一休み
「タイラントドラゴンの報酬を貰ったけど・・・こんなにいいのか?」
「いいんだよ。依頼主は国だった。それ相応の対価は必要だろ?」
「なるほど。それじゃあ、ありがたく貰うよ」
当初のクエストの報酬は200万ビリス。俺たちの国の貨幣価値に換算すると2000万ほどだった。2000万もって思うけど、英雄級が倒さないといけないレベルの魔物だって考えたら安すぎる。だから誰も受けて来なかったんだろうなー。
けど、貰った報酬は500万ビリス。およそ倍以上になった。ダウンが何かしたんだろうけど、まぁ、そこは触れないでおくか。
「これからどうするんだ?」
「うーん・・・とりあえず、お金の心配は無くなったから王様に会おうかなって思ってる」
「王様? 何で?」
「まぁ、それは詳しくは言えないんだけど、会わないといけないんだ」
「・・・そうか。会えるといいな」
「ああ。悪いな仕事を頼んでおいて1件だけで終わらせちゃって」
「気にしないで。英雄級のクエストをクリアしてくれただけでもありがたいよ。あ、クエストに関してなんだけど、英雄級が一番上のクエストでは無いから」
「まだ上があるのか?」
「EXクラス。英雄が何人かで挑まないといけないクエスト。別名ワールドエンド。世界が終わるほどのクエストだって言われてる。
まぁ、100年ぐらいそんなクエストなんて出てないから大丈夫だと思うけど」
「へぇー・・・そのクエストはどんな敵が出てくるんだ?」
「神様級だよ」
ダウンは言い終えるとそのまま部屋を出ていく。神様か・・・。そんなものが本当にいるのかねー。
「さて、金銭面での危機的状況はほぼ去った。次は王様に会いに行くか」
「主様、そのことなんだが、この国の王様はどこにいるんだろうな」
「・・・俺も思ってた。この国の都市にいるはずなのに城が無い。だから、正直、どこに王様がいるか分からない」
「城が無い代わりにあるのは大聖堂。司教がいるだけ」
「困ったな。どうにかして王様に会いたいんだが」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「どうした? ジャンヌ」
「あの・・・やっぱいい」
「何遠慮してるんだよ。言いたいこととかあったらしっかり言っていいんだぞ」
「うん。あの、大聖堂に行ってみたい! どういった人たちが働いてるとかいろいろ見てみたいから」
「なるほど。うし、それじゃあ、ジャンヌの望み通り大聖堂に行ってみるか」
食事を済ませて店を出る。今の季節は春なのにまだ雪が降りしきってる。寒いな。
中央部にある一際大きな建物である大聖堂。常に人がいっぱいいて、大盛況になってる。
「ここはいつ来ても活気があるな。まるで祭りみたいだ」
「礼拝する人がいっぱいいるの。毎日毎日、神様にお祈りを捧げてるの。だから、人がいっぱい」
「なるほどなー。ジャンヌは何を見てみたいんだ?」
「奇跡の司祭様に会ってみたい」
奇跡の司祭様? どうにも胡散臭い感じの人だなー。まぁ、ジャンヌが会ってみたいって言ってるんだし行ってみるか。
「凄いな・・・」
大聖堂に入ってすぐの感想は語彙力が無くなってた。いや、実際にその言葉しか出なかったから仕方ないじゃん。ステンドグラスが壁一面にあって壮観。凄すぎる。
「主様の気持ちも分かる。凄いという言葉しか出てこない。この建物にはそれ以上の言葉は必要無いぐらいに素晴らしい」
「わあ・・・。綺麗」
「気に入って頂けましたかな?」
突然現れた男性に俺たちは会釈をする。
「ああ、失礼しました。私はこの大聖堂で働いているマイルと言います。その反応の感じからすると、初めて来られたのですかな?」
「え、ええ。旅でこの国に来ていたのですが、仕事とかしててなかなか立ち寄れなかったんですよ。けど、この娘が行ってみたいとのことだったので。
それに俺も気にはなっていたので」
「そうでしたか。見学などは自由なのでどんどんして下さい。なんなら、案内しましょうか?」
「いいんですか? 他の人もいるのに」
「ここの職員は大勢います。それにお声掛けしたの何かの縁ということで」
「では、お言葉に甘えてお願いします」
こちらこそと笑顔で返してくるマイル。いろいろと知りたいことも多かったからありがたいな。にしても、さっきからスカーレットは何で睨んでるんだ?
「さっきから何睨んでるんだ?」
「どうにも嫌な気配を感じて。まぁ、杞憂ならそれでいいのだが」
「なるほど。気を張り詰めるのは分かる。だけど、今は楽しまないとだろ? ジャンヌがあんなにも楽しんでるのに俺たちも楽しまなくちゃ悪い」
「確かに・・・。久々の主様とのデートだしな!」
「そういうこと!」
それからいろいろと案内して貰った。この大聖堂は本当に広かった。街の中でも最大級なだけある。礼拝堂や修行僧の衣食住、図書館などなど。ありとあらゆる施設が揃っていた。
「この大聖堂だけで全てが出来るぐらいの充実ですね」
「ええ。何でも出来るようにと揃えさせたのですよ」
「へぇー・・・王様が命令したんです?」
「・・・いえ、王はこの国にいませんよ。この国のトップは稀代の魔術師 マクスウェルその人だけです」
「マクスウェル・・・」
「マクスウェル様は偉大なお人です。魔法をこの国に広めて、全てが変わりました。貧しかったこの国の全てが変わったのです。奇跡のお人だ」
「そういえば、この国の宰相ってどなたなのです? その人が全てを決めてると聞いたのですが」
「先ほどから話しているマクスウェル様ですよ」
なるほど。魔法急進派がこんなにも力を持ってるのは真帝や竜王と同等の力を持っているマクスウェルが国のトップに君臨してるからか。いろいろときな臭くなってきたな。
「案内ありがとうございました。また機会があったら来ようかと思います」
「毎日でも来て下さい。礼拝をすることはとてもいいことですので」
マイルに別れを告げて大聖堂を出る。そして、少し通りを歩いたところで呼び止められる。
「そなたら。少しよろしいか?」
「えらい古風な喋り方だな。何か用か?」
「少しワシの仕事を頼まれてくれぬか?」
「素性が分からない奴の仕事は受けられないな」
フードを深く被り、顔が一切見えない。背丈はジャンヌよりも少し低い。150㎝ぐらいか。声などから女の子だと判別出来るが・・・。
「確かにその通りであったな。ワシの名前はマクスウェル。稀代の魔術師と呼ばれている」
「この国の実質的トップで国を支配してる奴が何の用だ」
フードを脱いだところに現れたのは幼い少女だった。顔立ちは整っており、成長すれば美人になるのは間違いないと思える少女。
マクスウェルが少女? 何がどうなってるんだ?
「そう身構えるでない。ワシは争いを来たのではない。仕事を頼みに来たのじゃ」
「信じられないな・・・」
「それもそうか。うむ・・・ここでは寒い。そなたらの部屋に行ってもよいか?」
「いいわけ―――」
「構わぬ」
「スカーレット!?」
スカーレットがアッサリ承諾したので、マクスウェルと名乗った少女は俺たちの部屋へと来ることとなった。
まさか、アーサーの時のようにアンドロイドとかそういうことは無いよな。
「そちが考えていることは外れじゃ。まぁ、話せば分かる」
掴みどころが無い少女を引き連れて、部屋へと戻る。




