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可能性の覚醒

「ぐはっ!」

 無数のアンデッドによる攻撃。単純な殴るだったりという攻撃だが、数が尋常じゃない。これが、数の暴力か。

「おいおい。新入りどうした? もう終わりかよ。ここは俺たち兄弟が止めておいてやる。さっさと大ボスを倒してこい!」

「そうだぞ新入り。俺たち兄弟が道を作ってやろうって言ってるんだ。そんな地面で寝てる時間は無いぞ」

「わ、分かってる・・・。少しぐらい休ませてくれよ」

 俺は傷付いた体を起こす。元が強靭な体だからか、あの攻撃でも何とか生きてた。けど、ダメージが酷いな。歩くのもやっとだ。

「はぁ・・・はぁ・・・これが戦闘か・・・。ははは、世界が違い過ぎるな」

 震える足を引きずりながらエンペラーアンデッドの元へと辿り着く。ここからが本番だって時にもうギブアップ寸前なんてな。

 けど、まだ戦える。まだ、腕は動かせる。周りにアンデッドがいない今なら討てる!

「悪いけど仕事なんでな。ここで討たせて貰う!」

「グアアアァァァーーー!!」

「また仲間を呼ぶのか! させるかよ!」

「・・・ニンゲン。読ミガ甘イ」

「こいつ喋れ・・・マジか」

 個体としての強さが無いと思い込んでいた俺は、エンペラーアンデッドの攻撃を防げなかった。

 深々と胸に突き刺さる宝飾の剣。あまりにも派手で戦闘には向かない剣という素っ頓狂な考えをして、俺はその場に倒れた。

「ウソ・・・だろ。強いって聞いて・・・無いぞ」

 薄れいく意識の中、遠くの方でスカーレットが唇を噛みしめ、手を握りしめている姿が目に入った。

 何で助けてくれなかった。何で黙って見ていた。

 何で泣いてるんだ。何で血を流しながら震えてるんだ。何で彼女を悲しませてるんだ。

「何も・・・変わってない。何も・・・出来・・・ない。また・・・彼女・・・を悲し・・・ませた」

 ああ、結局、この世界でも変わらずに彼女にあんな思いをさせるのか。

 ・・・嫌だ。

 また、彼女が泣いている姿なんて見たくない! 俺は、決めたんだ! 彼女のために強くなるって! だから、立て! 立てよ!! 俺の体!!!

―――見ていられんな

 お前は?

―――今はまだ知るべき時ではない

 ・・・そうか。

―――あまりにも無様。あまりにも滑稽。己が力を弁えないからそうなる

 分かってるさ。分かってる。

―――ここで貴様に死なれるのは困る。力を貸そう

 力? どういうことだ?

―――お前の可能性をこじ開ける手助けを少しだけしてやる。その後は、自分で何とかするのだな

 可能性? まぁ、何でもいいや。彼女を悲しませずに済むのなら。

―――貴様は・・・まぁ、いい。さぁ、立ち上がれ。竜の眷属よ


「・・・握りしめた手から血を流し、噛みしめた唇からも血を流すほど我慢するならば、助ければ良かろう?」

「いいや、ダメだ! ここで妾が主様を助ければ、この先もずっと変わらない。変わらずに主様は強くなれない」

「どうしてそこまであいつを信じられる?」

「妾は主様を愛しているからな」

「そうか・・・。いい女だな。あいつに惚れていなければ我の嫁にしていたところだ」

「一生無いから安心しろ。・・・これからだ」

「あいつが死を体験することで強くなるのか?」

「恐らくな。だが、どうなるかは不明だ」

「楽しみだな。どれほどまでに力を増すのか」

「・・・ッ! 来た! 主様・・・頼む!」

 縋るように祈る竜王女の姿を見て、プラマハーは見惚れる。その姿は天女のようであり、天使のようでもあった。ただ一人を想い、愛する女性の姿は美しい。

 そして、覚醒の時は訪れる。


「ニンゲン。ナゼ生キテイル?」

 困惑しているエンペラーアンデッドの言葉を気にせず、俺は、自分の体を確かめる。突き刺されたはずの傷は完全に塞がっている。

「力が溢れてくる・・・」

「ヤレ」

 無数のアンデッドが襲ってくる。だが、その全ての攻撃を避けてエンペラーアンデッドの前へと出る。そして、魔力を込めた拳で思い切り殴る!! ただひたすらに殴り続ける。吹き飛んでも追いかけて殴る。

「もっとだ! もっと俺を楽しませろ!!」

 俺の攻撃の余波で周りのアンデッド達が次々と死んでいく。こんなにも気分が高揚したのは初めてだ。この力があれば全てを支配出来る。

 ・・・そういえば、このアンデッドは俺を刺したんだったな。

「ちっ。所詮は数だけの雑魚か。死ね!」

 魔力を手に込めてエンペラーアンデッドに狙いを定める。そして、魔力の塊を放ったことで上半身が吹き飛ぶ。

「なるほど。力に溺れたか」

「お前はあの時の侍か。あんたが俺の相手をしてくれるのか?」

「力に溺れた者の拳など相手をするに値しない。が、その曇った眼を醒ますのもよかろう」

「何でもイイヤ。俺とヤり合おうぜ!!」

 侍と開いていた距離を一足飛びで詰める。そして、拳を思い切り振りかざして殴る。

 侍は寸前のところで避けるも、俺の一撃を見て驚く。

「まさかここまで力が覚醒するとはな」

 地面は大きく凹み、アンデッドの数が更に減る。1万もいたアンデッドは俺の攻撃の余波もあってか3000ほどに減っていた。

「避けるのが上手いじゃないか。だが、これならどうかな」

「土による目くらましか」

「そうだ。死ね!!」

 地面の土を思い切り蹴り上げて煙を上げる。目くらましによって油断したところを攻撃する。

 だが、俺の拳は刀によって防がれる。後ろに眼でも付いてるのか!?

「獣のように本能だけで戦いをするような貴殿に敗けはせぬ。力に溺れ、力に支配されるために目覚めたのか? 貴殿の本当の力の理由を考えろ」

「黙れ黙れ黙れ黙レーーー!!」

 咆哮と共に人間だった体に変化が訪れる。竜の鱗に尻尾が生え、竜と遜色ない形態へと変化したのだ。

 真紅のオーラを身に纏い、双眸を真紅に染めた少年が見据える世界は何なのか。今、可能性が覚醒した。

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