戦いの狼煙
「具体的にはどうするんです?」
「ジャミング機能の拡張を行う予定だ。私の使者を街に派遣してるのだが・・・」
「使者?」
「ああ。戦える者や街に残された人を助けるように言ってある」
「なるほど。どんな人なんですか?」
「そうだなー・・・。見た目は怖そうな感じだが、喋ってみるとギザっぽい感じの奴だ。特徴的なのは褐色の肌に銀色の髪。そして、眼にⅢって数字が入ってる」
「まさか・・・それって、モードレッド?」
「おぉ! そうそう! ということは、街に出歩いてたのはあいつのせいだったのか。すまない! そういうことはするなって言ってたんだけど」
「そういう子ども扱いはするなと言ったはずだ」
俺たちの背後の扉がいつの間にか開いていて問題の人物がそこにはいた。憮然とした表情でアーサー王を見据えている。
「子ども扱いねー・・・。私からしたらいつまでも子どもだよ。親からしたら子どもはどれだけ歳を取っても子どもなのさ」
「親か。本当の子どもでも無いのになぜそこまで私に構う」
「何度も言っている。それが私の罪であり罰なのだ。まぁ、罰を償うと言っても今では可愛い息子だけどな!」
アーサーはグシャグシャとモードレッドの頭を撫でる。まるで父が息子に接するかのような光景。憮然とした表情でモードレッドは手を払いのけて椅子に座る。
「アーサーとお前たちも座れ」
「あ、ああ」
「このレジスタンスも順調に人が集まってきた。まぁ、戦力になるかどうかは別の人間も多いがな。だが、機械兵の勢力拡大は止まらない。
この国の約6割を制圧した。わずか5年でだ。今では勢いも増し、全域を制圧するのに1年も掛からないと思う。
そして、今こそ戦いの狼煙を上げる時だ」
モードレッドは机の上に機械を置く。それが何に使われるのか分からないが、隣にいるアーサー王だけは驚く。
「見つけたのか!?」
「ああ。苦労したがな」
「それは?」
「さっき話していたジャミング装置に必要な部品だ。ジャミングの範囲を拡大するのに必要だったんだ」
「これが・・・。どれだけの範囲をジャミング出来るんです?」
「そんなに範囲は広くない。以前までのが私を中心に1mほどだった。それが、10倍の10mになるぐらいのものだ」
「たったそれだけなんですか」
「そうだ。たったそれだけでも違う。10mという範囲が拡大されれば、アンドロイドに近づかなくてもジャミング出来る」
「そういうことだ」
「・・・具体的にこの装置が出来るのはいつ頃なんです?」
「早くて3日ほどかな。それまではゆっくりしていくといい。外は機械兵でうじゃうじゃしているしね」
そういうとアーサー王は奥の部屋へと入っていった。中からは装置を加工する音が鳴り響いている。
「さて、どうするか」
「丁度いい。俺が稽古を付けてやろう」
「モードレッドが!? 何で急に・・・」
「そうだぞ。主様にお前のようなやつの稽古なんかいらない」
「竜王女も分かっているはずだ。少年の芽はまだ出たばかりだ。魔力無くしてアンドロイドには勝てない」
「魔力か・・・」
「魔力感知に引っ掛からなかったのだろう?」
「あ、ああ。魔力感知出来ないって言われた」
「やはりか。少年は魔力無しで戦っているのだ。異常なことだがな。プラマハーと戦った時も魔力無しで戦っていた。
だが、対等に戦えていたのは俺たちに無い物を持っているからだ」
「モードレッド達に無い物?」
「心による意志の強さだ」
モードレッドは俺の胸に拳を当てて心の強さによって今まで戦えていたと説明した。心? けど、こいつらだって心がある。なのにどういうことなんだ?
「俺たちのは正確には心ではない。プログラムによって設定された1と0によるもの。心があるように見えて心が無い。
まぁ、この世界に慣れ親しんだから産まれたとも言うべきだろうが」
「モードレッドはこの世界のことを知っているのか!?」
「少年たちよりかは知っている。俺たちの主は世界の理を知る者。なら、知っていて当然だ」
「なるほど」
「まぁ、世界はどうなろうと今はそれほど重要ではない。重要なのは今だ」
「どういうことだ?」
滅びる世界をどうでもいいというモードレッドを睨みつける。世界なんてどうでもいいのかよ。
「世界が滅びるからと目の前の命を捨て置くのか? 違うだろ。全のために個を捨てるのではない。個を守るために全を守るのだ」
「個を守るために全を守る・・・」
「そうだ。今、この国は死を迎えようとしている。だからこそ、少年たちの力が必要なのだ」
「お前だけで何とか出来るんじゃないのか?」
「俺は・・・この国を救えない」
「何で!? 救おうとしてるのになぜ救えないんだ!」
「少年。人には言いたくない秘密もあるものだ。全てをさらけ出していい人間なんてそうはいない。さて、稽古はどうする?」
無理やり話を切り上げて最初の本題を聞いてくる。なんで国を救えないのか・・・。まぁ、いい。だったら俺たちがやるだけだ!
「受ける! 俺はもっと強くなりたい。この世界を救えるぐらいに!」
「世界か・・・。大きく出たな。だが、男ならそれぐらい大きく出ないとな」
俺とモードレッドは使われていない広い部屋へと進んでいく。機械兵すらもいない無人の巨大な部屋。何のためにこの部屋が存在するんだろうか。
「ここがいいだろう。さぁ、構えろ。今の少年の実力を見てやる」
「叡智を極めし覇王の竜、汝は全てを終わらせ、全てを創世する! 現れろ、創世の刀 ジェネシス!」
俺は刀を構えてモードレッドを見据える。武器を構えていない?
「それが、ジェネシスか。なら、俺も本気で相手をしようか。来い、クラレント・・・」
そこに現れた剣はどんな銀よりも鈍く黒い物だった。なんて剣だ・・・。この距離なのに飲まれてしまいそうなほどの重圧だ。
これが、本気のモードレッド・・・。




