止まること無く
「つまり、あんたは俺の世界で生まれてしまったこの世界を救うために俺の世界を手に入れようってことか?」
「ああ、この世界を救うために君の世界を手に入れる」
「やっぱりか」
「もうこの世界は滅びの一途を辿っている。だからこそ救うのだ。全てをゼロから。そして、私が世界を創る」
「・・・結局は、自分のためかよ」
「自分のため? 違う。私は君の両親の罪の全てを清算してあげようとしているのだ。嬉しいだろう?」
「そんな訳あるか!」
「困ったものだな。私は1つの世界を犠牲にするだけ。君の両親は無限の世界を破壊した。どちらの方が大罪人なのだろうな」
「そ、それは・・・」
「世界は真実を知らないだけだ。君の選択が世界を変えることになる。良い返事を待っているよ、竜の秘宝に選ばれし者よ」
真帝は空間を手で縦に切る動作をする。すると、グワッと横に空間が開かれる。闇が続く空間に真帝とモードレッドは入っていく。去り際に手を振りながら。
「どうすればいいって言うんだよ・・・」
「ふむ・・・。とりあえず、状況の整理をしつつ今は休むといい」
「休んでる暇なんてあるのか? 真帝は俺の世界を奪おうとしてるのに」
「焦るな。父上は鍵に竜の秘宝が必要だと言っていた。なら、君が全ての鍵だ。そして、君はここにいる。まだ時では無いのだろう」
「確かに」
「焦りは余計なミスを生む。何か動きたい気持ちは分かるが、今は休むのだ。落ち着いて心の整理をする。心が乱れれば全てが乱れる。
すまないが、部屋を用意してやってくれ!」
かしこまりました! という声と共に部屋へと案内される。城の一室というだけあって豪華な装飾などが施された立派な部屋だ。
備え付けのベッドに横になる。何がどうなってるんだろうか。
「主様、大丈夫か?」
「大丈夫かと言われれば、大丈夫じゃないな」
「・・・そうか」
「なぁ、スカーレットは俺の両親の話を聞いてどう思った?」
「どう・・・と言われても」
「両親のせいで平行世界は消えた。そして、その歪の埋め合わせのために使い捨てのように世界を作った。ひどい親じゃないか?」
「ひどい親か・・・。主様、妾と主様が会えたのはこの世界があったから。だから、正直、感謝している。こんなにも愛してやまない主様と会えたんだから。
だから、そんなに気にしなくていい」
「悪いな。ありがとう」
スカーレットはそっと俺を抱き寄せて頭を撫でてくれる。母のように安心出来て落ち着いてきた。やっぱりスカーレットのことが好きだ。
「そういえば、ジャンヌはどうした?」
「傷付いた人たちの手当てに行った。ジャンヌが成すべき事としているから良きことだ」
「そうだな。・・・なぁ、俺の両親が竜の秘宝を手に入れてまで平行世界を消したのは本当に好奇心からだったんだろうか」
「どういうこと?」
「そもそも竜の秘宝なんて至高の宝があること自体、伝説レベルだ。それなのに研究をしていた。どこから資金が出ていて、どうやって場所を手に入れたのか」
「確かに。研究をすると言ってもお金や場所は必要になってくる。それも世界を根底から変えかねない研究。個人レベルでどうにか出来る話じゃない」
「何か理由があったんじゃないか?」
「ふむー・・・。あり得なくはない。だが、主様の両親は・・・」
「もういない。いても世界が違うから会えない。けど、真帝と同等かそれ以上に詳しい奴がいる」
「父―――竜王か」
「おう。スカーレットとの婚姻と両親のこと。聞かなきゃいけない事がいっぱい出来た。それに真帝を止めないといけない」
「主様の世界を奪おうとしているからな」
「ああ。だけど、俺だけの力では帝国に勝てない。真帝は七つの大罪という強大な戦力を持ってる。それは、四帝すらも知らなかった。
だから―――」
「なるほど。私に協力して欲しいと」
「はい。いずれ来る戦いの時に力を貸して欲しいのです」
「固くならないでくれ。力を貸すのは構わない。だが、父上のやろうとしている事を止める理由がない」
「世界が滅びるから?」
「そうだ。この世界が滅びるというのにそれを止めに行く理由があるか? 例え、君の世界を奪うことになるとしても」
「何十億という人が死ぬことになる。それでも、止めないのか?」
「我々に死ねというのかね?」
アーサーと俺は対峙する。アーサーに力を借りに来たのだ。四帝に力を借りれば七つの大罪に対抗出来ると思ったから。
だが、自分の世界が滅びるのにそれを止めようとする戦いに力を貸す人間がいるだろうか。
「真帝は本当にこの世界を救うと思うか?」
「・・・分からない」
「息子であるあんたですら真意が読めないのが真帝だ」
「だが、それ以外の選択肢があるのか? この世界は滅びるというのに」
「ある!」
「それは何だ?」
「真帝は言っていた。竜の秘宝なら何でも願い事が叶うと。なら、出来るはずだ。全ての世界を元通りに戻すことが」
「・・・そう来なくてはな!」
「え?」
アーサーは立ち上がって俺に握手を求めてきた。俺は思わず握手をする。何がどうなってるんだ?
「父上のやろうとしていることに疑問を持っていた。話を聞いた時からどこか真実は別にあるような気がしていたんだ。
だからこそ試させてもらった。もし、何も答えを出さずに協力だけ頼むようなら断っていたところだ。だが、グレンの導き出した答えは、我々が乗る価値のある答えだ」
「あ、ありがとう」
「しかし、全てを元通りにか・・・。なぜ、グレンの両親が他の平行世界を消したのかが謎だから手を出しにくいところではあるな」
「ええ。なので、聞きに行こうかと思います」
「聞く? 誰にだ?」
「竜王に」
残り2人の四帝への謁見後に竜王へ会うための旅が始まる。全ての世界を救うために。




