葉に周りの人たちも同意して頷く。オリヴィアはその事実を聞き、涙を流す。そして、決意を新たに立ち上がる。

 その体は傷まみれでも、その四肢はもう動きが鈍ろうとも、その心だけは折れることが無い鋼の心。

「私は・・・オリヴィア=トワイライト。アリスの娘として戦おうとしていました。けど、違う。私は、こんなにも愛されていた。

 この人達の娘としても戦います。

 生きるために。守るために!!」

 至高の宝であるケーリュケイオンが輝きを放ち。全ての人たちを包み込む。結界が消え、重傷だった人たちの傷も癒えた。

「ジャンヌ。あの魔法は白の魔法と同じなのか?」

「違うよお父さん。あれは、あの至高の宝の持つ本来の力。オリヴィアさんがその力を呼び起こしたの。ありとあらゆる事象を使用者の意のままに出来る至高の宝 ケーリュケイオン。

 オリヴィアさんの真の力」

 オリヴィア自身の魔力の膨大だけだったさっきの覚醒も、現在は至高の宝も相まって、四帝と呼ぶに相応しいレベルにまでなっている。

 これを見たアリスは笑っていた。実の娘の成長を喜んでいるかのように彼女は笑っていたのだ。

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