新たなる国
「ここが西の大国 アスガルドか。レガリアと違ってかなり近代的な街造りなんだな」
「アスガルドは特産品である鉱石の貿易によって成り上がった国。科学が発展した国でもあるのだ、主様よ」
「科学か・・・。魔法もあって科学もある。何でもありな世界だな」
俺とスカーレットとジャンヌはプラマハーにアスモデウスから言われたことをそのまま伝えた。麻薬製造から手を引いたので、工場自体が機能していないこと。帝国を潰すという点で一致しているから手を出さないということ。
プラマハーは全てを聞くと、依頼を取り下げて、アスガルドへの通行証を発行してくれた。
「この世界の命運を握るのはグレン、竜王女だろう。そして、グレンの強さはまだ芽が出たばかり。真帝や竜王を相手取るにはまだまだ不十分だ。
だからこそ四帝である我々を踏み台にするがいい。まぁ、そう思っているのは我だけだろうがな。気を付けろよ。他の三帝は曲者だ」
そうしてプラマハーと別れてから1週間ほどでアスガルドへと到着した。凄いな。電気や蒸気機関といった物まである。俺たちの世界と何ら変わりない感じの科学が発展してる。
「お兄ちゃん! あ、あれ! あれはなんですか!?」
「んー・・・スカーレット、あれはなんだ?」
「転移装置。魔力と科学によって生まれた装置。指定された場所へと瞬時に移動出来る。ジャンヌ、そんなによそ見したら危ないぞ」
「ごめんなさい、お姉ちゃん・・・」
「べ、別にそんなに怒ってはいないぞ。ただ、ジャンヌが心配なだけだ」
スカーレットはジャンヌが本気で落ち込んだのを見て、慌てて頭を撫でる。嬉しそうにジャンヌはスカーレットに笑顔を向ける。
あぁ、癒しだ、これ。
「さて、この国の王に会いに行かないとだな」
「プラマハーから貰った通行証を見せれば謁見まで出来る。プラマハーがあれほど協力的にしてくれるとは」
「まぁ、それだけ信頼されたってことだろ。ありがたく思わないとな」
俺は、様々な機械仕掛けの街を進み、中央にそびえ立つ城の前へとやってきた。
「あーっと、王様への謁見をお願いしたいんだが」
「王に会いたいのであれば、何か証の提示をお願いします」
「これでいいか?」
俺は通行証を見せる。まさか門番にいるのが機械兵とは。それも人間と変わらない喋り方に動きまでしてる。感情や心があるかまでは分からない。けど、俺がいた世界のアンドロイドよりもかなり先を進んでる。
「認証しました。プラマハー国王の通行証と判別しました。どうぞ、中へお入りください」
「ありがとう」
機械兵にお礼を言って中に入る。・・・凄いな。ありとあらゆる物が機械仕掛けになってる。微かに魔力も感じるからハイブリットな仕掛けなのか。
俺は、正面にある転送装置から玉座へと一瞬で飛んだ。空間を転移する感覚ってあんな感じなのね。酔いそう。
「少々お待ちください。王が謁見の準備をされていますので」
「分かった。気長に待つよ」
国王という立場だ。忙しいに決まってる。俺は、辺りの物を物色する。どれもこれも俺の世界でも見たことが無い。科学が発展ってレベルじゃない。明らかにこの国だけ時代が違う。
ジャンヌやスカーレットも周りの機械に興味津々で動き回っている。
ん? これは・・・。オルゴールか?
「それは、トリックボックスといいます」
「うお!?」
「おっと。驚かせて申し訳ない。あまりに熱心に見ていたので、つい口を出したくなってしまいました」
「あんたは?」
「あなたが会いたがっていたこの国の王です。名はアーサー」
「王だったのか・・・。失礼しました」
「そう畏まらないで下さい。フランクに接してくれる方が私も楽なので」
アーサー王は壁にあるレバーを引っ張る。すると、地面からテーブルや椅子などが出てきた。機械仕掛けというかもう忍者の家みたいだな。
「どうぞ座って下さい。プラマハー兄さんからの招待ということは、何か事情があるのではありませんか?」
「詳しくは言えない部分もあるが、手合わせをお願いしたい」
「手合わせですか・・・?」
「ああ。どうしても俺は強くなりたい。だから、プラマハーだけじゃなく、他の三帝とも戦って力を身に付けたいんだ」
「なるほど。向上心があるというのは素晴らしいことです。私もそういった若者の挑戦は好きですよ」
「なら・・・!」
「ですが、断ります」
「なっ!?」
「あなたが強くなりたいのは何故ですか?」
「なぜ?」
「ええ。強さとは間違えれば悪になる。強大な悪になるかもしれないのなら強さを与えたくはありません。なぜ強くなるのか。その答えを言えた時に私は手合わせをしましょう」
「そんなのやってみなければ分からないだろ!」
「焦り・・・怒り・・・不安・・・様々な感情が入り乱れていますね。これを飲みなさい」
俺は、差し出された紅茶を飲み干す。少し気分が落ち着いた。
「アーサーさんは・・・強さを知っているんですか?」
「・・・私にも分かりません。ですが、私が戦う理由は答えることが出来ます」
「それは?」
「この国を守るためです。この国の民が平和で笑って暮らせる。そのために私は戦うのです。だから、強くもなった。
守るための強さ。それが、私の全てです」
「守るための強さ・・・」
「焦る必要はありません。まだ若いのだからじっくりと悩んで間違えて、そして、自分の道を見つけなさい。そうすれば、私も快く相手が出来ます」
俺は、何のために強くなるのか。プラマハーと戦った時はひたすらに生きたいという意志で戦っていた。だが、今はどうだろうか。何のために強さを手に入れるのか。
世界崩壊・・・それは、大変なことだ。けど、俺に関係があるのか? 異世界から来た俺にこの世界の行く末を考える必要はあるのか?
「主様、このアーサー王の言うことは正しい。芯無き強さは脆く、折れやすい」
「スカーレット・・・」
俺は、その場で答えを出せなかった。ひたすらに心の中で答えがループし続ける。難しい問題だ。




