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それぞれの戦い~竜王女~

 思えば、主様がこの世界に来てからずっと一緒だった。互いが別れて行動をすることなんて無かったっけ。けど、今は違う。妾にこの戦いを任せて先に進んでくれる。それだけ信じられてるってことかな。


「敵、認識。データ照合―――敵の存在を竜と判別」

 ほぉ。妾を見て、この人形の集まりは一発で竜と判断、思考して身構えたのか。ただの人形では無く、意志や思考を持った人形か・・・。厄介だ。

『妾に立てつき、この世界を破壊する人形は世界に不要』

「理解不能。我々は世界を破壊していない。世界を破壊しているのは人間。人間の活動によって世界は大きく破壊されている。

 我々の方が世界にとっては必要な存在」

『・・・ハハハハハハ!! なるほど。人形のくせに的を射た発言をする。確かに世界を壊しているのは人間だったな。

 ならば、理由を変えようか。お前の存在が主様にとって邪魔だ。

 どうだ? ひどく個人的な理由だが』

「理解。大事な人のために戦うことを希望している模様。戦闘態勢に入ります」

『心もあるのか。この人形はどうなっているんだ?』

 竜となった妾に突進してくる巨兵。妾と同等の大きのこいつの攻撃はかなり強烈だ。・・・しかも、後ろにはこの国の人間がいる。

 また、妾の姿を見て罵詈雑言を吐くか?

「お、おい! あれを見ろ・・・」

「竜・・・なのか?」

「そうだろ! 俺、見たんだ。グレンって子の横にいつもいた女の子が、女の子が・・・あの竜になるところを!!」

「え!? じゃあ、まさか災厄が起こるのか・・・?」

 人間なんか構わずに突進してくる巨兵を受け止める。体のほとんどが鉄で出来ている機械だから衝撃が・・・!

 だが、後ろに被害を出すわけにはいかない。

『おい! そこの人間。早く消えろ! 死にたいのか!』

「俺たちを守ってくれてる・・・?」

「竜が、俺たちを・・・」

 ちっ! 国の人間に構わずにこの人形は攻撃を仕掛けてくる。本気を出しての攻撃では、周りへの被害が大きい。

 だったら!

『どうした人形? 妾の自慢の体にはその鉄くずではダメージを与えられないようだぞ?』

「防御値、我々の攻撃値を大きく上回る模様。修正。攻撃時の魔力比重を新たに変更」

『まさか魔力のコントロールまで出来るのか。・・・何をしている! 早くどこかを行けと言っただろ。喰われたいのか?』

「へっ! 俺たちを脅そうとしても無駄だ。あんたの人間だった時の姿を知ってる。そして、俺たちのことを守ろうとしている竜の姿も知った。

 だったら、やることは一つ! みんなあの場所へ急げ!!」

 あの場所? 何を言ってるのか分からないが、とにかく邪魔者が消えてくれた。これで戦え―――

『ガハッ! さっきまでの攻撃と違う・・・』

「総魔力100万人以上。その魔力の比重を攻撃に移しました。さきほどまでの”人形”とは違います」

『人形と言われて怒ったのか? 面白い!』

 繰り出される拳を受け止めて人形を見据える。頭部にあるダラリと力なく垂れ下がっている人形が全ての指揮系統か。

 だが、あの覆われた魔力のバリアは妾の今の攻撃では壊せない。

『喰らうがいい・・・。竜の炎はどんな火よりも熱いぞ』

 炎のブレスなら鉄くずを溶かせるはず。・・・なるほど。魔力による防御か。妾の炎を受けて無傷か。少し凹むな。

「炎による攻撃を防御。システムに異常なし。攻撃続行」

『炎もダメ。攻撃もダメ。なるほど。魔力不足がここに来て仇になったか』

「だったら俺たちの魔力を使えーーー!!」

 この声は! さっきの人間たちか。どこから・・・。街に張り巡らされた拡声器から聞こえてくるのか。だが、どこから喋ってるんだ? 銃声や怒号が飛び交っているが。

『魔力が・・・回復している?』

「機械兵に魔力が送れるっていうなら別の対象にも魔力が送れるって思ったんだ。だから、少ないが、俺たち5000人の魔力を送った。

 竜だから怖いとかそんなの関係ねぇ! 俺たちを守ってくれる。だったら、俺たちも力を貸す! だから、負けるな! 竜だったら、それぐらい簡単に倒せるんだろ!?」

 ふん。うるさい人間達だ。・・・だが、力が漲る。送られてくる魔力を通じて思いも通じる。これは、恐怖ではない。安堵、期待・・・妾を応援しているのか。

 なるほど。ならば、その期待に応えなければいけないな!

「魔力値上昇。約2倍以上・・・いえ、測定不能。我々が勝てる可能性―――13%。魔力の供給を開始」

『させるか! 妾に送られた魔力の真意を知れ。竜だけが放てる最強にして最高の技でお前たちを屠る』

「敵の魔力が更に上昇。魔力の供給・・・ではない模様。内部で爆発的に膨れ上がっています。この魔力によって放たれる技による生存確率―――0%」

『竜技 紅煉の業火インフェルノフレイム !!』

 口から放たれる炎ではない。体から解き放たれる魔力を業火に変えて敵に放つ最強の奥義。全ての物を灰塵にする。

「全魔力を防御に・・・防御に防御に防御に。エラー。主力部分のバリア破損。体全体の金属の約5割が消滅。消滅は尚も続行。

 全機能の停止命令を受理。10秒後に全機能を停止します」

『ふん。人形が自ら命を絶つか。まるで人間だな』

―――ありがとう。そして、あの人を頼みます。優しい竜王女様

『・・・ッ! 人形―――いや、奴らは意思を持った”人”だな」

 竜の姿から人の姿へと変えて妾は地上に降り立つ。裸の状態であることを女たちが慌てて隠していたな。なぜ隠す必要があるのか。主様でない男など微塵も興味が無いというのに。

 主様に裸を見られたら・・・恥ずかしい。

「これが人の感情か。さて、主様のところへと向かうか。それにしても・・・なぜこうも動きづらい服なのだ!」

 周りにいた女たちが用意した服はドレスであり、なすがままに着せられていたので、こうなるまで気付かなかった。

 女たちが言うには、これから会いに行く人は特別なんだろ? だったら、少しぐらい特別な恰好していきなって! と言っていたな。

「戦闘のど真ん中で真紅のドレスを着て走っているやつがいるか!?」

 そう。デートとかなら最高の服装なのだ。なのに・・・今は戦闘真っ最中! どう考えてもおかしいだろ。まぁ、戦いを終わらせたのだから、これ以上戦う必要が無いと言われれば、その通りなのだが。

「さて、主様はどんな反応をしてくれるのか。楽しみだな」

 戦場に降り立った真紅の女神が颯爽と駆け抜ける。その姿を見たものは口をそろえて言う。世界のどんな物よりも美しく、気高い存在。だけど、あの屈託のない笑顔は勇気をくれると。全ての兵士の士気を上げながら竜王女は主様のところへ向かう。

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