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歩み出す道

「さっきの攻撃は何なんだ? ジャンヌ」

「攻撃じゃないよ。純白の魔力によって生成した魔法によって魔力の核の核にある生命力だけを消滅させたの。あの人の中にある魔力だけを消したの」

「そんな事が・・・スカーレット?」

 スカーレットはジャンヌへと近付くと、再び抱き寄せる。今度こそは離さないという意志を感じさせる。そして、ジャンヌもこらえていたのか思い切り泣く。

「痛かっただろう。苦しかっただろう。辛かっただろう。妾が目を離してしまったからジャンヌを傷付けてしまった。もう離さない。もうこんな思いはさせない」

「ぐすっ・・・。ありがとう。私ね、記憶が戻ってからずっと考えてたの」

「何をだ?」

「お姉ちゃんはお姉ちゃんじゃないのかなって」

「え? なっ!? ど、どういう・・・」

 明らかに狼狽しているスカーレット。珍しいなあんなに焦ってるスカーレットなんて初めて見たぞ。

「お姉ちゃんは私にずっと付き添ってくれて、私のことを考えてくれてる。今回も必死になって探してくれた。私にとって・・・お姉ちゃんというよりもお母さんなのかなって」

「お母さん・・・」

「うん! こうやって抱いて貰ってると思い出すんだ。私のお母さんもこんな感じだったんだなって。とてもとても落ち着いて、安心するの。

 私のお母さんとお父さんは殺された。けど、両親と同じように私の事を思ってくれる人に出会えた。だから、その・・・お母さんって呼んでもいい?」

「・・・子供を産んだことは無いから正直、よく分からない。けど、今までと何も変わらない。ジャンヌは妾の大切な娘だ」

 パァーっと笑顔になったジャンヌはまたスカーレットへと抱き付く。本当の母娘みたいだな。

「という事は、妾がお母さんならお父さんは主様という事になるのか」

「そうだよ! お父さん! これからもよろしくね!」

 お父さん・・・まさかこの年齢でそう呼ばれるなんて思わなかった。けど、悪い気はしないな。スカーレットに負けないぐらい俺もジャンヌのことは好きだからな。

「いい話じゃの~!!」

 アリスの方を見ると思い切り涙を流しながら叫んでいた。隣にいるオリヴィアはハンカチでそれを拭うのに必死だった。

「何泣いてるんだよ。まだ、何もかも終わってないだろ」

「まだ、何も? じゃと」

「そうだろ。この国の危機に変わりは無いんだ」

「じゃが、うぬらを巻き込む訳には―――」

「いいんじゃないかな。私はグレン達に頼みたい」

「オリヴィア?」

「私以上にこの国のために動いてくれようとしている。そんな人が協力してくれるんだもん。私たちが断る訳にはいかないよ。それに、仲間は多い方がいいでしょ?」

「オリヴィアはそう言うのなら・・・」

「あの! 少しだけいい? ここにいる子達を救いたいから」

 ジャンヌは奥にいるキマイラに向けて手を伸ばす。キマイラ達も大人しくその場に伏せている。これから何が起こるのかを察しているようにキマイラ達は動かない。

「ごめんね。助けることは出来ない。けど、その苦しみや痛みから救うことは出来る。だから、どうか安らかに―――」

 ジャンヌから放たれる羽によってキマイラは次々と倒れていく。ジャンヌは涙を流さないように我慢をしながら全てを終える。

 ―――ありがとう。

「え? ・・・うん。私もありがとう」

「どうした? ジャンヌ」

「何でもない」

「そうか。・・・おい。グリーはどこに行った!?」

「消えている。主様、逃げた気配はあったか?」

「いや、全く無かった。魔力を失っているのに逃げれるのか? 出口は俺たちの後ろにしかない。なのに俺たちに気付かれずに逃げれるのか?」

「無理だ。・・・味方が来たという訳か。気配を完全に消した状態で逃げられればどうしようもない。仕方が無いが放っておこう」

「・・・ああ。魔力も失ったんだ。何も出来ないだろう」

「お母さん、お父・・・さ・・・ん」

「ジャンヌ!? しっかりしろ!」

 ジャンヌはその場に意識を失い、倒れる。疲労や精神的な部分での苦痛もあったんだ。倒れても無理は無いな。

 俺がジャンヌを背負い、地下から脱出する。

 アリスは、この施設の破棄を明確にすることを門番に伝える。悪用される恐れが出てきたんだから、野放しにしておくことも出来ないだろう。

 そして、俺たちが泊っている宿へと到着する。

「お母・・・さ・・・ん」

「妾が付いているぞ。ここにいる」

 ジャンヌが寝言で母を捜していると、スカーレットはそっと手を握る。それに安心したのかジャンヌの強張っていた顔は安心し切ってスヤスヤと眠りについた。

「さて、聞きたいことがあるんだが」

「分かっておる。ワシ達の体のことじゃろ?」

「そうだ。どうなってるんだ? データの世界だからデータというのは何となく想像が出来なくもない。けど、強さの限界が超えれないって」

「そのままの意味じゃ。例えば、うぬはゲームが好きか?」

「あ、ああ」

 ゲームという単語がスカーレット以外から出てきたことに驚いた。オリヴィアは何なのか分からないといった表情。スカーレットは俺と同じように驚いている。

「そうじゃのー・・・RPGでうぬが頑張ってレベルを上げたとしよう。それは、ゲームの中のデータが書き換えられているから強くなっているのじゃ。

 0が1になることで強くなる。だが、その強さを書き換えるというプログラムをしていなかったらどうじゃ?」

「強くはならずにそのまま・・・」

「その通りじゃ。この世界にはそういったプログラムはされておらぬ。負荷が凄いからの。うぬの世界と変わらないほどの広大な世界。それを維持するだけでも相当な負荷が掛かるから無駄な物は排除したのじゃろ」

「なるほど」

「そして、強くならないワシ達は、強者に勝つことは出来ぬ。RPGでラスボスにレベル1の状態で勝てるかの?」

「いや、勝てないな」

「そうじゃ。そこまでの過程で強くなる。努力をするからじゃ。じゃが、強くはならない。その真理を知っているのはこの世界でもごく僅か。知ったら、誰もが努力などしなくなるからの」

「勉強などしても頭が良くなることが無いとかあるってことか」

「うむ。だが、例外もある」

「例外?」

「リアルな肉体を持った者は強さの限界を超えられる」

 世界の真理に迫る話をアリスから聞かされる。俺たちは、この世界とどう向き合うべきなのか。新たな道を知らされる。

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