強さ
「リアルとかデジタルとか今一分からないな」
「うぬ、竜王女、ジャンヌ、そしてオリヴィアはそうじゃ」
「オリヴィア?」
「そうじゃ、オリヴィアも限界を超えて強くなった。ワシは最初は強くなることなど無く、諦めると思っていたぐらいじゃ」
「・・・ちょっと待って。四帝も元が強いからとか言ってたわよね。けど、私はどうなの? 真帝の子供よ。なら、リアルな肉体なはずないでしょ」
「真帝の子供は4人の兄弟と一番下の娘だけじゃ。他に娘はいない」
「な、なら、私は、何なの?」
「・・・真帝にしか分からぬ。ワシも詳しいことは聞いてないのじゃ。」
「そんな・・・」
オリヴィアが落胆する。自分の親が違うと言われれば誰でも少なからず思うところはある。
「・・・私にはやる事がある。だから、立ち止まることなんて出来ない。それに真帝に聞かなきゃいけないことも出来たわ」
「オリヴィアは強いのじゃ」
「話を戻していいか?」
「え、ええ。ごめんなさい」
「いや、オリヴィアが動揺するのも分かる。
リアルな肉体かデジタルな肉体か。その違いなんてあるのか? 俺は、今まで会ってきた人、全員が俺たちと何も変わらないように思えたが」
「見た目などでは分からぬ。ワシ達も血は出るし死ねば死体が残る。そういった部分では違いは分からぬのじゃ」
「なら、俺たちがなぜリアルな肉体があるなんて言えるんだ?」
「強さに際限が無いからじゃ。うぬはどれだけ限界を突破した? 竜王女も魔力の基礎は高かったが、より強大な物へと進化した。ジャンヌは新たなる魔力の可能性の先へ。オリヴィアは魔力の少なさを努力で突破した。
ここにいる者は、皆等しく強さの限界を突破しておるのじゃ」
「なら、俺たち以外にもリアルな肉体を持った人間はいるのか? そこら辺の街の人の中とかにも」
「いや、それは無い。無駄な物を排除したと言うたじゃろ。つまり、ランダムで誰しもがリアルな肉体を持っているという事は無いのじゃ」
「つまり、選ばれた人間だけ・・・ということか」
「そうじゃ。そして、それはこの世界において圧倒的なアドバンテージとなっておる」
「世界でもトップクラスの人間がリアルな肉体を保持しているのか?」
「元々、プログラムの段階で強い者もおる。だが、そうじゃない人間もいるということじゃ」
「そう・・・なのか」
「そう難しい話ではない。うぬらはもっともっと強くなれるということじゃ」
「そうだな」
アリスの言葉に納得して、少し休憩する。にしても、リアルとデジタルが混同した世界か。そんな世界が本当にあるのか? いや、無数に存在した世界ならあるかもしれないが・・・。
「竜王様。北の大国で動きがあります」
「うむ。マクスウェルのことだな」
「はい。恐らくリザレクションコアに必要な魔力が貯まったのだと思われます」
「リザレクションコアか・・・。自分の世界を生き返らせるために他の世界を犠牲にするか」
「傲慢な人間ですね」
「だが、気持ちは分からなくもない。自分の世界を他者の身勝手な理由で消されたのだ。自分の世界を取り戻すために、こんな世界など無くなっても構わない。と思うかもな」
「なるほど。確かにその通りですね」
「だが、世界の調停者として見過ごす訳にはいかぬか」
「はっ! 既にあの者を向かわせております」
「・・・そういえば、一度会っていたな」
「異界の人間、竜王女様にお会いしております。南の大国で確か、戦ったとも言っておりました」
「そうか。何と言っていた?」
「面白いと言っていました。強さに限界が無く、純粋な存在だと。そして、悪になることは絶対に無い善なる存在だとも言っていました」
「純然たる善か。そんなものがあるのかは分からぬ。だが、己が信念を貫き、他者のために戦うことが出来る者はそうなのかもしれぬな」
「しかし、自らを犠牲にして他者を助けるなどするでしょうか?」
「それをするのが人間なのだ。他者を労り助ける。我々からすれば、あり得ない行為。しかし、それが強さになる」
竜王は空中に浮かぶ球体の一部を見ながら唸る。青色の部分が狭まり、赤色の部分が徐々に広がっている。人間による外界の侵攻は進んでいるのだ。
「よく分からないことが多いけど、やるべき事はやらないとだろ?」
「その通りだ、主様。全てを考え過ぎて立ち止まるよりも前に進む方が時には大事だ。それが今だ。考えても解決しないのなら進む」
「ああ!」
ドォン! という激しい轟音が響いています。お父さんとお母さんは対話をしながらも組手をしています。目に見えない速度の攻防ですが、ウロボロスによる肉体強化によって何とか目で追えます。
凄いなー。私は肉体強化の魔力使用が苦手なので、ああいったことは出来ません。代わりに魔法の訓練をしています。
「相変わらず凄いのー・・・。もう、教えた魔法を使いこなしておるのか」
「魔法の理論的な組み上げ方を教えて貰えたので、それを自分の中で落とし込んでみました」
「簡単に言っておるが、普通はその領域に到達するのに10年以上は掛かるのじゃぞ」
「私は、早くお父さんとお母さんに追い付きたいので」
私の固い決意を聞いてアリスさんはより一層厳しく魔法の手ほどきをしてくれます。私は、もっともっと強くなりたい。あの人たちの隣に立って戦えるように。そして、私が救いたいと思った人を救えるような力を手に入れたい。
私はもう―――私の両親のような悲劇を起こさせはしません。必ず強くなってみせます。




