12、不穏な立ち話
ユニークスキルなしチーム+αの会議を終え、俺は一人夜の王城を歩いていた。
幸いうちのドジっ子メイドさんのおかげで(せいで)自室周辺の道は覚えているので、目的の場所へ辿りつけなくて無様にも迷子になることはない……と思う。
しかし、余計なイベントが強制発生してしまったせいでスキル習得プランが多少狂ってしまったのは痛い。
明日に備えて数少ないSPをやりくりして……というよりよく考えて適所に振り分けないといけないからね。
それでさえできることが限られるのだから、難儀なものだよ。
そんなことを考えながら廊下を静かに歩き、ちょうど角を曲がろうかというところで何やら話し声が聴こえてきた。
「──世の中には、必要悪というものも存在するのです。小を捨てて大に就く、この重要性が勇者様にならお分かりになるはずです」
「大も小も全部救う、そのための勇者じゃないんですか! 僕はこの世界を救い、全員で帰る。それを成し遂げるまで、最後まで諦めない!」
「どうやらキドウ様は勇者の意味を履き違えておられるようだ。私達が今求めているのは『全てを救う力』ではなく『魔王を倒す力』。そして勇者とは、前者ではなく後者を振るうことができる者のことを指すのです。そもそも簡単に、勇者だから救う。とおっしゃられますがキドウ様は一体その力を何に使うつもりだったのですかな? 勇者が人々を救う為の手段は、余りにも少ないというのに。この際ですから正直にいいますが……ああ、これは輝堂様以外の耳に入ると少々困る発言ですので、他言無用でお願いしたい。いいですか? 勇者とはね、体の良い殺戮兵器なのですよ」
「!」
「我々が全戦力を結集し、犠牲を覚悟で臨めば魔族を打ち倒すとはいかずとも退けることはできるでしょう。ですが厄介者は、なにも魔族だけではない。民衆や他国も、時には国を滅ぼすのです。……お分かり頂けたかな?そう。勇者ならば、勇者が魔王を倒すというのならば、それらの問題が全て解決するのです!」
「……」
「おとぎ話にも登場するだけあって、勇者の人気は他に類を見ないほどに高い。さらに勇者が魔王を討伐することは一番犠牲が少なく済む。よって、民衆も他国も、何も怖いものなどないのですよ」
「………」
「お分かり頂けたかな? 子供じみた英雄願望など捨て、現実とその先を見るのです。キドウ様ならそれができると踏んだからこそ、私達はこの話を持ちかけたのですから」
輝堂君、撃沈。
輝堂君の部屋の前にいるもう一人の声の主はいかにも大臣といった風貌の男だ。
確かこの国の宰相と紹介された気がする。
とても不穏な会話をしているようだ。
それにしても、あの超正義漢である輝堂君を論破するとは。
やはり百戦錬磨の為政者と一般人は舌の造りからして違うみたいだ。
さすがにこれはちょっと、キツイよね。
「………分かりました。一ヶ月後のダンジョンでの訓練、その時にうまくクラスをまとめて……
あの三人を、殺せばいいんですね?」




