竜に認められし少女
竜は人と相いれる事は無い。気高き種族ゆえに孤高の存在である。だが、竜に認められ、心を許された存在には、英雄をも超える力を得る。
「ジャンヌよ。帰ろう」
「ううう・・・ぐぐぐががが・・・あああぁぁぁーーー!!」
「バカな。灰色の魔力が戻るだと・・・」
ジャンヌの周囲の灰色の魔力は消える。そして、背中から純白の翼が生える。いやいや、何で翼が生えるんだ?
「純白の魔力・・・じゃと」
「お姉ちゃん、ありがとう。私はもう大丈夫」
「ジャンヌ・・・お前はいつも無茶をするから離さない」
スカーレットはより一層、ジャンヌに抱き付く。少し苦しそうになりながらジャンヌは喋る。
「お姉―――ううん、何だろう。私はいろいろな事を思いだしたの」
「思い出した?」
「うん。お母さんのこと、お父さんのこと。私のお父さんとお母さんは殺されたの」
「なっ・・・」
「小さい頃だったからハッキリと覚えて無いけど、これだけは覚えてる。殺した人の名前はエヴィ」
「エヴィ?」
ジャンヌが言う人物の名前を聞いて俺たちは誰だ? となる。聞いたことが無いし当然だよな。けど、グリーだけは違った。
「エヴィ!? あいつだったのか・・・」
「おい。知っているのか?」
「教える義理があるかね?」
「なら、無理やりにでも吐いて貰おうか」
「そんなことで俺が喋るか? いいや、喋らない」
「やってみな―――」
「待って! 私に話をさせて」
「ジャンヌ・・・」
ジャンヌは一歩前に出て、グリーと対峙する。戦闘能力が低いとは言え、グリーも戦える。無防備な状態のジャンヌならやられかねない。俺とスカーレットは身構えておく。
「大丈夫だから」
「はっ! 俺では殺せないと思っているのか!?」
「ええ。あなたでは私を殺せない」
「試してみないと分からないだろぉ!」
グリーは魔法をジャンヌへと放つ。だが、その魔法はジャンヌの前で消える。何度も何度も魔法を放つが結果は変わらない。
「なぜだ・・・魔法が消されている。打ち消しなどではない。消されているんだ」
「私の純白の魔力は生命の活性化」
「そうだ! だが、それが魔法を消すことと何の関係がある! 白の魔力なら打ち消しになるはずだ。根本から消すなんてことは出来ない!!」
「生命の活性化はすなわち終点にまで超加速させることも出来る。ただ暴走をさせるだけじゃ無いの。全ての生命を終わらすことも出来るのが純白の魔力」
「生命力を終点にまですることで終焉させるということか。だが、魔法を消せるはずがない! 魔法は魔力だ。生命力では無いのだから!」
「魔力を生み出しているのはどこ?」
「なっ・・・!」
「そう。魔力を生み出しているのはあらゆる生命体。なら、生命力をも魔力は含んでるの」
「バカな。魔法から生命力なんて感じ取れない・・・」
「どれだけ優秀な魔力感知の人でも感知は出来ない。魔力の核の核に生命力はあるから。誰にも感じ取れないの」
「ならば、お前はありとあらゆる攻撃を防げるというのか」
「いいえ。防げない攻撃もある。けど、今の状況ならあなたの攻撃は一切受けない」
「クソ・・・クソクソクソ!! クソが!!」
「聞かせて。あなたはなぜ、そこまで白の魔力にこだわるのか。なぜ、こんな研究を続けているのか」
「・・・世界を終わらせるためだ。いいか? 白の魔力による生命の活性化は全ての生命を一つ上の次元へと到達させることが出来る。
つまり、俺たちがいるこの世界そのものを上位次元に出来るんだ」
「何を言ってるの?」
「はぁ・・・分からないか? このデジタル世界をリアル世界に押し上げる可能性があるんだよ!」
「そんな事は不可能じゃ!」
「何?」
「ワシ達の世界そのものを上の次元に上げることなど不可能じゃ。なぜなら―――」
「俺たちには肉体が無いからだろ」
「知っておったのか・・・」
肉体が無い? どういうことなんだ?
「デジタル世界の住人の体は何で出来ていると思う? プログラムによるデータだ。つまり、俺たちの体はリアルではない。
だから、強さに限りがあって、限界を超えるなんてことは出来ない」
「限界を超えれない? けど、アーサー王は限界を超えてたが」
「元から四帝は強さを持っていた。それが戻っただけだ」
「そうじゃ。ワシらはデータ。いくらリアルの世界に憧れようとも世界が上位次元になろうともそれにはなれない。
一つの方法を除いて」
「竜の秘宝か。なら、なぜこんな事を」
「可能性がゼロで無いのなら試そうと思うのが研究者だ!」
「そんな理由でジャンヌを傷付けたのか? お前が言う世界をリアルにするなどという事のために妾の大事なジャンヌを傷付けたのか?」
「そんなこと? そうでもしなければ世界は崩壊する! なぜ、それが分からない! 世界の消滅を止めるためには犠牲なんて小さなことだ!」
「違います! 小さな命であっても犠牲は犠牲です。世界という大きな物を守るためという理由で犠牲を出してはいけません。
小さな命すらも雑に扱うあなたに世界という大きな物を救うなど出来ません!」
グリーがよろけて後退する。・・・ジャンヌは強くなったな。あの小さくて怯えていた少女はもういない。強き意志を持った少女がそこにいる。
「私は、あなたによって傷付きました。全てを壊したくなるほど心も壊れました。けど、それでも! 私は誰かを憎むことなんて出来ません!
私は・・・全ての人を導く救世主になりたいから」
「・・・俺は、強欲の大罪であるマモン。全てを欲するのが俺だ!! 何もかも俺の手から零すことはしない。全てだ! 全てを俺は、手に入れる!」
「分かりました。あなたを浄化します」
ジャンヌは腕を前に出してグリーに狙いを定める。一体、何をするんだ?
ジャンヌの翼から羽が舞い、突き出した手の方向へと一気に飛んで行く。かなりの速度だな。あれによる攻撃なのか?
まさか、消滅!?
「ははは・・・ハハハハハハ!! 何が憎まないだ! 何が犠牲を出さないだ! お前の攻撃によって俺は消滅する!!
憎かったんだろ? 殺したかったんだろ? 良かったじゃないか。これで、俺は消える!
・・・なぜ、消えない」
「純白の魔力は扱いを間違えば全てを消すことが出来ます。けど、使い方を間違えなければ―――」
「魔力が消えている・・・」
グリーの体から完全に魔力が消え去っている。ジャンヌの新たなる力によって魔力が消されたのだ。その事実を知ったグリーは力無く、その場で崩れる。自分の全てを失ったのだ。意気消沈しても仕方ないだろう。




