決着
静寂が支配する場所で佇む2人の男。俺と国王であるプラマハー。互いが己の持つ限界の力でぶつかり合った。強かった。圧倒的なまでの強さ。
けど、俺も負けなかった。ひたすらに食いついて食いついてどうにか後ろ姿を捉えることが出来た。けど、そこまでだった。
「主様! あぁ・・・主様」
「ごふっ! 負けた・・・のか」
「神速の突撃から繰り出される剣技。ただそれだけの技だが、強かった。しかし、勝利は我に微笑んだようだな」
「そうか・・・そっか。あーあ、勝ちたかったな。まぁ、何とかあんたに一矢報いれたからいいとするか」
「何?」
「それ。俺の最後の技で出来た傷でしょ?」
プラマハーは俺の指さす場所を見る。そこには刃こぼれした宝剣 ガイアがあった。その事実にプラマハーは戦慄し、震える。
「宝剣が刃こぼれするだと・・・。あり得ない。どんな金属を持ってしても傷つけることが出来ない宝剣なのに傷つけたのか・・・」
「防がれた瞬間は終わったと思ったけどな。けど、俺とスカーレットの絆が生んだ刀なら負けないと思った。決して折れない絆の刀。それが、創世の刀 ジェネシス。
よっと・・・」
「我の宝剣が傷つけられたか・・・。我の勝ちだと思っていたが、負けていたようだな」
「いや、ぶっ倒れてた俺に止めを刺そうと思えば刺せた。それに、もうこんなんだしな」
俺は足が笑っていて、まともに立てない状態だった。どうにかスカーレットの肩を借りて立っている状態。さすがにしんどい。
そして、俺はプラマハーに手を差し出す。
「これは?」
「握手。知らない? あんたは俺を殺そうとした。けど、そんなものを超えてあんたを好きになった。これはその友好の証」
「友好の証・・・。ふっ・・・はははははは!! 我もお前を気に入った! 喜べ、騎士の諸君よ!! 新たな同志だ!
いや、我らの友だ!! 世界を変えるべき存在となる。グレン、非礼を詫びよう」
俺とプラマハーは固く握手を交わす。にしても、世界を変えるべき存在って何なんだ?
「なぁ、世界を変えるってどういうことなんだ?」
「我の国でしばらく過ごせば分かるはずだ。宿はこちらが用意しておく。それと、クエストの報酬も出そう。各自、明日にでもギルドに来てくれ!」
そう言うと、プラマハーは上機嫌のまま騎士を連れて城へと帰って行った。そして、残された俺はスカーレットに礼を言う。
「ありがとうな。暴走した俺を救い出してくれたんだろ?」
「主様のためなら当然のこと」
「あはは。頼もしいな」
スカーレットは胸を張ってドヤ顔をする。そして、俺たちも街へ帰ろうとする。
「主様。もう歩けるか?」
「ああ、何とかな」
「妾は少しばかり離れるが大丈夫か?」
「離れる? どこかに行くなら一緒に行くけど」
「女性が一人で行くと言ったらどこか察して欲しいぞ、主様」
「あ、ああ。すまない。じゃあ、俺は先に街に戻ってるから」
「うむ! 申し訳ないな、主様」
俺はゆっくりながらも歩いて街へと戻る。女性が一人で行くか・・・トイレだろうなー。さすがにそこまで気が回らなかった自分が悪いか。
トボトボと一人寂しく街へと帰る。
「あった」
妾は、主様と別れた後に誰もいなくなったプラマハーと主様の戦いの場所へと戻っていた。主様がプラマハーに勝つのは難しかった。そして、目的の物も手に入ることは難しいと考えていた。
けど、主様はギリギリまでプラマハーを追い詰めて、目的の物を手に入れることが出来た。
「これでやっと一つ・・・」
「なるほど。竜王女はそれが目的だったのか」
突然した声の方へと振り返る。
「プラマハー・・・。帰ったのでは無かったのか」
「騎士達だけ帰した。俺も目的の物があったからな」
「目的の物?」
「しらばっくれるなよ。竜王女の手に持ってるそれだ」
妾の手に握られているのは、プラマハーの宝剣 ガイアが刃こぼれして落ちた欠片。本来、傷付けることが出来ない宝剣から取れる欠片はどんな国宝よりも価値がある。
「そんなコソ泥みたいなことをするようには見えなかったがな」
「妾の思考を人間が分かろうなどという事の方がおかしいわ」
「それと同じことをお前の主様とやらに言ってみろ。言えるか?」
「・・・」
「どこか気になっていた。お前は上辺ではグレンを愛しているように接している。が、どこか見下しているような口調もしていた。
グレンを本当に愛しているのか? 竜王女よ」
「妾と主様の愛は本物だ!! だが・・・これは主様でも知らなくていいこと。妾の手だけ汚せばいいだけなんだ。
頼む。見逃して下さい」
気高き竜王女であるスカーレットは下等な生物と見下している人間のプラマハーに頭を下げる。本来であれば、あり得ないこと。
その事にプラマハーは驚く。
「・・・宝剣は我だけの物ではない。この世界を形作る至高の宝だ。だが、今のお前の真摯な姿を見ればその欠片を譲ろう。
だが、忘れるな。お前が騙し続ければ続けるほどグレンに知れた時にグレンが感じる悲しみは大きくなる。グレンはお前を愛している。それは、死すらも乗り越えるほどに」
「・・・分かっている。そんなことは言われなくても分かっているさ。だからこそ、妾は最期に―――」
妾の言葉は風でかき消される。そして、見逃してくれたプラマハーに礼を言って主様が待つ街へと戻る。そう、妾だけでいいんだ。妾の手だけ汚せば主様を救えるんだから。
「愛ゆえに愛するべき人を騙すか。・・・その先は修羅だと知っていても進む、重い覚悟。確かに見届けた」
宝剣の欠けた部分を触る。だが、その部分はもう無くなっていた。自己修復によって剣自身が傷を治したのだ。
プラマハーは様々な思考を巡らせながら改めて城へと戻った。




