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13、決闘前夜

 「あの三人を、殺せばいいんですね?」


 やばい。とても、とてもやばいね。

 あの三人って、俺と三崎君と先生だよね。

 いや、もしかしたら違う誰かという可能性も……。


「せめて先生だけは生かしておきたかったんだが……」


 ですよねー。

 やばいどころじゃ済まないくらいにヤバイ現場に居合わせてしまった。

 自分を殺す為の計画を盗み聞きしてしまうなんて、運がいいんだか悪いんだか。


 いや、運は良かったんだろうね。

 一ヶ月後、輝堂君達がダンジョンでなにか仕掛けて来るとわかったことは大きい。

 何も知らなければ対策を立てられないわけだから、知っているということは大きなアドバンテージになる。


 ふう、たまたま自主練に出掛けていなかったらどうなっていたことやら。

 そういう意味では自主練するきっかけを作ってくれた藤沢君には感謝しないといけないのかな?

 いや、それとこれとはまた別な気がする。


 まあいろいろ思うところはあるけど、今言いたいことはひとつ。


「輝堂君、そこは断ってよ。何殺すとか言っちゃってるの? 異世界に馴染むの早すぎでしょう。それに助けたいのは先生だけ? 俺と三崎君は死んでもいいと受け取っていいのかなそれ? あと正義がどうたらとか言って意味不明な理屈に屈してたけどあれちょっと、いやかなりおかしくない? そんなこと考えてる余裕があるんだったら王国の隠された狙いとか気付いてよ。優等生でしょ? 周りに迷惑をかけるなんて論外だよ。これなら先生の方がマシだって、もう……」


 訂正。ひとつじゃなかったです。

 自分でもほぼ聞こえないような音量で呟いたからバレてはいないだろうけど、こんな愚痴他人には聞かせられないね。


 その後、二言三言話して宰相はどこかへ去っていった。

 輝堂君の方はというと、こちらは終始暗い顔で弱々しく自室のドアを閉めていた。


 ここに来て悪いこと尽くしだけど、まあ王国の具体的な狙いも少しずつ分かってきた。

 今王国が優先していることは、クラスの崩壊。

 生徒たちを精神的に追い詰めて、絶対に逆らわない傀儡にするつもりと予想できる。


 ユニークスキルなし組はそのためのダシみたいなもの。

 まあそれ以外にも、中途半端な強さで早々に死んでもらっては勇者の沽券に関わるとか、生活費が勿体ないとかの理由もあるかもしれないけど。


 それならば逆に、一ヶ月後のダンジョン演習はチャンスとも言える。

 幸いユニークスキルのことは王国には知られていないようだし、バレないように力を蓄えておけばこちらから王国の想定外の事態を引き起こせるかも知れない。


 そうなれば今やるべき最優先事項は自分自身の強化。

 次点でクラスメートを注意深く観察すること。

 そのためには明日の決闘を成功させることが条件となる。

 一人ですべてを網羅することは厳しいので、宮森さんにもそれとなく見守ってくれるよう言っておこう。


 

 日本の普通の高校生から一転、俺は異世界という名のブラック企業へと入社してしまったようです。




 

 俺達が召喚されて最初に目にした真っ白な部屋、あそこは体育館くらいの広さがあると表現したけど、同じ学校の施設に例えるならばここはさながらグラウンドだ。

 うちの学校のグラウンドはそれほど大きくはなかったけど、それでも面積は目測で五百平方メートルはゆうに超えている。

 だが、グラウンドと違うところをひとつ挙げるとすれば、それは地面だ。


 生徒の安全を考えた学校のグラウンドの地面は、程度の違いはあれど通常は平らで、躓いて転ばないようになっている。

 けれどこちらはそんな綺麗な場所とは正反対と言える。

 全体的にでこぼこした地面はただ躓きやすいだけでなく、荒々しく高低差がついている部分もある。

 砂場をめちゃくちゃに荒らしたとしてもこうはならないだろう。


 聞けば、この惨状は兵士達の訓練によって日常的にできるものなのだとか。

 直してもすぐに荒らしてしまうため、このまま放置しているらしい。


 そんなことを考えながら、現実逃避気味にため息をはいた。

 気分はすでにナーバスを通り越して憂鬱だ。

 目の前に立ち塞がる二人のクラスメート。

 そしてその後ろで気味の悪い笑みを浮かべているのは勿論藤沢君。

 構図としては、三対一。

 悪い予想が現実のものとなってしまった。


 労力は価値あるものだと思う。

 俺が優しい性格じゃなかったら王国と藤沢君にその労力分の代金を請求していたところだ。


 クラスメート達が固唾をのんで見守る中、内心どうでもいい独り言を呟く。

 そして、剣を構える。


「ではこれより、訓練への参加権をかけた決闘を行います。……始め!!」

 

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