作戦決行
「今日はとても厳しい戦いになる」
「ええ、だけど、負けられない」
「そうだ。この戦いで負ければ国民が機械兵の魔力を供給するだけの存在になってしまう。それだけは避けなければならない。
いざとなったら国外へ逃げる手はずも念のために打ってある」
「さすがですね」
俺はアーサー王とアジトから地上に出たところで会話をする。機械兵達に気付かれない建物の屋上に繋がっている一ヶ所の通路から出た場所だ。とても綺麗な国。だけど、人が生活している音や気配が一切感じられない。
俺が来たときは、そんなことを思わなかった風景が一変したことに驚きを隠せない。
「あの城は私が好きだった機械仕掛けを数多く散りばめてあるんだ」
「見ました。いろいろな仕掛けがありました」
「機械を触ることが何よりも好きで、この国に住む人々が何よりも好きだった。けど、その国をアンドロイドに乗っ取られようとしている。
私は・・・もう逃げない。大戦の後に何もしなかった自分を時々、後悔する時がある。
もっと早く帰っていればこんなことにならなかったんじゃないかってね。けど、もう過去の出来事だ。明日は何もしなくても勝手にやって来る。
だからこそ、今やれるべきことをしなければいけないって奮い立たせてるんだ。カッコ悪いだろ? 大人の愚痴を子供に聞かせるべきでは無かったか」
「いえ、むしろカッコいいぐらいですよ。自分で自分のダメだったところを見直して、立ち向かおうとしてる。どこもカッコ悪く無い」
「・・・そう言って貰えるとありがたいね。さて、広間に待っているみんなのところへ戻るか」
「はい!」
俺とアーサー王は広間へと戻る。そこには数々の武装をした人々が集まっていた。凄いな。みんなの気迫がヒシヒシと伝わってくる。
「この国のために立ち上がってくれたことを誇りに思う! だが、一つだけ約束して欲しい。必ず生き延びると。
国のために命を散らすなんてことは絶対にさせない。最期ぐらいは国のためになどと思ってほしくも無い。ただ、横にいる家族、友人、恋人のために生きて欲しい。
・・・国とは!? 王の物か? 土地か? そこに城があるからか? 違う!! 国とは、民なのだ! 民がいるからこその国なのだ!!
忘れないで欲しい。ここにある国が滅んだとしても、君たちが生き延びてさえいれば、この国に根付いた思想や心は絶対に無くなることは無い!! そして、そこがまた国となるのだ。
王など飾りだ。人を導くという些細なことを任されただけの飾り。この国に住み、生きている民こそが宝なのだ!
私もこの場で誓おう。君たちを死なせないと。そして、この国を必ず取り戻して見せると!!」
オオオォォォーーー!! という叫びが鳴り響く。みんなの士気は最高潮だな。にしても、これだけの音量の声が響いてたら機械兵が気付きそうなもんなのにな。
「アジト周辺にジャミング装置を張り巡らせてあるから問題ない」
「モードレッドか。なるほど。気付いて来たとしても入れないのか」
「そういうことだ」
モードレッドは定位置に戻ると、静かに目を閉じる。戦いの前に気持ちを落ち着かせているのか。さすがは七つの大罪の憤怒の罪を背負った男だな。
「作戦は各隊のリーダーに従って欲しい。では、作戦開始!!」
助け出された国民は1万人ほど。国の人口を考えても少ないが、それでも助け出せれた方だ。そして、その国民の内、女性、子供、老人、病人、怪我人などを除いたおよそ1500人ほどが戦いに赴く。
1500人を100ほどの隊に別けて行動を行う。1つの隊で15人。みんな戦闘に長けた人たちばかりではない。だが、その中でも騎士や衛兵をやっていた人物を選りすぐって、隊のリーダーとした。
それぞれの隊は各役割を全うする。ジャミング装置の設置、国内の機械兵が抑えている主要場所の奪還、機械兵が動くのに必要な燃料の確保。
それぞれが死なないように作戦を実行していく。
「走れーーー!! 機械兵の動きはそこまで速くはない。かく乱して逃げれば逃げ切れる!」
「右から敵兵! 銃は関節部分を狙え! 照準を合わせられないのなら胴体をとにかく狙うんだ!」
「医療班! 味方がやられた! すぐに応援を頼む」
周りにはみんなの声が響いていた。みんなが戦っている。俺たちも戦う。この人達を守るために。
「私は弱い・・・。魔力を失った人間だ。だから、この装置を必ずアンドロイドの元まで持っていき、発動させる。
この戦いを終わらせるために」
「あまり気負うな。俺たちも付いている」
「そうですよ! 俺も戦います!」
俺とモードレッドは魔力による武装を済ませて戦場に降り立った。アーサー王が城へとたどり着くまでの道を切り開いていく。
スカーレットも付いてきている。ジャンヌは城の魔力による治癒をしたいと医療班として行動している。
ジャンヌだったら機械兵にも後れを取らないから大丈夫だろう。
「・・・ふむ。どうやら、妾はここで主様達と別れなければいけないようだ」
「どういう―――なるほど」
俺たちが城へと向かうために走っているメイン通りの左側から大きな地響きのような物が聞こえる。巨大な何かが歩いているような音。
いや、俺の位置からでもハッキリと見える。あれは、巨大な機械兵だ。城と同等ぐらいの大きさの巨大な機械兵。大きいな・・・。
「久々に楽しめる敵と遊べそうだ。主様、ここは妾に任せるといい」
スカーレットはそう言うと、靴や服などをその場に脱ぎ、巨兵の方へとゆっくり歩いて行く。そして、巨兵がゆっくりと振り上げた拳をスカーレットに向けて振り下ろす。
振り下ろされた拳の衝撃だけで街が震える。こんな拳に当たったら一たまりも無い!
「スカーレット!」
「安心しろ主様。妾は誰だ?」
「え?」
「妾は竜王女。竜は畏怖され、崇められる存在。その強さは神にも匹敵し、神をも恐れさせた」
まるで昔話のようにスカーレットは淡々と語る。目の前まで迫りくる拳など気にしないようにスカーレットは優雅にその場に立っている。
「ああ、なんてひどくつまらない世界。世界は残酷だ。妾にとって世界はあまりにも残酷。だが、美しい。世界は主様を妾に会わせてくれた。
そんな美しい世界を壊す人形なんて必要無い」
振り下ろされた拳がスカーレットに当たる瞬間、片手を天に挙げる。いや、あんな細腕で受けきれるはずがない! あの質量の拳はこの国すらも壊しかねない威力だ。
だが、スカーレットはその拳を受け止める。地面が凹み、辺りの建物が衝撃で壊れる中心でスカーレットは無傷でいた。
『妾の力、思う存分味わうがいい』
竜化。竜王女であるスカーレット。ならば、竜になることも出来る。そして、スカーレットは畏怖される存在である竜になった。
自身が人々から恐れられて罵声を浴びせられると知りながらも竜へとなったのだ。あの巨兵は竜になったスカーレットじゃないと止められない。なら、任せるしかない。何か言うやつがいたら俺が許さない。それだけだ。
そして、各々の戦いが始まる。




