一歩進んだ力
「朽ち果てぬは龍の心、闘争に身を預け、覇の龍の理をその身に宿す」
「魔力が形成していていく。なるほど。それが、少年の魔力の在り方か」
俺の体にまとっていた魔力は形になった。これが、俺の更なる強さへの一歩か・・・。
「・・・まさに竜だな」
俺の背中には翼が生えた。え? 何これ。よく文献とかである爬虫類みたいな翼じゃなくて機械的な翼が生えてるんだけど。
・・・かっけぇ。
「全身を護る防具ではなく、翼か。まだまだ発展しそうだな」
「これどうなるんだ? ・・・うお!」
翼を動くように頭で命令したら動いた! そして、その勢いのままモードレッドへ突っ込む。さすがに直線的な攻撃だから避けるか。だけど!
「翼によって軌道を瞬時に変えるのか!」
「急加速、急転回まで出来るのか! だったら・・・!」
今までの速度を維持しつつ、急な軌道変更などによる奇襲。次々と繰り返される不規則な攻撃でやっとモードレッドに一撃を与えることが出来た。
「どうだ!」
「見事だ。魔力を物にして実際に使いこなすか。まだまだ道のりは長いが、今の少年―――グレンなら問題無いだろう。
作戦決行だ」
「ああ!」
モードレッドに名前を呼ばれて胸が高鳴った。認められたんだと初めて実感した。・・・そうか。俺は、いつの間にかモードレッドに憧れを抱いていたのか。
圧倒的なまでの力、毅然とした立ち振る舞い。全てがカッコいい。いつか、いつかこの人を超えたい。
「作戦の決行は明日になった。恐らく、国民の大半は動かない―――いや、動いてほしくない。とても危険な作戦だから。
その作戦に君たちを巻き込んでしまって申し訳ない」
「いや、それは別にいいんです。俺ももう一度だけ会ってアンドロイドと話をしたいので」
「・・・そうか。では、広間に向かおう。みんなに明日のことを説明しなければいけない」
作戦決行を明日に控えて、俺とアーサー王は広間にいる国民のみんなに説明をしなければいけなかった。当然のことだ。明日には全てが決する。
「みんな聞いて欲しい! 新たなジャミング装置によって機械兵を今よりも広範囲に活動を停止させることが出来るようになった!
明日、私たちはアーサー王を止めようと考えている。
そして、隠していたことがある。
私は、アーサー王である!!」
突然の宣言にみんな困惑する。だが、認識阻害が解け始めてやっと思い出される。自分たちのリーダーがアーサー王だということを。
「あんたがアーサー王・・・? なら、上にいるのは誰なんだ!?」
「上にいるのもアーサー王だ」
「どういうことだ!?」
アーサー王は事の経緯をすべて話した。包み隠さずに話した。そして、国民のみんなは戸惑い始める。
「私たちはこれからアンドロイドと戦う。とても危険な戦いだ。敵対していると判明した時点で機械兵は攻撃してくる。
だからこそ、みんなには逃げて欲しい。
ここにいる男が国外へ逃げる手はずをしてくれている。どうか、無事に逃げ切って欲しい」
「・・・バカ言ってんじゃねぇ」
「何?」
「アーサー王!! 俺たちはあんただからこの国で幸せになれた。あんたの教えてである”困った人を助ければ幸せな気分に2人がなれる。それをみんながやったらどうなるか。数えきれないほどの幸せがこの国に溢れることになる。だから、困った人がいたら助けて欲しい”を守ってきた。
だからこそ、俺たちはその教えに従う。俺たちも戦う!!」
オオオォォォーーー!! という雄叫びが広間全体に響き渡る。全員の意志が一致した瞬間だ。すげぇ。すげぇよ。
国王のために全員が戦うことを躊躇わない・・・か。いい国なんだな。
「だが、戦いに赴けば死ぬことになるかもしれない!! そんなことはダメだ!!」
「王様よ、俺たちの国を助けるのに何で俺たちが動いたらいけないんだ?」
「なっ!? それは・・・」
「俺たちはこの国とあんたを愛してる。それだけで戦うのはダメなことなのか?」
どこまでも真っ直ぐな眼。自分が守りたいもののために戦う。アンドロイドが言っていた守るための強さが彼らにはある。
心の強さはそのまま強さになる、か。この人たちは強い。国のために仕方がなくじゃない。この人たちがこの国を守りたいんだ。
「・・・分かった。だが、これだけは約束して欲しい! 死なないと」
「当たり前だ! 俺たちが好きな王様が戻ってきたんだ。だったら、死ぬわけにはいかねぇ。何せまだまだやってもらいたい事とかがたくさんあるからな!」
辺りに笑いが起こる。いい雰囲気だ。この人達とならアンドロイドを倒してこの国を取り戻せる。いや、絶対に取り戻してみせる。
「では、作戦決行までの時間、英気を養ってくれ」
様々な料理が振る舞われる。久々の豪勢な食事にみんなが楽しみ、喜び合っている。この人達の笑顔を奪うなんてこと絶対にさせない。
「兄ちゃん! あんた王様に気に入られてるんだって?」
「いや、まぁ、そうなのかな?」
「つまり、強いってことだ! 違うか?」
「まぁ、それなりには」
「だったら、俺たちから頼みがある」
「頼み?」
「ああ。どうか、王様を守って欲しい。あの人は無茶を通して自分を犠牲になることもいとわないお人だ。だから、近くで戦うことになる兄ちゃんに危ない時は助けて欲しい。
この通り・・・」
近くで食事をしていた兵士らしき人達が一斉に頭を下げる。深々と下げられた姿に王様への尊敬を愛を感じずにはいられない。
「頭を上げてくれ」
「なら!」
「俺は最初からあの人をみすみす見殺しにするつもりなんて無い。俺は、この国を救う。あなた達を見ていて、そして、あの人を見て、救いたいと思った。
俺が必ずあの人を生きてあなた達の所まで連れて帰る。約束だ」
俺と兵士の一人が固く握手を交わす。それと同時に酒を飲んで酔った兵士たちにもみくちゃにされた。酒くせぇ! けど、こういう雰囲気も悪く無いな。
「竜王女よ。グレンが勝てる見込みはどれだけだと考える?」
「さぁな。主様の潜在能力は未知数。妾すらも今では超えている」
「何を馬鹿な・・・。竜王女の魔力ランクはEX。いや、それ以上だろう。何があった?」
「それを教えてどうする? 現状が全てだ。妾の魔力は主様よりも今は低い。なら、主様がこの戦いを切り抜けるしかない」
「ふっ・・・。思った以上に主様へ厳しいんだな」
「妾は竜王女、そして、主様は眷属。愛し慕っていてもその関係は崩れない。親が子の成長を見守るように妾は主様の成長を見届ける」
「竜王女は偉大・・・か。明日の戦いは恐らく、厳しい物になるだろう。その時に竜王女はどう出る?」
「憤怒の罪が今日は、疑問ばかりだな。必要なら戦うさ。いや、戦わなければいけないだろう」
「ほぉ? 気付いているのか」
「さぁな。・・・主様! 妾にも食べさせてくれー!」
態度を豹変させてグレンの元へと向かう竜王女の姿を見て、俺は、女性というのが凄いなと実感する。明日は厳しい戦いだ。
グレンが魔力を掌握したと言ってもまだまだ未熟なまま。明日はこの眼も開放しなければいけないか。
・・・待っていろ。必ずこの手で―――!!




