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至高の宝

「うぐ・・・。俺は、負けたのか」

「ああ。俺の勝ちだ」

「そう、か。なら、殺せ。俺には生きている価値が無い」

「嫌だね。俺が勝ったんだ。そこまで好きにさせて貰う。それに見てみろよ」

 俺の指差す方をモードレッドが見る。その目が徐々に見開いていく。

「な、何だこれは。なぜ、宴が開かれている」

「アーサー王が言ったんだ。”悲しき戦いだった。失う物ばかりの戦い。だからこそ! うつむかず、前を向いて歩こう! 悲しき戦いの後にこそ宴だ”ってな」

「ふざけてる。勝ちが無い戦いの後で宴なんて不謹慎だ」

「そうかなー。皆の顔を見てみろよ。悲しみ、憎しみが浮かんでた顔が今では泣きながら笑ってる。辛いことは簡単には乗り越えられない。だから、楽しいことで塗りつぶすんだ。それが少しでも気が晴れればいいもんだろ?

 ずっと下を見てうつむいていても何も始まらない。俺たちは生きてる。生きているなら歩かないといけない。辛く険しい道でも前を向いて一歩ずつ歩くんだ。アーサー王なりの優しさじゃないかな」

「・・・俺は、またしてもアーサーを心のどこかで否定しようとしていたのかもしれないな」

 モードレッドは微かに笑うと再び眠りにつく。宴は3日3晩続いた。


「さて、モードレッドの持っているハートジェムの詳細な使用用途を聞こうか」

 宴が終わった後、モードレッドと俺たちはアーサー王に呼ばれて、アジトのアーサー王の部屋へと来ていた。城が壊れたからこっちが仮の部屋らしい。

「答えたくないと言ったら?」

「別に構わない」

「ふっ・・・。器が大きいのか単なるバカなのか。いいだろう」

「バカとは失礼な子供だな」

「真帝の目的は世界の再生。それは―――」

「元の世界に戻すことだ」

 突然現れた声にその場にいた一同が声の主を見る。そこには40代ぐらいの髭を生やした男性が立っていた。この世界では見たことが無いスーツを着こなし、杖を片手に持っている。ダンディなおじ様といった感じの出で立ちだ。

「父上・・・」

「久しいなアーサーよ。それにモードレッドもよくやった。ハートジェムの回収ご苦労」

「まさか・・・真帝?」

「いかにも異界の者よ。いや、正確には平行世界の者と言った方がいいかな」

「俺を知ってるのか!?」

「当然。私の情報網を侮ってはいけない」

「父上。元の世界に戻すとはどういうことですか?」

「そのままの意味だとも。この世界は大きく分岐してしまった世界。その修正には至高の宝が必要になってくる」

「分岐?」

「かつてこの世界とそこの少年の世界は同一の世界だった。可能性の数だけ世界は生まれる。もし~だったら・・・考えたことはないか?

 もし、私がこの場に来なかったら。もし、アーサーとモードレッドが戦わなかったら。もし、竜王女が竜の秘宝を発動しなかったら。

 もしの数だけ世界は無数に分岐し、無限に世界を生成する。だが、ある時、特異点が生まれてしまう」

「特異点?」

「可能性の歪とでも言うべきか。あってはならない分岐をしてしまったのだ」

「それは何ですか? 父上」

「世界の破壊と創造」

 もしの数だけ世界が創られる。なら、世界を破壊して創造する可能性の世界は? その先の世界はあるのだろうか。

「可能性としてはありそうですが・・・」

「可能性の数だけ世界があるのだから当然あり得るだろう。だが、その特異点を分岐とした2つの世界だけしか無いのだ。

 それ以前の他の無数の世界と他の横並びの平行世界は存在しない」

「それは、おかしいですね。無数に限りなく増え続ける世界なら並行して世界が存在するはず。なのに、この1点のみの2つの世界しか存在していないのですか?」

「その通り。世界の破壊と創造。この現実に存在する世界を破壊したのでは無く、横一列に並んだ無限にある平行世界全てを破壊したのだ」

「なっ・・・そんなこと可能なのか?」

「可能かどうかか。君の両親ならそれが可能だったのだろう」

「俺の両親!?」

「そうだ。天才学者にして世界の大罪人である君の両親。彼らは多次元世界などの別の世界への興味を持った。そして、それは本能のままに欲望のままに研究が進む。

 彼らは見つけてしまった。世界を形作る至高の宝に。そもそも世界とはどうやって誕生したのか。広大に広がる宇宙ですらも始まりがある。その0から1になった瞬間に何があったのか。それは、宇宙創生の超巨大規模の爆発。

 そして、至高の宝が生まれた」

「その至高の宝があると何が出来るんだ?」

「何でも」

「ん? 際限なく願いが叶うのか?」

「うむ。人が叶えようとする願いなど世界を作る宝からすればちっぽけな物だ」

「その・・・至高の宝ってのは何があるんだ?」

「質問ばかりな日だな。だが、こういう日も悪くはない。

 至高の宝だったか。

 竜の秘宝は知っているな。格別な扱いを受けている竜の秘宝とは何か。宇宙創生の爆発を起こした始まりの宝が竜の秘宝だ。それは、原初の竜が大事に持っていた宝と言われている。真相は知りようが無いがな。

 竜の秘宝から派生して様々な至高の宝が出来た。無機物でも心を宿すことが出来るハートジェム。万物の叡智を持つと言われるウィズダムブレイン。そのリングを身に付ければ最強の力が手に入るパワーオブリング。

 本当に様々な至高の宝がある。だが、竜の秘宝で無ければダメなのだ」

「な、何で?」

「全ての原点にして至高の宝の頂点である竜の秘宝さえあれば世界を再生出来る」

「つまり、特異点からおかしくなってしまった世界を戻すことで再生するということか?」

「なぜ、そこまで戻す必要がある? もう既に完成された世界が真横にあるではないか。この壊れた世界とは違ってな」

「・・・俺の世界か」

「俺の世界? 違う。お前たちが謳歌している世界は我々という犠牲の名の下に生きているに過ぎない」

「犠牲?」

「2つの世界だけが平行世界として生き残っていると言ったな。正確には違う。2つの世界でありながら、1つは現実があり、リソースが大量にあるリアル世界。そして、もう1つはデジタルでリソースが少ないデジタル世界なのだ」

「どういう・・・」

「君の両親が行った研究の結果、特異点の時点で世界は1つだけになった。だが、平行世界が存在しない世界というのは歪が生じる。

 結果、創られたのがこの世界。テンポラリーなのだ。そう、この世界は君の両親が犯した罪の清算の過程で生まれた世界。

 使い捨ての世界なのだ」

 衝撃の事実にその場にいた誰もが驚きを隠せないでいた。俺の両親が世界の全てを変えた大罪人? 嘘だろ・・・。

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