仕事と王様
「うーん・・・何とかお金には困らないぐらいには稼いだかな」
「魔物討伐のクエストなら妾達で余裕でクリア出来るからな」
「その通り。にしても、ここら辺の魔物って強くないか? 今までの地域よりも強く感じるんだが」
「外界との境界線が他の国に比べて近いからだと思う。外界からの魔物や生存競争によって生き残った魔物が多い。だから、この周辺の魔物は強い」
「お兄ちゃん、あと、黒の魔力も感じる」
「いろいろな要素が混ざって強くなってるのかー。今のところは余裕だけどヤバイ魔物もいるのか?」
「魔王と呼ばれる存在もいるのはいる。ただ、父上ほどではないかなー。それでも魔物の王様だから相当強い」
「なるほどなー。外界に行くことになったらそういった相手とも戦わないといけないんだな」
「けど、戦って強くならないと父上である竜王には届かない。主様が妾と結ばれるためには強くならないとな!」
「勿論だ!」
それから他愛の話を進めながら食事をする。仕事が終わってからの飯はうまい。そして、話題は魔法へとなっていく。
「なぁ、魔法って他の国だとあんまり見ないけど何でなんだ?」
「主様、魔法は強いと思うか? ジャンヌもどう思う?」
「私はいろいろと出来るから便利だなーって思う」
「うーん・・・確かに便利だなってジャンヌの意見がピッタリだ。強いかと言われれば微妙そうだ」
「そう。遠距離攻撃であり、放つまでに時間差がある魔法による攻撃は弱い。妾達のように魔力を身体能力に回して一気に攻撃した方が1対1の時はいい」
「・・・多数の場合は違うってことか」
「うむ。多数・・・と言っても10や20ではない。1万や10万といった数の敵を一気に退ける攻撃は魔法が一番いい。このレベルの攻撃は超戦略級魔法と呼ばれているが。
そうでない限りは魔法なんて使わない」
「適材適所な場所での使用が大事ってことか。けど、魔法は俺、好きだけどな」
「好き?」
「うん。元の世界で魔法ってカッコ良くていつか使えるようになるんじゃないのかって小さい頃は誰もが夢見る物なんだよ。
けど、そんな物は無いって気付いてからは忘れる。だから、ロマンがある魔法が好きなんだよ」
「バッカみたい!!」
別の席から発せられる怒号に俺は驚く。え!? 何事? 急なことだったが、怒号を飛ばした人はすぐに見つかった。
「魔法が好き? 魔法なんて無くなった方がいいに決まってる」
「あーっと・・・悪いな。俺個人の感想だったから何か傷付けたのなら謝るよ」
「主様、謝る必要は無い。変な言いがかりをしたのはこいつだ。向こうが謝ってもこっちが謝るなんてしなくていい」
「いいんだスカーレット。悪かった。これでいいかな?」
「・・・いや、こっちも変な事言って悪かった。酒が入って少し興奮してたようだ。お詫びって訳じゃないけど、その食事代は全部払うよ」
「別にいいのに」
「いや、いいんだ。悪いのはこっちだから」
「そ、そうか。ありがとう」
中性的な男性はお代を出そうと財布を探し始める。だが、一向に見つからない。そして、うなだれてしまった。これも何かの縁か。
「あーっと・・・もしかして財布忘れた?」
「い、いや、そんなはずは・・・」
「マスター。会計を頼む。そっちの人の分もな」
「あいよ。良かったな。落ちこぼれさんよ」
落ちこぼれ? どういったことなのか分からないが、一緒にさっきの男性と店を出る。
「それじゃあな」
「ま、待ってくれ! さすがに食事代まで出して貰ったのは悪すぎる・・・。こっちから喧嘩を吹っ掛けた立場なのに」
「そう思うなら消えろ。主様は許しても妾は許さ―――」
「まぁまぁ。スカーレットは短気なのがいけないところだぞ。・・・なら、仕事をくれないか? 服装とか見る感じだと上流階級って感じだし。仕事をくれるのなら別にいいぞ。
まぁ、ただ、魔物退治とかの仕事に限るってことになるが」
「そんなことでいいならいくらでも仕事を回そう。魔法急進派によってギルドが無くなってから、この街では仕事を頼みたいのに頼めない人が多いんだ。中央部の掲示板は見た?」
「ああ。いっぱい仕事があったな」
「あれでもほんの一部さ。選ばれた仕事だけが貼られてるって状況。ギルドがあるところなら常に100や200以上の仕事はある。
それだけ困りごとが多いんだ。なのにギルドが無い。だから、私のところに来る人が後を絶たないんだ」
「なるほどなー。にしても、何で魔法急進派―――」
「くっしゅん!」
「ジャンヌ、もっと暖かくしないとダメじゃないか。ほら、妾のところに近付くのだ」
「ありがとう、お姉ちゃん。お姉ちゃん、あったかい!」
「そうだろう! 主様、ジャンヌが風邪を引いてしまう。立ち話は・・・」
「そうだな。・・・あんた名前は?」
「ダウン」
「そうか。悪いが行くよ。仕事の話は・・・あの宿にいるから尋ねて来てくれ。掲示板だと仕事を取られる可能性があるからな」
「分かった。寒い中悪かった。気を付けてな。お休み」
お休みと手を振って俺たちは別れる。雪が降りしきる国での出会いか。今までも最初の出会いから何かが起きていた。今回も起きないといいが。
「主様の予感は的中するからなー。先ほどの人間だが、男では無く女だったぞ」
「マジで!? そうは見えなかったな。まぁ、これで仕事の目途は立った。もう少し稼いで旅ができるようになったら四帝の一人 トワイライトに会わないとな。
協力して貰えるといいんだけど。どうにもこの国の内政は酷そうなんだよなー」
「酷い?」
「ああ。トワイライトが王様なのに実行決定権が一切無い。それらの権利を持っているのが宰相。名前も何もかも分からない存在が実質的なこの国の支配者ってことになってる。
影で動くわけでもなく、表立って支配者だってことで動いてるのに素性は誰も知らない。
王様はただいるだけの存在。鳥籠の中の鳥って感じだな」
「傀儡の王様か。むっ! ジャンヌ、震えてるじゃないか。よいしょっと」
「お姉ちゃん・・・私、もう子供じゃないんだよ」
「妾にとって人間はみんな子供のようなものだ。それに大事にしたいと思える。だから、やってるだけだ。暖かいだろ?」
「暖かいよ」
スカーレットはジャンヌを抱きかかえてほほをすり合わせるて、互いに笑顔になる。もう完全に母娘なんだよな。
まぁ、それがいいんだけど。また一波乱起きる前の小休止ほどいい物は無いだろ。
「・・・来たか」
「ええ。四帝のプラマハーと対等に戦い、アーサーとは同盟を結んだ異界の人間です。七つの大罪の一人であるモードレッドとは激戦を繰り広げ、最終的には勝っています」
「末恐ろしい子供だ。余とは10倍ほど年齢が違うというのに恐怖を感じる」
「マクスウェル様がですか!?」
「いかにも。余でも恐怖を感じる時はある。一度目は真竜と対峙した時、二度目は真帝と対峙した時だったな。つまり、今回が三度目ということになるな」
「それほどの猛者達と肩を並べる存在・・・ということですか」
「今はまだそうではない。だが、可能性がある。余の計画の妨げに間違いなくなるであろう。・・・分かっているな?」
「はっ! 我々にお任せ下さい」
髭を長く生やした老人が杖を持って、豪華な椅子に座っている。部屋の作りなどから玉座だと分かる。そして、その老人の前にいる鎧を着た兵士。
筋骨隆々で歴戦の戦士だと分かる兵士に老人―――マクスウェルは指示を出す。そして、国の闇がグレン達に少しずつ襲い掛かろうとしていた。
「余の計画に遅れは許されぬ。・・・そういえば、人形が接触したようだな?」
「はい。飯屋にて接触をした模様ですが、特に両者共に素性を知らないようでした」
「そうか」
「しかし、仕事の斡旋の約束をしたようですので、今後も接触があると思われます」
「なるほど。まぁ、いい。人形の正体を知ったところでどうしようも出来ぬ。稀代の魔術師であるこのマクスウェルを止めることは出来ぬのだ」
雪が降りしきる空に轟雷が鳴り響く。これから起こる事を予期しているかのように天候は荒れ狂う。




