怒りを超えた怒り
「あれは、キマイラか?」
「うむ。どうやら、獣同士を合成させて肉体の改造も行っている。妾と主様が会った時にいたキマイラに比べれば粗悪品だが」
「なら、問題な。悪いな」
襲ってくるキマイラを次々と倒していく。そして、迷宮のように入り組んだ地下への探索が開始される。
「おかしいのじゃ」
「何がだ?」
「ワシが使っていた時と構造が違う。それに、あんなキマイラを造れるような装置は無い」
奥にいる奴がこの施設をいろいろと改造してるのか。それにしても・・・どれだけ出てくるんだよ!
「キリが無い。主様、一気に押し通るぞ」
「ああ。オリヴィアとアリス、遅れるなよ」
俺とスカーレットは次々と襲ってくるキマイラを倒しながら一気に突き進んでいく。数が多いだけで強く無いから問題ないな。
「す、凄い・・・」
「うぬ。2人の戦闘力も凄まじいが、息の合いようが特に凄いのじゃ」
「なんだか綺麗って思える」
「視線を交わすことも無く、互いの届かない場所への攻撃を的確に出しておる。こやつらなら本当に・・・」
俺たちの息の合いようを舐めるなよ。将来を約束したほどの仲だからな。
アリスの指示に従って進んだ先に大きな扉が待ち構えていた。
「ここが?」
「ここがワシ達が大掛かりな研究をしておった場所じゃ。キマイラ達の出現数もここに近付くにつれて多くなっていった。
この場所が正解と見て間違いない」
「・・・開けるぞ」
重く大きな扉をゆっくりと開ける。
中にはカプセルが何個もあり、中には液体が満たされている。そのカプセルから伸びた様々なケーブルが一つの場所へと繋がってる。何なんだこの部屋は。
「やぁ、久しぶりだね」
「ぐ、グリーさん・・・? 何でこの場所に?」
「何で? 勘が悪いね。俺こそがこの場所の主だ」
「主?」
「この場所は素晴らしい。実験に使える素体から何まで全部ある。おかげで研究は大きく進んだ」
さっきから何を言ってるんだ?
「君たちは白の魔力とは何か分かるかい?」
「・・・回復を司る魔力」
「そう。世間一般的にはそうなってる。だけど違う。純粋な白の魔力とは、生命の活性化なのだよ」
「生命の活性化?」
「俺たちの体にあるエネルギーは魔力だけでなく、生命を司る生命力という物がある。まぁ、正直言って、戦いなどに役に立つ物でも無いから普通の人には関係が無いが。
しかし、白の魔力はその生命力を活性化させることで治癒を可能にしている。
生命力は傷、病気など様々な体の症状を治すことが出来る。じゃあ、この生命力が暴走したらどうなると思う?」
「・・・まさか」
「そう。君たちが殺してきたキマイラは全て生命力の暴走によって生まれた存在。いやー、実にいい実験が出来たよ」
「下衆が。消えろ」
スカーレットは瞬時にグリーに近付くと、そのままの勢いで攻撃する。常人なら一発で死ぬ攻撃。だが、その攻撃が何かに弾かれて防がれる。
「おっと・・・。俺に攻撃するなよ。研究者である俺は戦闘能力が低い。君たちの攻撃何て喰らったら一発で消えてしまう」
「ぐっ・・・!」
「スカーレット!? 手が・・・」
「よく効いてるようだな。白の魔力で暴走を起こさせれば、竜王女でも痛みと苦しみを感じるのか。またも実験が進んだよ」
「・・・なぁ、さっきから言ってる白の魔力の所持者は誰なんだ?」
ニタァと下衆の笑いをしながらグリーが答える。
「ククク・・・純度がとても高く、治癒能力を持ち合わせ、黒の魔力も内包する存在。知ってるだろぉ!? 君たちなら知ってるはずだ!! キヒヒヒ!!
ジャンヌ=ダルクだ!!!!」
黒い触手のような物を周りに携えながら、ヒタヒタと歩いて来る。あれが、ジャンヌ? 金色だった髪は白髪になり、片目は黒と紅に染まっている。
俺たちが買って、着ていた服も無くなり、薄い布を一枚だけ着ている。
何が・・・どうして・・・。
「ジャン・・・ヌ?」
「スカーレット・・・」
「貴様!! ジャンヌに何をした!?」
「クヒヒヒヒ!! アハハハハハハ!! 壊してやったのさ! いやー、壊れるまで楽しかったよ。そうだったよ! これが叫びながら泣いている時の声だ」
録音してある音声をグリーは流す。いやあああぁぁぁーーー!! という悲鳴と泣き声が永遠と続いている。胸糞悪い。これが同じ人間なのか?
「最初は切り傷から試した。体に無数の傷を付けても治るのか。そして、次は爪を剥いだ。今度は指を細切れに―――」
「もうよい・・・」
「はぁ? これからが楽しい所だろうが! 聞けよ。一番笑ったのは臓器の摘出か―――ガパッ!」
「もうよいと言っておる」
ジャンヌの触手でも間に合わないほどの速度での攻撃。俺ですら見えなかった・・・。あれが本気のスカーレットか。
「妾の逆鱗に触れたのは、お前で2人目だな。1人目は妾の髪の毛を切ったからだったかな。けど、今度の怒りは前よりも酷い物だ」
瞬間的に魔力が巨大に膨れ上がる。なるほど。スカーレットを絶対に怒らせないようにしないとな。俺の魔力を遥かにオーバーしてる。
『魔力容量アンノウン。EXすらも超えた存在です』
これが竜王女の真なる力・・・。
「愚か者がいたようだ・・・」
「竜王様?」
「我が娘の逆鱗に触れた者がいる」
「なるほど。しかし、以前にも何度か逆鱗に触れられたことがありましたが」
「うむ。今回は今までと事情が違うようだ。我に匹敵する魔力にまで娘の魔力が膨れ上がっておる」
「なんと!」
玉座に座りながら竜王は笑う。娘の覚醒を父は喜んでいるのだ。




