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世界の変革者

「ほぉ? これが我の国に出回ってる麻薬か。名をレヴォといったか」

「ああ。恐らく、子どもなどを使って警戒心を無くした状態で売ってるんだろう。中毒性が強いから1度でも買えばずっと買い続ける」

「なるほど。こいつが一度出回れば、国を滅ぼしかねないか。報告してくれて助かった。それで、この出所を知らないとだな。

 なぁ? 我も手荒な真似はしたくない。素直に吐いてくれるのが望ましいのだが?」

 俺は、ジャンヌが扱っていたレヴォをプラマハーに報告した。元々、プラマハーのところを訪れる予定はあったのだが、何よりも優先すべき事項が出来た。

 そして、レヴォをジャンヌに売るように言っていた男達もついでに運んできた。まぁ、こいつらが吐けば大元に辿り着けるしな。

「・・・」

「沈黙していてもいいことはないぞ」

「・・・ククク。四帝が一人、プラマハー。お初お目に掛かります」

「誰だ? お前は」

 明らかに男は違った声色になる。どういうことだ? さっきまでの口調とも全然違う。急に変わった。

『この出来損ないの体を通じて話す無礼をどうかお許しを』

 男はプラマハーへ近づいて行き、首を垂れる。そして、バッと顔を上げてじっとプラマハーを見続ける。

「男に見られる趣味は無いんだがなー」

『なるほどなるほど。豪傑にふさわしいお姿。今後はこの街での商売を切り上げる予定でしたので、一つ挨拶をするためにもう少し近付いてもよろしいでしょうか?』

「好きにしろ」

 おいおい。どう考えてもおかしい不審者を自身に近付けるって何考えてるんだよ。止めないと。

「グレン、動くな。今は時を待て」

「何言ってるんだ!」

『外野がうるさいですが、街での売買お詫びします。そして、さようなら』

 男が近付いていた速度を急激に速める。そして、その凶刃がプラマハーを襲おうとする。周りの騎士も俺たちも急なことで反応が遅れてしまう。

 クソ! さすがにプラマハーなら大丈夫だろうが万が一もある。間に合わないか!?

「ダメーーーーーー!!」

 叫び声と共に男の体が止まる。力を失ってしまったかのように持っていたナイフが地面に落ちる。何が起きたんだ?

「もう―――もう、私の目の前で誰も傷つけさせません」

 声の主はジャンヌか!?

『こ、この魔力・・・! まさか、白の魔力の持ち主!!』

「やはりか。聖少女ジャンヌダルク。噂で何度か聞いたことがある。奇跡の聖女だと」

『私の魔法が打ち消される! ・・・ここは大人しく引きましょう。ですが、お忘れなく。世界の脅威は外界だけではありません。

 私たちネメシスが世界に変革をもたらします。ええ、必ず』

 男は力なくその場で倒れる。

「プラマハー何が起きたんだ?」

「その男は、この麻薬 レヴォを使用していた。そして、レヴォを1度でも使用した人物は、このレヴォに魔法を込めた人物の操り人形となる。

 支配下に置かれた者の操れる度合いは恐らく、レヴォをどれだけ服用していたかだろう。

 簡単な操作なら1粒で事足りるが、先ほどのように会話、動作、魔力操作までやろうと思うのなら相当だろうな。

 そして、この術者の力量もかなりのものだ」

「そんなになのか?」

「主様、魔法で1人を操るというだけでもかなりの魔力を必要とする。それが、レヴォを服用した者全員となれば、規模が桁違いだ。

 1万2万ではなく、100万以上・・・いや、1000万人いく可能性がある。そして、服用度合いに応じて操作出来る密度が変わるというのも、かなりの術者だ。

 恐ろしい敵だよ」

「敵か・・・」

「この魔法の類いは恐らく・・・七つの大罪が一人、色欲のアスモデウスか。ネメシスという組織の中枢が見えてきたな」

「七つの大罪?」

「欲望や感情のままに大罪を犯した7人。憤怒のサタン、傲慢のルシファー、嫉妬のレヴィアタン、怠惰のベルフェゴール、強欲のマモン、暴食のベルゼブブ、色欲のアスモデウス。

 それぞれの罪を模したように大罪を犯し、世界を一度絶望に落とした。だが、我々、四帝と真帝が何とか力を合わせたことで幽閉することが出来た。

 世界最大の監獄であるプロテクション。脱獄した者はいない監獄だったのだがな・・・。

 安全神話が崩れたということか」

「そいつら七つの大罪は何をやろうとしてるんだ?」

「さぁな。ネメシス・・・義憤の女神。世界を正す化身ということか」

 プラマハーは少し考えるように間を取ると、俺たちを見て頼みごとをしてきた。

「グレン、竜王女に再び依頼をお願いしたい」

「依頼?」

「このレヴォの製造ルートを我々が割り出す。そこで、敵の拠点を叩いて欲しいのだ」

「ふん! それぐらい自分でやればいいだろうが。なぜ、妾達がそんなことをやらなければいけない」

「我が動けれればいいのだがな。今、我が動くことはマズいのだ」

「知ったことか。妾と主様の道は誰と言えど阻ませぬ」

「・・・言うべきでは無いと思ったが、仕方あるまい」

 国王! と声を荒げる騎士を制止して、プラマハーは続ける。

「現在、帝国は外界を攻めているのは知っているな? 徐々にその領土を拡大していたのだが、少し異変が起き始めた」

「お父様の逆鱗に触れて外界から攻められているとかそんなことだろ?」

「そうだったらまだ戦うだけでいいのだがな・・・。これを見てくれ」

 プラマハーは投影機のような物で映像を映し出す。この世界にもこんな物があるんだな。

「森? にしては木々が細いような」

「ここはレガリアより南に行ったところにある外界と内界を結ぶ関所の近くの森だ。木々が生い茂り、緑豊かな森だった。

 だが、近年ではそれが無くなっている」

「環境破壊とかそんなことか?」

「いや、違う。そもそも外界に近いこの近辺では、開発もまともに進んでいない。だから、環境破壊も一切無いと言ってもいい。

 問題はこれだ」

「なん・・・だ・・・これ」

「数字のような物が天へと昇って行っている。前までは無かったが、ここ最近では特に増え始めている」

 数字のような物・・・。いや、これはデジタル世界のデータだ。0と1の数字の羅列が天へとどんどん昇って行っている。

 この世界を構成している2進数である0と1の数字。それが失われていっているのだ。

「バカな・・・。この世界は一体なんだっていうんだよ・・・」

「まだだ。まだ、もう少しだけ持ってくれ」

 絶望に打ちひしがれる俺と希望にすがるように祈りを捧げるスカーレット。訳が分からないまま世界は終焉へと進み始めた。

 俺たちの知らないところで世界は徐々に形を失い始めたのだ。

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