魔法
「僕の名前はグリー。さて、早速だけど魔力とはそもそも何か。知っているかな?」
「体に眠るもう一つの力って聞きましたが」
「その通り。だが、もう少しだけ詳しく説明するなら体にあるエナと空気中にあるマナが体内で結合することで生まれるのが魔力なんだ」
「マナ?」
「そう。この世界に漂ってる視覚出来ない物質。まぁ、マナやエナに関して説明すると今日だけでは済まないから省かせて貰うよ。とりあえず、魔力とは2つの物質によって作られる物だってことだけ覚えておいて欲しい」
「なるほど。その2つの物質であることが重要なんです?」
「まぁ、そういうこと」
グリーさんは黒板のような物にいろいろと書いていく。そして、2つのエナとマナと書かれた丸の間に4本の線と2つの別のエナとマナと書かれた丸と線が出来た。
「これは?」
「属性。魔力と簡単に言うが、性質が人によって全然違ってくる」
「属性・・・」
「火、水、土、風の四属性。それから白と黒の亜二属性。この6つの属性に分けられる。そして、この属性が合ってないと魔法は絶対に発動しない。仮に発動したとしても不規則だったり暴発したり本来通りの魔法の効果を発揮出来ないんだ。
そして、属性はエナとマナ両方にある」
「エナとマナに?」
「エナに4属性、マナに4属性。白と黒だけは図で示した通り、相互の関係だから白と黒だけはエナとマナ合わせて2属性」
「エナは体内だから固定だとして、マナは空気中だから不確定ってことです?」
「その通り。最初は自身のエナの属性を知る。そして、それを極める。そこから周りのマナに合わせた魔法を少しずつ広げるんだ」
「自身が火なら水と土と風も環境によって違うから覚えておいた方がいいってことか」
「適応力が必要ってことだね。さて、長ったらしい説明は以上。要するに属性に合った魔法を使用しましょうねってことだ。
君たち3人の中に僕の魔法に合った属性はいるのかが問題だね」
「合った属性がいなければ魔法は教えても無意味。仕事は完了出来ないってことか」
「まぁ、さすがにそれだと可哀想だから少しばかりは報酬を出すよ。マナさえ合えば出せないことは無いし」
「ありがとうございます。それで、何からやります?」
「属性診断。この水晶の前に立ち、水晶に向かって手を出してみて欲しい」
俺たちは水晶があるところに行く。透明で綺麗な水晶だな。
「えーっと・・・そういえば、名前を聞き忘れてたね」
「俺の名前はグレン。そして、こっちがアーデルハイト。こっちがジャンヌです」
「グレン・・・アーデルハイト・・・ジャンヌ・・・よし、覚えた。よろしくね! さぁ、誰からやる?」
「妾からやろう。属性はもう知っているしな」
「そうなのかい?」
「うむ。妾の属性は火だ」
スカーレットが手を水晶に向かって出すと水晶が光始める。光が収まり始めると、水晶の中央部分に赤い光が灯り始めた。そして、業火のように燃える火が出現した。
「宣言通り火だね。しかも、かなり強力だ・・・」
「当然だな。次はジャンヌがやるといい。ジャンヌも属性は分かってる。白だ」
ジャンヌも同じようにやる。すると、水晶の中央部が白く光り、真ん中に真っ白な球体のような物が現れた。
「ジャンヌの属性は白だね。純度が高く、高潔な白の属性だ。最後はグレン君だね。属性は分かるかい?」
「いや、全く」
「なら、いい試しの時になりそうだ」
俺も2人と同じ動作をする。だが、一切変化が訪れない。魔力が無いということは無いはずだ。現に魔力によって肉体の強化が出来てる。何でだ?
「驚いた・・・。まさか・・・そんなことがあるのか!?」
「スカーレット、どうなってるんだ?」
「主様・・・主様の属性は―――無属性」
「無? え? 何も属性無いの?」
「違う! そんな簡単なことじゃない!! 魔力を持つ人間には必ず属性が存在する。だが、この6つの属性に属さない人間がたまに存在する。
真帝、竜王、稀代の魔術師 マクスウェル。この3人だけが、どの属性にも属していない」
「つまり?」
「つまり、君は選ばれた人間ということだ」
突然の事に俺は困惑していた。いやー、そんな珍しい属性だとかに選ばれても正直、分からんのだが。
「その無属性ってのは何が出来るんです?」
「何でも」
「えーっと・・・何でもって?」
「言葉通り何でもだよ。無ということは自分が想像した魔法を使うことが出来る。つまり、最強の属性ってことだ」
「へ、へぇー・・・それで、グリーさんの魔法を使うのに適した属性はあったんです?」
「無属性である君だよ」
「ですよねー」
グリーさんが考案した魔法は黒の魔法だった。カースドリフレクション。別名 呪い返し。まぁ、名前通りの効果だ。
相手から受けた黒の魔法の呪いを効果を倍にして相手に跳ね返すという魔法。無属性である俺は、この魔法を教えて貰ったのだが、魔法なんて使ったことが無い俺の魔法取得は難航した。
そして、2週間という長い時間を掛けて、やっと魔法を取得することに成功した。
「や、やっと、魔法を取得出来た・・・」
「まさかここまで魔法の呑み込みが遅いとは思わなかったよ。けど、魔法は勉強しておいて損は無い。相手を殴ったはいいが、黒の魔法によって呪いの防御魔法を掛けられていて、呪いを受けることもある。
知らないことほど怖い物は無いからね」
「分かりました。・・・魔法って面白いですね。また機会があったら教えて下さい」
「勿論だとも! 僕も魔法に興味を持ってもらえて嬉しいよ」
グリーさんから報酬を受け取って、家を後にする。
「どう? あの坊やは強くなってた?」
「アスモデウスか。何の用だ」
「つれないわね。命を受けたから来たのよ」
「けっ・・・真帝も慎重だな。僕―――俺だけでなくアスモデウスまで来させるなんてな」
「アーサーでの一件は何とか成功した。けど、今回はより強力になった坊やがいるから余計でしょ」
「アイツか・・・。悪くは無い。だが、俺が欲しいと思ったのはあの女だな」
「あら、強欲が牙を剥き始めたわね。竜王女? ジャンヌ?」
「俺の実験の研究対象に相応しいのは・・・白の魔力の女だな」
「強欲の罪のマモン。またの名を―――グリー」
「俺の欲のために全てを奪う。女でも子供でも老人でも関係ねぇ。欲しいと思った瞬間に全ての物が俺の物だ」
グリー・・・マモンは高らかに笑う。その様子を見てアスモデウスは嫌悪感を抱く。
やはり、この男は嫌いね。全てを物としてしか見ていない。とても、嫌いな男。だけど、強さは一流。さて、あの坊やはどうなるかしらね。




