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悪意

「オリヴィア来なくなったな」

「ぬー・・・少し言い過ぎてしまったかもしれぬ」

「まぁ、仕方ないんじゃないか。事実な部分もあった。誰かが気付かせないといけなかったことだろう」

「だが、それでも・・・」

「なら、やることは一つだろ?」

「謝罪か。主様、付いてきてくれるか?」

「ああ。ジャンヌ、準備は出来てるな」

「うん! お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 俺たちはオリヴィアへと謝罪するために街へと出る。だが、違和感がある。街中の人から視線を感じる。何が起きてるんだ?

「あいつらが・・・」

「四傑を倒した」

「国を乗っ取る気よ」

「許せねぇ」

 辺りから殺気が伝わってくる。おかしい。俺たちのことなんて今まで知らなかったはずなのに。

「「やっちまえーーー!!」」

 街の人が一斉に襲ってくる。なんて数だ。それに、一般人を傷つけるわけにはいかないってのもあって行動が制限され過ぎてて身動きが出来ない。

「スカーレット! ジャンヌ! 無事か!?」

「うむ! 主様も気を付けろ!」

 ・・・ジャンヌ? なぜジャンヌの声が聞こえない。まさかこの人込みで・・・。

「うぬらの事を街中に知れ渡らせた。これでこの国にはいれまい。さっさと立ち去れ」

 アリスの声。なるほど。この騒動はアリスが引き金だったのか。バカなことをしたなー。逆鱗に触れたやつはこれで2人目だぞ。

「貴様ら何をしたのか分かっているのか?」

 激竜の眼。睨まれたら普通の人間なら気絶する。だが、魔力が高まっているこの街の人たちは少し退いただけであった。

「マクスウェル。妾の妹がこの騒動のせいでいなくなった。この罪を償って貰おうか」

 スカーレットから発せられる殺気が一気に膨れ上がる。先ほどまで大丈夫だった人たちもみんな次々と気絶していく。前に髪を切られた時の比じゃないな。

「ワシに勝てるのか? 竜王女如きが稀代の魔術師に敵うと思うな!」

「妾は怒ってる・・・自分のためではなく人のために怒ってる。分かるか? お前たちがそうやってくすぶって何もしない中、ジャンヌは妾達と共にこの国のために動くことを決心していた。

 その心を踏みにじった行為を妾は許せない。絶対に許さない・・・」

 スカーレットの魔力が高まる。アリスは攻撃展開していた魔力を防御へと回す。アリスの周りに次々と盾が浮かび上がる。魔力の密度が濃い盾。恐らく、俺の魔法でも壊すことが出来ない完全防御って感じだな。

 その盾に向かってスカーレットは腕を振り下ろす。スカーレットとアリスの距離は離れている。普通の人が見れば何をしているのかとなる行為。だが、スカーレットが腕を振り下ろしたと同時に盾の後ろにいたアリスが大きく吹き飛んだ。

「魔法ではない。ただの攻撃でもない。思い切り腕を振り下ろしたことで発生したカマイタチ。防御不可の攻撃だ」

「ぬぅ・・・まさかそんな攻撃をしてくるとは」

 アリスの体は何かに切られたかのように傷だらけになっていた。さすがにこのままじゃマズイよな。

「スカーレット。もういいだろ。俺たちにはやることがあるはずだ」

「やること? 主様、あいつを殺さなくて何をやるというのだ?」

「落ち着け」

 スカーレットの頭にチョップをする。痛さなどから少し落ち着きを取り戻したスカーレットは話を聞くようになった。

「俺たちがやることは1つ。ジャンヌを探すことだ。違うか?」

「・・・その通りだな。こんなところで時間を取られている場合では無かったな。マクスウェル、今日のことは主様に免じて許してやる。だが、次も同じようなことをすれば、この国ごと消す」

「たははは・・・本気のようじゃのー」

 俺とスカーレットは倒れている人たちを飛び越えてジャンヌを探し始める。しかし、あの短時間でどこまで行ったんだ。探す手段も無いし。

「どうかしたの?」

「オリヴィア・・・」

「妹がいなくなった。探しているところだ」

「いなくなった? 何があったの?」

「実は―――」

 事の真相を伝える。そして、オリヴィアは徐々に険しい表情になるが、すぐに決意をした顔つきになった。

「分かったわ。私にも責任がある。だから、探すのを手伝うわ」

「しかし、手掛かりが一切無いんだ」

「任せて。私の魔法は感知。対象となる人物の魔力を感知して探し当てれるの」

「なるほど。それなら」

 オリヴィアは集中し始める。周りから魔力が溢れ出て来て、その範囲が拡大し続ける。凄いな。魔力総量が並外れてないと出来ない感知方法だ。

「見つけた。ジャンヌは地下にいるみたい。それから、黒い魔力も感じるわね」

「黒い魔力・・・。七つの大罪か」

 俺たちは急いでオリヴィアが見つけた場所へと向かう。頼む、何も起きてないでくれ。


「ん・・・ここは?」

「やぁ、お目覚めかい?」

「えっと、グリーさん?」

「覚えててくれて嬉しいよ。ここは、俺の研究所だよ」

「研究所? ん、動けない・・・」

「あー大人しくしててくれ。君は大切な実験対象なのだから」

「ひっ・・・!」

 おぞましい顔が私を見ている。こんなにも悪意に染まった顔を人間が出来るんだって初めて知った。怖い・・・。ウロボロス!

「あぁ、無駄だよ。君の竜は助けに来れない。君の魔力のバイパスを封じさせて貰ったからね。あー楽しみだな。こんなにも純度の高い白の魔力の持ち主は初めてだ。

 切っても再生するのか。臓器は再生するのか。どこまで傷を受けても大丈夫なのか。

 さぁ、楽しい実験の始まりだ」

 私は全ての悪意を受けて震えた。いや、それ以上にこれからこの身に起きることへの恐怖の方が圧倒的に心を支配していた。

 助けて・・・お兄ちゃん、お姉ちゃん。

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