真なる竜の覚醒
「何が起きた?」
「さぁな。けど、これだけは分かる。あんたとやっと戦えるってことだ」
「なるほど。新たなる力を手に入れたか。だが、我と同等に戦えるというのは言い過ぎだな」
「やってみれば分かる。・・・にしても、周りのアンデッドがうるさいな」
俺は、刀を一薙ぎする。アンデッドが爆発をし、そこから次々と爆発が拡散していく。そして、全てのアンデッドは消える。
「バカな・・・。3000はいたアンデッドを一撃で全て消し去ったのか」
「この刀なら出来る」
「竜の秘宝はあってはならない。人間が持つにはあまりにも強大な力だ。国―――世界を守るために刺し違えることになったとしてもグレン、お前を討つ」
「別に生き死になんてどうでもいい。俺は、ただひたすらに強くなりたいだけだ」
プラマハーは重い足取りで俺との距離を詰める。そして、宝剣ガイアを振りかざして下ろす。力の乗った一撃。鍛え上げた騎士でも圧によって動きを封じられて一刀両断されるだろう。
だが、俺はその一撃を避けて斬りかかる。
「お前の強くなりたいという意志は素晴らしい! だが、竜の秘宝はそんな物お構いなしだ。全てを消し去れるのだ!
なぜそれが分からない!!」
「そんなこと知るかよ。竜の秘宝が何なのか俺には分からない。だからこそ余計に死にたくない。生きたいという思い、意志は何よりも強い!」
互いの意思が交差してぶつかり合う。刀と剣がぶつかり、衝撃波を生む。周りにいた騎士達はその余波に巻き込まれないように遠くへと避難する。
スカーレットだけが近くでその戦いを見守っていた。
「主様・・・」
「少女よ、あの少年に何をしたのだ?」
「竜の契約を根底から書き換えた」
「竜の契約?」
「そもそも大昔は竜と人に垣根なんて無かった。互いが互いに助け合い、それぞれの短所を補っていたのだ。
しかし、いつの時からか亀裂が入った。年月と共にその亀裂は大きく修正の効かないレベルにまでなり、竜と人は接触をすることが無くなった。
その大昔の時に出来たのが竜の契約。人が竜の力を使えるようになる物だ」
「なるほど。通りであの少年が竜になれた訳か。だが、なぜ戻れた? 書き換えたというのはどういうことだ?」
「竜の契約は竜の力を強制的に使う物。そこに竜との信頼など無い。だから暴走もするし力に支配もされる。
そこを書き換えた」
「そういうことか。少女と少年の間にある信頼をも超えた愛を契約の根底にしたのか。ならば納得だ。少年の強さは少女への愛ということなのだな」
愛し愛される。竜と人が大昔に当たり前にやっていたこと。その時には無かった契約を新たに作り出したことで得た力。
「何という強さ。・・・邪念が頭をよぎるか」
「国とか世界とか関係なく、ただ純粋に戦いを楽しみたいって顔をしてるぞ」
「バレたか・・・。しかし、それも当然のこと。我は元々は武人。ならば、強者との戦いの中にこそ楽しみがあるというもの」
「だったら楽しもうぜ! 国とか世界とかそんなの抜きで! 竜の秘宝がどうした! 俺はこうして何も無しでいる。
俺はあんたという最高の武人と戦えてとても嬉しい!」
さっきまでとは違う感情。相手をいたぶって殺してやるというどす黒い感情とは違う。素直に相手を称えて戦いたいと思う。
もっともっと高みへと上げてくれる強者。あぁ、何て戦いが楽しいんだ。
「まだまだーーー!!」
「更に加速したか! だが、我も負けぬ!」
剛のプラマハー、柔のグレンといった感じで戦いは進む。
これだけ速度を上げても反応してくるのか! 何て戦闘センス。恐らく、経験と勘から攻撃を予測して防いでるんだ。更に防ぐだけじゃない。僅かに出来る隙を付いて攻撃を仕掛けてくる。
一撃一撃は速くも無いのに凄い!
「男の子は単純でいいな。あんなにも笑顔で戦っている。先ほどまで殺気がぶつかり合っていたのにだ」
「そういうものだ。戦いに身を置いた瞬間から男というのは強者に憧れる。そして、追い付いて追い越したいと思うもの。
だから、強者と戦う。戦いを喜び望むのだ」
「いい物だな。周りの騎士達も強張った表情から今では応援をしている。自らの王の強さに惚れて応援する者。新たなる強者に憧れて応援する者。
様々な思いを持った人間がこの場だけでどれだけもいるのに一つになっている。あぁ、素晴らしい」
「ふっ・・・確かにいい物だな」
「お、おい。王が押されてるぞ・・・」
「バカな。四帝の一人のプラマハー王だぞ。それが押されるなんて。俺たちも手を貸した方が―――」
「あの中に入れるか? いや、そもそも王の顔を見ろ」
「笑ってる・・・」
「あんな笑顔久しぶりに見た気がする。王は純粋に戦いを楽しんでるんだ」
「凄いな。王もあの少年も」
「ああ! こう、見ていて熱くなるというか!」
周りの騎士達は興奮を隠しきれずに応援を始める。それぞれが見てカッコいいと思えるヒーローを応援する。まるで子供のようなことだが、全てが一体となっている。
「ははは! 見ろよ! 聞けよ! 俺たちの戦いでこんなにも熱くなってる連中がいるぞ!」
「そのようだな! 悪くない、悪くないな!」
俺とプラマハーは再び打ち合う。刀と剣が互いにぶつかり合う音が響き渡る。しかし、決定打に欠ける。プラマハーはその強靭な肉体から打ち出す一撃そのものが必殺になる。けど、俺はそんな力は無い。ましてや侍が見せたような技も無い。
何か決め手があればいいんだが・・・。
「主様! 力で敵わなくても速さがある。速さは全てを凌駕出来る!!」
「なんだそりゃ!? 速さか・・・」
今まで1発打ち込んでいた速さを2発に2発を4発に。威力では無くひたすらに速さに特化した。もっと、もっと速く!!
「こ、この速度・・・捌き切れん!」
「はあああぁぁぁーーー!!」
「ぬおおおぉぉぉーーー!!」
互いの熱がぶつかり合う。こんなにも負けたくないと思える相手に出会えた。だからこそ、限界を超える。
「ただ、ただひたすらに速く! 駆け抜ける!」
「消え―――」
音も光も置き去りにして駆け抜けた。一瞬の静寂の後にキィ―・・・ンという刀を鞘に納める音が響き渡る。決着は着いたのだ。




