新たなる敵
「この戦いは多くが傷ついた。全ては私の責任だ。大戦で英雄になることを夢見てしまった私によって起きてしまった戦い。
私は王でありながら国と国民を巻き込んだ」
「だからこそ王として為すべきことをするんだろ?」
「そうだ。俺たちの王様なんだから国をまた建て直せばいい」
「すまない」
アーサー王は国民に深く深く頭を下げる。そして、顔を上げて再建のために動き出そうとしていた。だが、忘れていた。もう一人の存在を。
「なるほど。これがハートジェム。あの人形が心を持ち合わせていた理由はこれか」
「モードレッド・・・。それを返すんだ」
「至高の宝の一つであるハートジェムは真帝の望むべき物。返すわけにはいかない」
「やはりお前が手先だったのか。その至高の宝で何をする気だ?」
「世界の再生だ」
モードレッドはアーサーへと斬りかかる。まだ魔力を取り戻してからそんなに経っていないアーサーではジリ貧に追い詰められていく。
「その目・・・。憤怒の神 マステマの目を手に入れたのか」
「ああ。怒りを一定回数覚えると発動する」
「それまでに終わらせる!」
「無理だな!」
モードレッドの攻撃にアーサーは少しずつ食らいついてきていた。戦いの中で戦闘勘を取り戻しているのか。
「マステマの目って一体なんだ?」
「憎悪の神と呼ばれる存在がマステマ。その目には数字が浮かんでいて、カウントが0になった時、世界は滅びると言われている」
「それがモードレッドの目にあるのか」
「まさか神すらも手にかけていたなんて。主様どうする?」
「このまま放っておいて終わりです。なんてこと出来ないだろ。戦うさ」
アーサーはモードレッドの攻撃によって大きく吹き飛ばされる。そして、首を掴まれて持ち上げられた。
「俺は・・・復讐したいとずっと考えていた。あんたを殺せば俺の復讐は果たされるのか? いや、殺す以上の苦しみをあんたに与えたかった。俺が受けた苦しみ以上の苦しみをな」
「ぐっ・・・。なぜだ。なぜ、復讐に取り付かれた」
「なぜ!? あんたが俺にしたことを忘れたとは言わせない。俺をあんたの影の代理人として産んだことを忘れさせはしない!」
「何・・・?」
「モルゴースから聞いた。母であると思っていたが、俺はアーサー王のクローンだということをな!」
「・・・」
「なぜ何も言わない!! 沈黙は肯定と捉えるぞ!!」
とうとうモードレッドの目のカウントが0になった。マステマの目が発動する。
「魔力の余波がこんなにも!」
「ぬぅ・・・。妾でも戦慄するほどの魔力。これが神の遺物か」
モードレッドから迸る魔力の余波で城がどんどんと崩れていく。このままだとここにいる人達が危ない。
「モードレッドもどうにかしないとだけど、まずはみんなを助けないとな!」
「主様、了解した!」
「お兄ちゃん分かったよ。ウロボロス、お願い!」
俺とスカーレットとジャンヌはそれぞれ国民を城外へと逃がしていく。常人のスピードを超えてるから何とか間に合った。
「あれだけ立派だった城がこんなことになるなんて・・・」
崩れた城の真ん中にどす黒い魔力をまとったモードレッドと満身創痍のアーサーが対峙する。
「あの状態のアーサー王では負ける」
「主様、気を付けて・・・」
「ああ。必ず帰ってくるさ」
俺は、対峙する2人の場所へと足を進める。
「これがマステマの力だ! アーサー、俺はあんたを超えた! もう影の代理人などと呼ばせはしない!」
「・・・そうか。お前は苦しんでいたのか」
「苦しんでいた? ふざけるな! 他人事のように言う権利などお前には無い!」
「私は・・・いや、どんな言葉を紡いでも意味が無いだろう。私が出来るのはお前の剣を受け止めることだけだ」
「ならば、死ね!!」
人知を超えたモードレッドの一撃がアーサーを襲おうとしていた。アーサーほどの強さをもってしても反応がし切れないほどの一撃。
俺は、その2人の間に割って入って、攻撃を止めた。元から動いて無ければ止めれなかった。
「何のつもりだ少年よ。割って入るのか?」
「当たり前だ」
「部外者は消えろ」
「親子で殺し合いなんてさせないぜ。自分の親を殺すなんてどうかしている」
「何も分からない、何も知らない部外者が語るな!!」
「・・・俺はあんたらの事なんて一切知らない。だけど、俺の目の前だけでは親を殺すことなんてさせない」
「なぜだ!? なぜ、そうまでして止める。無関係なのに」
「関わった時点で無関係じゃないさ。それに・・・俺の親は死んでる。死んだらもう文句も何も言えない。それを味わって欲しくない。そんな俺のエゴだ!!」
俺は勢いを乗せてモードレッドに斬りかかる。だが、その一撃を軽々と避けてモードレッドに殴られる。
「少年のエゴなどどうでもいい。俺がやるべき事は復讐だ」
モードレッドはそのまま殴り続ける。圧倒的な攻撃による神速の殴打。顔面を辛うじて守っているが、主様にどんどんダメージが貫通していく。このままでは死んでしまう・・・!
「がっ! がはっ! ぐっ!」
「どうした? 俺を止めるんじゃなかったのか? ・・・そうだな。邪魔する奴は消さないとな。アーサー王もこの国の民も”竜王女”も」
「竜・・・王女・・・も、だと」
「ああ。全員消す。少年が死んだと同時にな!」
繰り返される殴打に主様は吹き飛ばされる。顔は腫れあがり、元の原型を留めていない。そして、何度も吐血を繰り返していた。
内臓にも深刻なダメージを負っている。このままだと本当に取り返しがつかないことに・・・。
「お姉ちゃん! 何でお兄ちゃんを助けないの!? このままだと・・・」
「妾が割って入ればモードレッドによって一瞬で殺される。主様よりも力が衰えている妾では足手まといどころか死にに行くだけなんだ」
「そんな・・・」
主様・・・どうすれば・・・。
「少年、終わりだ。お前が愛した竜王女もすぐに後を追う」
モードレッドの無慈悲な攻撃が主様を襲う。この一撃で全てを終わらせる攻撃。・・・主様!
『舐めるなよ、下等生物』
突如として響き渡る声。そして、モードレッドの拳は主様によって受け止められる。何が起こってるのだ?




