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決戦前夜

「・・・はぁー」

 溜め息と共に俺は、部屋を出る。ここ最近は、寝付けないことも多い。気がかりな事があって、迷いがあるからだと思うが、それを口にしたり考えたりすればするほど、泥沼にハマっていく。

「あんな犯行声明があった後なのと、時間が遅いから街を照らすのは月明かりだけか。綺麗なもんだな」

「一人で黄昏てどうしたのだ、主様」

「スカーレットか。悪い。起こしちゃったか?」

「いや、ここ最近、主様はどこかへ出かけているのを知っていたからな。明日は大事な決戦。思い悩むことがあるのなら吐き出した方がいい」

「・・・俺のしようとしていることが正しいのか分からないんだ」

「主様が決めた行動に間違いは無いさ」

「いいや、誰でもその行動が正しいなんてことは無い。間違ってることの方が多いさ。俺は、マクスウェルの世界の話を聞き、この世界の根幹について知った。

 だからこそ、余計に俺の最終目標が正しいのか分からなくなったんだ」

「どういうこと?」

「全ての世界を元に戻すことが俺の最終目標だった。だけど、この世界は本来は無い世界。元に戻した反動で消えるだろう。

 けど、この世界の住人は俺たちの世界で生きていけると思っていた。肉体がデジタルだなんて思わなかったから。デジタルの肉体の人間が俺たちの世界に来れる事は無い。だから、元通りになった時、この世界もこの世界の人間も全てが消える。

 そう思ったら、正しいことなのか分からなくなってな」

「真帝を止めないと主様の世界が消えてしまう」

「そう。だけど、俺の世界を守るためにこの世界を消すってことはマクスウェルの世界を消した俺の親と同じなんじゃないか?」

「・・・主様はどうしたい?」

「全ての世界を救いたい」

「なら、そう願えばいい。竜の秘宝は何でも願いが叶う秘宝。その願いすらも叶えれるだろう」

「そう、だな」

「世界は残酷な選択を迫るが、こんなにも美しい。月夜が照らす雪の国というのも悪く無い」

「・・・スカーレットが珍しくロマンチックなことを言ってるな」

「わ、妾でもそんなことを言う時もある!」

「あははは・・・はははははは!! そうだな。悪い。ありがとう」

「主様の迷いが晴れたのなら良かった」

「・・・スカーレット」

 月夜が照らす夜に柔らかな唇が照らされる。スカーレットは自然と目をつむり、俺を受け入れる態勢になる。

 ・・・ええい! 男ならここで行かずにどうするんだ!

「んっ・・・」

 スカーレットの息が漏れる。どれだけの間、口付けをしただろうか。互いに息が苦しくなり、離れる。

「ぷはっ! その、主様、あの・・・」

「わ、悪い! スカーレットがあまりにも綺麗だったから」

「ふふふ・・・主様に綺麗は初めて言われた。初めて尽くしの日だ」

 スカーレットが立ち上がり、踊り出す。雪が舞う夜に天使のような女性が踊っている。隠しているようだが、顔が思い切り赤い。いや、俺も赤くなってるんだけどさ。

 そうだ。もう迷わない。全てを救うために真帝もマクスウェルも止めてみせる。


「お父さんとお母さん何かあったの?」

「え? い、いや、何も無いぞ!」

「主様の言う通り、何も無い」

 スカーレットと俺の様子が違うことからジャンヌが機敏に感じ取り、質問してくる。本当の子どもみたいに変化に敏感だな。

「ぬふふふ・・・。ワシには分かる! が、言わずにおこう」

「アリスには分かるの?」

「うむ! 恐らく男女の一線を―――」

 見当外れで何を言おうとしてる! まぁ、あながち間違いでも無いんだけど。はぁ、今日が決戦当日なのに和やかだな。

「今日が決戦だ。マクスウェルに勝ち、国を救う。マクスウェルだけじゃなく、他にも戦力がいるはずだ」

「ワシの側近にいた騎士達が全員、マクスウェルに付いておる。それらとの戦いが待ち構えておるはずじゃ。

 ワシが鍛えたからの。手強いぞ」

「そんな騎士達が側近にいるのか。騎士というより、魔法騎士って感じに近いのか」

「そうじゃの・・・。普通の騎士は魔力による身体能力に重きを置いておるが、ワシが鍛えた騎士達は魔法を使いつつ戦うのじゃ。テクニカルな戦い方をするのじゃ」

「なるほど。用心しておこう。それで、オリヴィアはどうしたんだ?」

「戦闘服を取りに行っておる」

「戦闘服?」

「オリヴィアの魔法は特殊での。形から入ることで、その真価を発揮するのじゃ。といっても、本人は戦闘服を嫌がっておるがの。ワシはせくしーで好きなのじゃが」

「アリスが好きでも、私は嫌なのよ。はぁ・・・」

 ため息をつきながらオリヴィアが現れる。いつもの男装麗人な恰好じゃない。女性らしさを前面に出すようなドレス姿のオリヴィアがいた。

「蒼いドレス?」

「そうよ。蒼穹のドレスって呼ばれてる。一応、至高の宝の一つなの」

「ドレスが!?」

「私もこれが宝って思いたくはないわよ」

「ワシは好きなんじゃがのー。む? 宝杖(ほうじょう)はどうしたのじゃ?」

「あれは・・・まだ、使えないわ」

「そうか・・・」

 蒼穹のドレスをひるがえし、オリヴィアは扉へと向かう。ここを出れば、ここでの戦いの終わりが始まる。竜王女、竜王女の眷属、聖女、こちらの世界のマクスウェル、四帝。国家戦力に等しい存在達が戦いに赴く。

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