11、会議
「本っ当に、ゴメン!」
「いやいや、もういいよ。むしろ、あそこで思いきってくれなかったら決意も固まらなかっただろうし、感謝してるくらいだよ」
「ありがとう……。今度からは不用意な発言はしないように頑張るから!」
『頑張る』と言って絶対にそうすると断言しないところが宮森さんらしいね。
俺と宮森さんは今、王城の一室。テーブルのみが中央に置かれた会議室のような部屋で話をしている。
正確には、俺、宮森さん、三崎君、そして先生の四人だ。
ところで、何故宮森さんが俺に謝り倒しているのか。
その原因はつい先程までの食堂での会話にあった。
*
王女様の決闘認めます発言により、教室は再び静寂に包まれた。
しかし、会話の流れや宮森さんの必死の訴えがあったからかやはり生徒たちからは反対の声があがった。
仲間割れなど以っての外だ。みんな平等に解決すべきだ、と。
つい数分前まで言い争っていたとは到底思えないほどみんなの意見は一致し、クラス全員が王国の発言に対して抗議した。
そのときだった。
今までずっと黙っていた王女様の護衛の一人が口を開いた。
『やれやれ、勇者様ともあろう方達が情けないですなぁ。神聖なる王家が認める決闘を拒むとは』
あからさま過ぎる挑発だ。
冷静な判断力を持っていたならば、こんな言葉にひっかかることはまずない。
でも生憎と、異世界生活一日目にして怒涛の展開に振り回されてきた生徒たちに理性的な行動を求めるのは到底無茶な話だった。
おそらく、王女様とその護衛もそこまで考えての発言だったのだろう。
ひたすら厄介だ。
護衛騎士のわざとらしい挑発を真に受けてしまったクラスメート達に俺は苦悩し、流石に少しでも落ち着かせるために何か言わなければと口を開きかけた。
しかし、悪い状況というのは常に連続するもので、喧騒のなか爆音のごとく発せられたその声は少なくとも俺にとって最悪の状況を作り出すには最適に限りなく近い言葉だった。
『そんなことないし! 芦原君は絶対決闘なんか負けないもん!!』
宮森さんの言う、「不用意な発言」がまさにこれだ。
おうふ……とうとう巻き込まれてしまった…。
いや、ユニークスキルがない時点で巻き込まれてはいたんだけど……ね? なんというか、ここまで当事者のひとりなくせに一切喋らなかった者としての意地というものもあるわけで……。
そこからはとんとん拍子に話が進み、明日の朝の決闘は決定的なものとなった。
*
「それで、本当にどうするの?」
それを聞いて少しの間思案する。
実はもう決闘の作戦、条件もろもろ考えてはある。
でも、それを成功させるには相当頑張らないといけない。
ただでさえ屁理屈みたいなルール違反すれすれの作戦なので、やるからには最初から最後までキッチリやらないと相手には勝てない。
正直、相手が変な手口を使わずに正面から勝負を挑んで来たら逆に勝率はがくっと下がっていた。
それほどまでにユニークスキルあるなしの差は大きい。
「あのさ、宮森さん、芦原、先生。実は一番謝らないといけないのは俺なんだよ、その……本当に、本当に、すまん!」
む? 何やら三崎君は意を決したように語り出した。
「えと…さっき食堂で藤沢君に言い負かされたこと? それなら別に仕方ないと思うけど」
「いや違う。そのこともだが、それ以前の問題だ」
「それ以前?」
「ああ。藤沢が俺達に不自然なくらいに突っ掛かってきたことだよ」
「あー……私何となくわかっちゃったんだけど……」
えっ、宮森さんは分かるんだ。
三崎君とは今日初めて話したって言ってたけど……。
もしかして、三崎君って有名人?
「ああ、芦原は知らないのか。まあ話をしたのも今日が初めてだしな……。先生ももしかしたら知らないかもしれないが、はっきり言おう」
とても重要なことみたいだ。
真剣な表情で三崎君は告げる。
………。
ドキドキ
…………。
ドキドキ
……………。
「長い「俺、実はいじめられてたんだ」
……。
かぶった。
「えーと、ああ。いじめ? そうなんだ……つまり、藤沢君の標的は三崎君一人で俺と先生がその鬱憤晴らしに巻き込まれたのを申し訳なく思っていると。大丈夫、ちゃんと伝わったから。大丈夫、本当に」
「ウ、ウワアアアア。慰めてくれんなよぉ。悲しくなるだろ……」
悲しいって言うか、気まずい。
そしてそこ。宮森さん、笑わない。
可哀相になるでしょ。
三崎君がうなだれながらも視線をちらと動かす。
その先にいる人物は、先生。
先生は夕食会どころか鑑定を終えてからというもの一切喋っていない。
危うい精神状態だとは思っていたけど、ここまで来ると本格的にマズい。
さて、どうしたものかな……。




