魔術師
「この世界は魔法が全てだ! 魔力を肉体強化に使う。馬鹿げてる。魔力とは本来、魔法を行使するための物。ならばこそ、我々が立ち上がらないといけないのだ!」
怒号が飛び交う街の中心部。それを見ながら酒場へと入る。降りしきる雪で体が冷え切ったところにストーブがある酒場は天国だ。
「旅人か? それも女連れ。2人もいるなんて羨ましいねー。何にするんだ?」
「とりあえず、ホットミルクと適当に食べ物を頼む」
「あいよ!」
料理を待つ間に路銀を数える。圧倒的に足りない。財政難だ。どうしてこうなった。
「主様、なぜそんな難しい顔をしているのだ?」
「金が・・・無い」
「エンペラーアンデッドで得たお金はどうしたのだ?」
「アスガルドの復興のためにそれなりの額を置いてきた。けど、それでも余裕はあったんだ」
「では、なぜ?」
「なぜ? スカーレット。自分が着ている服の素材は何だ?」
「ふむー・・・動物の毛皮だな」
「そうだ。動物の毛皮だ。何の毛皮かってのが問題なんだよ」
「問題なのか?」
「大アリだ! その毛皮はこの国で数百頭しかいない貴重なタイラントベアーから取った毛皮。狩猟も難しい上に数も少なく、乱獲が禁止されてる超貴重な毛皮だ。
その毛皮の値段はおよそ1000万ビリス。俺たちの世界換算で1億円! それなのに少し汚れたからと2回買い替えたりした。その結果、お金が厳しい」
「妾のせいだったのか」
「まぁ、スカーレットだけじゃなくて今まであのクエストをやっただけでここまで来れたのがおかしかったんだけどな。つまり、仕事をしないといけない」
「なるほど。ジャンヌ、鼻水が出ているぞ。寒くないか?」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。えへへ~」
「大丈夫なら良かった。寒かったら言うんだぞ」
「うん!」
買い替えたりしたのは主にジャンヌのためってのが大きいな。女の子なのだから可愛くしないとダメだってスカーレットが張り切ったからなー。
そして、出来上がったのが雪の白さと合わさった妖精だ。まぁ、これならそれだけお金を使っても問題無いな。
「お待ち! ミルクと料理だ」
「ありがとう。少し聞きたいんだが、ギルドみたいなところはこの国にあるのか? 仕事が欲しくて」
「ギルドか。もう無くなっちまったんだ」
「無くなった?」
「ああ。表の奴らを見ただろ? あいつらは魔法至高主義者。魔法こそが全てで他は全て底辺だって思ってる奴らなのさ。
それだからか冒険者のためのギルドは全て潰された」
「けど、一般人でそんなことが出来るのか? 数は多そうだけど」
「数は・・・まぁ、多いと言えば多いな。だが、それよりも国のナンバー2である宰相の存在が大きいだろうな」
「宰相・・・」
「おっと仕事だったな。街の中央部に掲示板がある。そこに仕事は貼られてる」
「ギルドは無いのに掲示板はあるのか」
「そりゃ、仕事を頼みたい人は山ほどいる。そんな人たちの場所がいるだろ? そういうのも分かってるからか、そこには誰も手を出さない」
「なるほど。ありがとう。後で行ってみるよ」
手を振りながら戻っていくマスターを見送ってからご飯を食べ始める。北国で寒いから温かい食べ物が多い。
はぁー・・・体の芯から温まる。シチューのような食べ物にパンがあってとてもおいしい。
「とりあえず、お金稼ぎが第一目標で問題無いな?」
「主様が進むところに妾も進む」
「私も問題無いです!」
「よし。食べたら中央部にある掲示板に行くか」
談笑しながら食べるご飯は、時が経つのも早い。ご飯の代金を清算して中央部の掲示板へと向かう。掲示板の周辺には人がちらほらといる。
「あのー仕事を探してるんですが」
「それだったら好きに掲示板に貼ってある仕事をやればいいよ。基本的に条件だとか報酬は紙に全部書いてあるから」
「なるほど」
掲示板に貼られている何十枚もある紙。それが全て仕事ということか。吹雪いても何も影響がしないなんて凄い紙だな。
「恐らく魔法で加工されている。主様、どういった仕事を受けるのだ?」
「この世界の知識がほぼほぼ無いから職人みたいな仕事は一切出来ない。だから・・・これかな」
「魔法の布教活動?」
「詳細を見たけど、魔法を開発した人が自分の魔法を広めたいんだとさ。冒険者限定で受けて貰うことで魔法を取得。そこから魔法を各国で広めてもらうのが仕事らしい」
「要するに魔法を取得することが仕事ということなのか。主様がいいのなら妾はその仕事で問題無い」
「私も」
「分かった。なら、この仕事にしよう」
貼り紙に書いてある目的地に行き、直接依頼人から仕事を受けることでクエストの開始となる。今回は魔法の取得を本人に家で教えて貰うということで、家に向かっている。
「ここか・・・。すいません!」
周りの民家と何も変わりが無い家。ここが依頼人のいるところか。それにしても、魔法なんてそんなに簡単に開発出来る物なのか? いろいろと疑問を思い浮かべていると、ドアが開く。
「何の用ですか?」
「仕事の貼り紙を見たのですが」
中からは中年の男性が出てきた。何の特徴も無い普通の男性。いきさつを話して中に入れて貰えた。
「仕事の依頼を受けてくれて嬉しいよ。紙にも書いてある通り、魔法の取得が僕の依頼だ」
「魔法って簡単に取得出来る物なんですか?」
「うむ・・・魔法は使用したことが無い感じかな?」
「えーっと魔力を使ってはいるのですが、魔法はちょっと」
「まぁ、普通はそんな感じだから気にしなくていいよ。魔法の授業からやった方がいいね。少しだけ長くなるけど、いいかな?」
「大丈夫ですよ」
魔術師による魔法の授業。魔法という未知の物に思わず心が躍る自分がいる。やっぱり魔法はロマンだから使えるようになるってなったら楽しいじゃん。




